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エピローグ

 すべてが終わって、気が付くとアリスはクルスの腕の中にいた。


「クルス?」

「そうだ、気を失っていたから……」

「あの、悪そうな敵は?」

「レイナが、なにもかも話したくなるように調教するそうだ」

「レイナ……あれ、フラットは?」

「レイナがやり過ぎないようにと、後レイナを守るため……ついでに、俺達を二人にするためらしい」

「……気を利かせすぎ」


 アリスが不満そうに呟く。

 そこでアリスは、見知らぬ部屋に自分がいることに気付いた。

 簡素な部屋で生活感はなく、ただ泊まるだけの部屋のよう。と、


「ここは俺達が借りている部屋で、ほとんどここには来ないが……色々と外も騒がしいから」

「そうなの?」

「あの酒場には大穴が空いた後何故か修復したからいいんだが、他の遺跡でも魔物が大量に流入して、遺跡自体が撃退をしてという状況になっている。だが」


 そこでどう、今の状況を言うったらいいかと考えながらクルスは、


「結果として、先ほどの敵が一番の指導者であったらしく、統率が上手く取れていなかった。もしくは、彼の行動自体が混乱をきたす引き金になったようで、強力な魔物達は異界に戻っていったらしい」

「じゃあ、もう大丈夫なの?」

「多分、これからだろう。彼等はまだ、諦めていないようだから」

「そっか……これから、また攻めてくるのかな?」

「そこは、どの程度対話で済ませられるか、上の腕の見せどころだろう。なにせ、アリスの女神の力がこちらでは健在で……圧倒的だと彼等には伝わっただろうから」

「え? そうなの?」


 特に自分が何をしたのか、アリスには身に覚えがないのだが、そうらしい。

 実際にはクルスを助けるためにアリスが駆ける途中強い魔物も簡単にあしらわれて、それが魔物側に伝わった部分も大きいのだが、それはクルスは告げない。

 全てはアリスが知らない場所で動いた出来事であり、知る必要もない。

 女神の力はとても大きく脅威で、それを意識的に強く使われても、人には恐ろしさを与えるだろう。

 そうすればアリスはアリスのままではいられなくなる。

 それに……。


「力が強いと分かれば、手に入らないかもしれないし」

「クルス?」

「……俺は、アリスのことを愛してる。だから、必ず迎えに行くから」

「! うん。でも、私……」

「たとえどんな障害あろうとも、俺はアリスを手に入れる。愛しているから。それとも、アリスは俺が嫌か?」

「そんなことはないよ! 私も……クルスが好き」


 アリスは、口にだすのが恥ずかしく思いながらも、自分の想いを告げる。

 クルスがアリスに嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔にアリスの胸が高鳴る。

 クルスがクルスだから、アリスはクルスが好きで、他はどうでも良くなって。


「クルスと一緒にいられるなら、私はそれでいい」


 気づけば自分の口からそんな言葉が零れていることにアリスは気づく。

 けれどそれはアリスにとって、紛れも無い本音だった。

 そこでアリスは唇に何か温かいものが触れたと気づく。

 それはクルスの唇だった。

 クルスにキスされていると気付いて、けれど、それが凄く幸せなことのように思えてゆっくりとそれを味わうように瞳を閉じる。

 やがてその温かさが離れていくのを感じて、寂しさをアリスは覚えながら瞳を開く。

 目の前には、顔を赤くしたクルスがいて、少し頼りなげに見えて……いつも以上にクルスが可愛らしくアリスは見えた。


「必ずアリスを迎えに行くから。だから、その……」

「デートは花嫁になってから、とか?」

「……駄目かな」

「今まで一緒にいたのも、冒険したのもデートみたいだったなって、今は思うかな。だから、うん、いいよ」


 クルスのためなら、駆け落ちしてもいいかも。

 そう思えるくらいにアリスはクルスのことが好きで離れられない。

 だから、しかたがないのだ。

 好きになってしまったのだから。


「約束だよ、迎えに来てね」

「約束だ」


 そうクルスも答えて、心の中で、俺もこれから頑張るぞとクルスは叫んだのだった。






 それから、数日が経った。

 あれからあの酒場にいってもアリスはクルスに会えない。


「いろいろ忙しいのよ。せっかく調教して、敵の内容を吐かせてやろうと思ったら取り上げられたし」


 すぐそばにいるレイナが、面白くなさそうに言っていた。

 あの後どうにか、異界との決着はついたらしい。

 以前よりは少し交流をしていこう、というのが妥協点だそうだが……アリスは、それよりも別のことで頭がいっぱいでそれどころではなかった。

 けれどあれからアリスはクルスに一度も会えず、機嫌が悪くなっていた。

 ここでそんな顔はしないほうがいいとレイナにたしなめられたが、笑顔でなんていられない。

 現在アリスとレイナは城の舞踏会場に来て、その会場の壁に二人して寄りかかっていた。

 レイナという巫女がここにいるのは、ここに用があるかららしい。

 何でも近くの国の王子様達が来るので、レイナも接待をするそうだ。

 知り合いなのかとアリスが聞くと、レイナはじっとアリスを見て、


「……やっぱり邪魔してやろうかしら」


 と、何やら不安を誘うことを言っていた。

 けれどそれ以上レイナは教えてくれなくて、それがアリスの機嫌を更に損ねていた。

 周りではその異国の王子様が、従者も含めて美形だ美形だきゃー、と盛り上がって噂をしているが、そんな女性達を尻目に、アリスは機嫌が悪いままだった。

 その王子様は銀髪で青い瞳をしており、とりわけその王子様と中の良い従者は、金髪に緑の瞳をしているらしい。

 アリスにはどうでもいい話だったが。


「もう少し笑顔でいた方がいいと思うわよ、アリス」

「……クルスに会えないのに、笑顔になれるわけないじゃない」

「……今は忙しからしかたがないわよ。ほら、笑って……忠告だけはしておいたからね」


 レイナが、これはお手上げだわと諦めてアリスの横の壁に寄りかかる。

 壁の花ね、これぞまさにとわけの分からないことをアリスは思いながら、アリスはレイナに話を振る。


「フラットとはどうなの? 事後処理でちょっとあったくらいかな。……あいつ、普段はヘラヘラしているくせに、まともな格好をすれば意外に見栄えがいいのね」

「……ずるい、私はクルスにも会えていないのに」

「事後処理と、色々根回しがあるんだから諦めなさい。クルスも頑張ってアリスを手に入れようとしているみたいだから」

「そ、そうなんだ」

「そうそう……クルス様は積極的だからいいけれど、あのフラットのやつは私から逃げまわりやがって。やっぱり、調教してくれようかしら」


 そこでレイナがボソリとフラットへの不満を呟き、暗く笑う。

 レイナの方も色々大変らしい。

 そこで大きなざわめきが聞こえた。

 現れた一団に皆が息を呑んで、静になる。

 余程の美形なのかとアリスにはほんの少しだけ好奇心がわくが、すぐに、別にクルスじゃないから関係ないやと投げやりな気持ちになって俯く。

 近くでざわめきと、誰かがこちらに来る気配をアリスは感じ取る。

 先ほどやって来た王子様たちだろうか。

 などと考えているアリスの前に影が指す。

 下を見ているアリスには、随分と豪奢な服をまとっているなと気付いて、もし王子様ならば無視するのも失礼かと顔を上げた。

 ついでに、仮面のような笑顔を浮かべようとして、けれどアリスは顔を上げた瞬間唖然とした顔しか出来なかった。

 

「約束通り、迎えに来たよ。アリス」

「……」

「驚かせたか。俺は、実は王子なんだ」


 いたずらっぽくクルスが笑って、そしてそのすぐ側にフラットも控えていて。

 アリスは自分がなにか夢を見ているのかと思った。

 思って頬をつねるが、とても痛い。

 夢ではないらしいとわかったので、アリスはすぐ横にいるレイナに、


「レイナ、私は知らないのだけれど」

「うん、私は言っていないから、知らないかもね」

「ひ、人事のように言わないでよ! 待ってよ! だったらもっとお洒落なドレスとか……」

「日頃から手を抜くからこうなるのよ」

「レイナ……酷い」

「一応忠告はしておいたでしょう? それに、ドレスごときで区別をするような相手が貴方の好きになった人なの?」


 そう言われてしまえばアリスはレイナに言い返せない。

 そんなレイナは、すぐに嬉しそうにフラットのもとに走って行ってしまう。

 レイナみたいにクルスへアリスも走り寄れたなら、と思いながら棒立ちになってしまう。

 そこでクルスは困ったようにアリスを見て、


「王子である俺は、アリスは受け入れられないのか?」

「そ、そんな事無い! ……えっと、ありません」


 慌てて素で答えそうになって、言い直すアリス。

 アリスとクルスの間の距離、ほんのの数メートルが酷く遠くに感じる。

 会えて嬉しい、という気持ちとともに、王子様にそんな今までみたいに接しれないという気持ちもあって、アリスは戸惑う。

 けれど、クルスは相変わらず困ったように微笑んでいて、アリスの不安も全部お見通しみたいで、だからアリスのそばに来るのを遠慮しているように見えて……アリスは決めた。

 もうどうにでもなってしまえと。

 はじめの一歩が一番、アリスは気力を使った気がする。

 その後はとても足が軽くて、まるで引き寄せられるようにクルスのもとに走るアリス。

 そしてそのままクルスに抱きついた。


「会いたかった、クルス。私ね、いつもの場所でずっと会えなくて、寂しくて……」

「俺もだよ。アリスにずっと会いたかった。でも、色々することがあって……一応アリスのご両親の許可は、取ってあるんだよ?」

「! 聞いてないよ!」

「驚かせようと思って、黙っていてもらったんだ」


 クルスは意地悪だと思って、アリスは見あげるけれど……それも、クルスの顔を見てしまえば、何も言えなくなってしまう。

 だってアリスはクルスのことが好きで、クルスがそばに居てくれればそれで良くて、だから。


「約束、守ってくれて嬉しい、クルス、愛してる」

「俺も、アリスの事を、愛してる」


 お互いに愛していると告げて、抱きしめ合う。


 こうして、アリス達の淡い恋心は実を結ぶこととなったのだった。



「おしまい」



ここまで読んで頂きありがとうございました。

本当はもっと短く終わらせる予定だったのですが、物語が書きたくなってしまい書いてしまいました。

もし次に何か書く機会がありましたら、よろしくお願いします(*´∀`)ノ。


お月様バージョンは、この後おやつ程度にそういったシーンが入ります。18才以上の方は、よろしければどうぞ(*´∀`)ノ


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