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人違い

 幸い……なのかどうかわからないが、その魔物の少年に怪我はなかった。

 正確には防御の魔法を使ったらしい。

 それでも先ほどの衝撃を和らげるのみに過ぎなかったようだ。

 そんな彼だが幾らかのダメージを与えたらしく、一応アリスは、


「大丈夫? 君」

「お前がやっておいて、『大丈夫?』はないだろう! あと私の名前はシドだ」

「……私がやったの?」

「お前以外に誰がいる、女神が! ……忌々しい。完全に無自覚でここまでやってのけるなど、頭が軽い女……ごふっ、痛い痛いっ!」


 今少し……ではなく、とても失礼な暴言を吐かれてアリスはイラっとした。

 別にただイラっとしただけでそれ以上の意味はなく、正確にはそれ以上特に考えていなかったのだが、目の前の彼の頭上から細かな落石が降ってきている。

 しかもその落石は、表面が魔法でコーティングされているらしく、それも欠片の小さいものが特にその魔力が強いようだった。

 つまり、彼が防御の結界をはるも、細かいものは貫通するわけである。

 なので彼の頭上には細かな瓦礫が落ちてきて、彼にあたった後それらは地面へと落ちていく。

 けれど地面に落ちると同時に吸い込まれるように消えてしまう。

 そこでその降ってくる瓦礫が止む。

 同時に魔物の彼は涙目で、


「相変わらずの性悪女だな。男をたぶらかす術だけが優れているだけの事はある……うぎゃぁああ」

「……何で初対面らしい魔物に、こんな事言われているのかしら」


 アリスは、怒りで笑ってしまう表情でその魔物を見る。

 けれどそれでもその魔物は黙らない。


「もう止めろ! こんな中途半端な攻撃をして、そんなふうに優柔不断に……ぐふっ」


 アリスは、これだけやられてもまだいい続ける元気があるのかと思った。

 正直もう放っておいていいんじゃないかともアリスは思った。

 けれどいくつか気になることを言っていたので、アリスはここにとどまり続ける。


「それで、クルスがどうのと言っていたように聞こえたけれど……」

「貴様に話すような話はない! ……ぎゃぁあ」

「……なんとなく、もっと格好をつけた相手だったような気がするのだけれど、気のせいかな?」

「この、お前のような小娘が……うごっ」


 横からにょーんと壁から手が伸びるように攻撃されて、完全に勢いを殺しきれない彼は、少し体の位置を動かしている。

 そんな魔物を見ながらアリスは、


「なんだか、全く懲りないで言うのね……」

「ふん、自分が何をやっているのかわからない、その程度の……うぼぎゃ」

「……なんだか、どうでも良くなってきたような」

「そのまま大人しく私に捕まえられろ、そうすれば……」

「そうすれば?」

「異界に連れて行ってやる」


 その言葉にアリスは目を瞬かせる。

 言っていることが変わっている。


「クルスの手土産って言っていなかったっけ。それとも私が知っているクルスと、貴方が言っているクルスは別の人なのかな?」


 そう考えれば納得がいく。

 こんな魔物の知り合いがクルスにはいるように思えない、けれど。

 この前の女の魔物は、確か、クルスが、とかフラットがとか、それでフラットが……あれ?


「何だろう、記憶が無い」


 確かのその時何かあった気がするが、凄く心地よかった気がする。

 そういえば先ほどのうさぎに、力に引きづられて、云々と注意された。

 もしかしてその時私はなにかやったのだろうかとアリスは思う。

 それを、一番答えてくれそうなレイナに聞くかどうしようかと悩んでいると、


「……全くわからないのか?」

「……だから何が」

「……本当に何も分かっていない頭の軽女……ぎゃあ」


 二回も頭が軽いと言われて、アリスはご立腹だった。

 けれどそんなアリスの様子から、少年の魔物であるシドは、クルス様の招待をこの娘は知らないのだと気づく。

 同時に隠されているのなら、それは付け入る隙だとも。


「……知りたいか、クルス様の秘密を」


 感情面で不安を煽れば、そこに隙が生まれる。

 実の所遺跡を使っての攻撃は、思いの外強いものだった。

 それを無意識に……それこそ遊び程度にこの娘は、女神は扱うのだ。

 もともと女神の強さだどれほどのものかと伝え聞いており、それを鼻で笑っていたシドだが、それが真実味を帯びているのだと気付かされる。

 それでも女神の強さを認めたくない気持ちも、魔物としては、シドにはあったのだが、そこでアリスが口を開く。


「クルスの秘密?」

「そうだ、興味が有るだろう?」


 先ほどの会話から、クルスの事を気にしているふうではあったし、よく女神とシドの主である王達は女神を好んでいた。

 それこそどれほど変わろうとも選び出す、そんな関係だった。

 だからこの少女もクルスが好きだろう、そう思ったシドだが、


「うーん、興味ないや」

「え?」

「だって貴方の言うクルスは、私の知っているクルスじゃないみたいだし、多分人違いだと思う」

「え? いや、お前の言っている相手であることに間違いなどなくて……」

「女神だから? うーん、でも話がちぐはぐすぎるし、あまり長く話しているとクルス達も心配するだろうから、私もう行くね」


 待てと、シドは言おうとした。

 けれどそれを言う前に、何か強い衝撃を受けてシドの意識は無くなったのだった。

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