問いかけ?
クルスに手を取られてアリスは再び鏡のような場所を歩いていく。
けれどもう先ほどの煙は消え去っている。
それでも迷う事無くクルスが歩いている。
アリスには鏡と透明な壁に阻まれて、時折てをぶつけてしまうのに、クルスはあたかも道が見えているかのようだった。
――きっと、強い冒険者になれば私もああいう風に慣れるのかな?
と思いはするものの、自分にそこまでなれるのだろうかと思う。
クルスとアリスの年はそれほど変わらない。
それであそこまで強くなれるのは才能があるとはいえ、どれほど修練を積んだのだろうと思う。
アリスは、どうすればそこまで強くなれるのかなと思う。
こんな不安定な保護されるだけの関係ではなく、もっと、一緒にいられるようになりたい。
だからもっと強くなりたい。
魔道具での補完はどの程度あれば良いだろう。
どうすれば……そこまで考えて、どうして自分はクルスと一緒にそんなにまでいたいのだろうかとアリスは考えて、それはきっとクルスといると楽しいからだといつものように思う。
だって、こんなに胸が高鳴るのは、楽しくてたまらないからなのだ、きっと。
なるほど、なるほどとクルスの手を繋ぎならアリスは頷く。
一方クルスといえば、アリスの先ほどの力の事は気になってはいたのだが、それよりも今はちょっと良い所見せたいという邪な気持ちが勝っていた。
そんな二人はやがて出口らしき場所が見えて、そこを出ると広い通路になっていた。
初めにアリス達が歩いていたような、ただただ綺麗なだけの通路である。
「よかった、ようやく出られたね」
「そうだな。鏡やら何やらで……魔物からは俺達が見えているが、こちらからは見えないような作りなっていたからな。その分油断していたのか気配でバレバレだし」
「そうなんだ。全然分らなかったよ」
「普通の人にはわからないものだから、アリスが分らなくて当然だ」
「でも、クルスと同じ世界を私も見てみたいな」
クルス見たいに色々分れば、きっと、見えるものもまた違うのだろうという意味でアリスは言ったつもりだった。
だがそれを聞いたクルスは、凍りついたように動かなくなる。そしてすぐに深呼吸して、
「気のせいだ。気のせい。アリスは……うんうん」
「どうしたの? クルス?」
「いやいや何でも無い何でも無い。それよりも早くフラット達を探した方が良いかもしれないな」
「どうやって?」
「……」
「……」
黙ってアリスとクルスは顔を見合わせて、それから少しクルスは考えてから、
「アリス、どちらに行きたい?」
そうアリスにクルスは問いかけた。
結局のところ見知らぬ場所で別れさせられたので、どちらかを探しに行くよりはまずは出口までの道筋を確保しておいた方が良いのである。
そして、僅かな空気の流れやこっそり飛ばした探査の魔法で、クルスはもう出口が分っており、この階にフラット達がいないことは確認していた。
どの道フラット自体がとても強いし、アリスの友達であるレイナを放っておくほど薄情ではないので、特に問題はない。
調教されているかもしれないが。
そう考えると、早めに……いやいや、もしもそういうことの最中だったら邪魔したら悪いしと、少しクルスが悩んでいると、
「うーん、あっちに行ってみたいかな」
アリスが指差す。
どの道どちらに行っても出口への階段に辿り着くので問題ないのだが、そのアリスの指差す先にには以前のような広い場所とそして……。
「どうしてそっちに行きたいんだ?」
「何となく、呼ばれているような気がしたから」
「そうか……」
クルスは、少し考えてから、二人はそちらに向かって歩き出したのだった。
特に敵に遭遇する事もなく、その場所にやってくる。
その場所には、浅いが水で満たされており、水底は白い砂で満たされている。
所々で湧き水があるのだろう、砂が膨らみ揺れている。
そしてその中央に以前行った遺跡と同じ像が建っていた。
けれどその像と違うのは、その石の部分に小さな金色の光がゆらゆらと揺らめいている事だった。
「今度のはなんだか違うね。炎みたいなのが中で揺れている……」
そこでアリスの様子が少しおかしい事にクルスは気づいた。
何処か目が虚ろげだが真っ直ぐにその像を見据えている。なのでクルスは、
「そうだな。触ってみるか?」
「……うん」
答えたアリスと共にその像へと歩いていく。
水を左右に割るように押さえているので靴も、服も濡れる心配はない。
そして像の前まで来ると、その像にアリスは触れた。
像に変化はない。
けれどアリスはそのまますぐにふらりと倒れてしまう。
それを抱きとめながら、クルスはその像を見る。
前は気づかなかったが巧妙に隠されたこの像の下にある巨大な何かがゆっくりと動き出しているようだった。
ついで、クルスはアリスの正確な魔力量を調べるという健全な理由から、アリスを抱き上げて水の心配ない場所まで抱き上げて連れてきて、そこで……そっと唇を重ねた。
相変わらず甘いなと思いながらキスを味わう。
アリスとクルスの体の相性は良い様だと思いながら、魔力をすうとほとんどアリスの中に残っていなかった。
次いで魔力がどれほどかと……アリスの特殊な何かを探していく。
その間唇を吸ったりやりたいほうだいしていたのだが、これも全て真面目な理由があるからである。
そして、その何かに辿り着きそうになって……それがクルスには酷く心地よくて美味しそうに感じられて、今すぐかぶり付きたい衝動に駆られて慌てて唇を離した。と、
「んんっ……あれ?」
アリスが目を覚まして周りをきょろきょろと見回す。
「私……」
「あの像に触れてから倒れたから……でも大丈夫そうだな」
「! ご、ごめんなさい」
自分がいわゆるお姫様抱っこされている事に気づいてアリスは顔を赤くした。
顔を赤くしたアリスも可愛いなと思いながら、クルスは、
「もう大丈夫そうだから下ろすぞ?」
「は、はいい」
理由は分らないが凄くどきどきして更に顔を赤くしながらアリスは立ち上がる。
今すぐ話題を変えなければ身が持たないとアリスは思ったので、
「そういえばフラット達どうしているだろう。初めの場所に私達が戻されて合流、だったら楽だけれど」
それはただの話題を変える思い付きだったはずだった。
けれど、そうアリスが言うと同時に目の前の景色が歪んで、同時にアリスとクルスの前に、レイナに襟首を捕まえられたフラットが現れた。
しかも周りは、初めに入ってきた遺跡である。
「え?」
全員が疑問符を浮かべるも、時間が時間なので、焦ったようにアリスたちはその遺跡を後にしたのだった。




