第8話〜無事に事は運ぶのか
現代日本でサバイバル技術を極め、不慮の事故で命を落とした「私」。
次に目覚めた時、そこは中世ヨーロッパ風の異世界――しかも、超絶ブラックな軍隊の調理場だった。
魔法や魔導技術が息づくこの世界で、ただの料理番見習い(元サバイバリスト)として平穏に生き延びたい。そう願っていた私の前に現れたのは、誰かが隠した「暗号無線機」と、失敗すれば即処刑という理不尽なスパイ容疑。
猶予はわずか3日。
冷徹無比なオーガスト副隊長の監視をくぐり抜け、真犯人を炙り出すため、私は前世の知識とポケットに忍ばせた相棒「十徳ナイフ」を手に、命がけの罠を仕掛けることを決意する。
「どうすりゃいいのよ、現行犯って……!」
兵舎の裏で、私は十徳ナイフの缶切りブレードを見つめながら、頭を抱えていた。
猶予は残り3日。本物のスパイが誰かも分からないのに、そいつが証拠の品を取り戻しに来る現場を、冷徹なオーガスト副隊長の前で抑えなければならないのだ。胃がストレスでねじ切れそうだった。
そこに、またしても「おーい、アルト」とのんきな声が近づいてくる。ハンスだ。口元にジャガイモの粉をつけたまま、彼は嬉しそうに駆け寄ってきた。
「食堂のおばちゃんがさ、夜中に不審な影を見たって言ってたぞ。アルトが変なやつ探してるって言ってたから、一応な!」
「それだ……!」
私はハンスの肩をガシッと掴んだ。驚いて目を丸くするハンスをよそに、前世のサバイバル知識と、手元にある十徳ナイフ、そして回収した暗号無線機が頭の中で繋がっていく。
スパイは今、無線機を紛失してパニックになっているはず。そこに「無線機を落とした、今夜回収する」という偽の暗号通信を、こちらの無線機から意図的に流したらどうなるか?
「ハンス、今から言うことをよく聞いて。私たちの命がかかってるの」
十徳ナイフの精密ドライバーで無線機の裏蓋を開け、回路を弄りながら、私は悪魔的な罠を組み立て始めた。
ご愛読ありがとうございます!第8話はいかがでしたでしょうか?
ついにアルトの「前世のサバイバル知識」と「十徳ナイフ」が、窮地を脱するための強力な武器として牙を剥きました。ハンスの天然なアシスト(ジャガイモの粉つき)もあり、ジリジリとした心理戦から一転、スパイをハメる「ネズミ捕り」の罠が完成です。
窮地に追い込まれて本領を発揮するアルトですが、冷徹なオーガスト副隊長を味方に引き込み、無事に現行犯逮捕となるでしょうか?
次回、第9話「深夜の給水塔、仕掛けられた罠」。
スパイの正体と、アルトたちの運命が決まる緊迫の夜が始まります。どうぞお楽しみに!




