第27話〜キャッチ&アウト
崩落する足場、容赦なく降り注ぐ雨、そして命を狙う暗殺者の刃。絶体絶命の危機に瀕したアルトが呼び覚ましたのは、かつてコートの上で培った「ドッジボール」の技術だった。
銃弾のごとき投擲で退路を断ち、迫る白刃を完璧なタイミングで「キャッチ」する――。少女の規格外のポテンシャルと、脳内に潜むハンスの冷徹な戦術眼が融合したとき、廃港は凄惨な狩り場から、命がけの「コート」へと変貌を遂げる。
襲撃者をすべて「アウト」にし、辛うじて生き残ったアルト。しかし、崩落の轟音はさらなる混沌を呼び寄せる合図に過ぎなかった。
息つく暇もなく押し寄せる増援の影。激化する夜のゲームは、まだ始まったばかりだ。
ボルトを粉砕し、追手たちを足場ごと奈落へと叩き落とした。
鉄骨が悲鳴を上げて軋み、崩落するキャットウォーク。暗殺者たちは悲鳴を上げる暇もなく、冷たいコンクリートの床へと叩きつけられていく。凄まじい衝撃音と土煙が、雨の音に混じって廃港に響き渡った。
「やった……?」
肩を激しく上下させながら、アルトは自分の両手を見つめた。
鉄パイプを放った手のひらは赤く熱を持ち、じんじんと痺れている。かつて、全力でボールを相手のコートへ叩き込んだときと同じ、懐かしくも恐ろしい感覚。
「見事だ、アルト。だが感傷に浸るな。まだ終わっていない」
脳内に響くハンスの声は、冷徹でありながらも、どこか少女の驚異的なポテンシャルに戦慄しているようだった。
「残響はあと一つ。背後だ。……奴は最初から、お前の『投擲』の隙を狙っていた」
ハンスの警告が意識に染み込むより早く、アルトの身体はすでに動いていた。
振り返る視界の端、崩落の混乱に乗じて影から躍り出る、もう一人の暗殺者の姿。その手には、鈍く光る短剣が握られている。
(……バックステップじゃ間に合わない!)
迫る刃。しかし、アルトの脳は冷静だった。彼女の記憶にあるドッジボールとは、ただ避けて投げるだけのゲームではない。相手の弾道を読み、その威力を殺し、自分のものにする――
「だったら……捕まえるだけ!」
アルトは一歩も引かなかった。
ハンスの戦術眼が導く「刃の死角」へと、あえて自ら踏み込む。
間一髪で突き出された刃を紙一重でかわすと、アルトは相手の手首を、かつて幾千の剛速球を受け止めてきたあの「キャッチ」の構えで、ガシィッ!と完璧なタイミングで掴み取った。
「なっ……!?」
暗殺者の驚愕の声。ハンスの戦闘技術によって強化されたアルトの握力は、男の手首を容易にロックする。
「次は、私の番!」
アルトは相手の勢いをそのまま利用し、コートの外へと文字通り「アウト」にするかのように、暗殺者の巨体を廃港の暗闇へと豪快に投げ飛ばした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついにアルトの「ドッジボール無双」が本格始動しました。暗殺者の刃をまさかの「キャッチ」で封じ、そのままコート外へ「アウト」にする豪快な決着。執筆していて最高にスッキリするシーンでした。ハンスの冷徹なサポートと、アルトの身体能力の融合がここからさらに加速していきます。
窮地を脱した二人ですが、この廃港に現れた暗殺者たちの裏には、さらなる黒幕の影が……。次回、息を整える間もなく物語は新たな局面へと動き出します。
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