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入れ替わったら戦争 行かなきゃならなくなっちゃった  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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第12話〜ふたりよ逃亡者

激しい雨が降りしきる深い森、絶体絶命の窮地に陥ったアルトとハンス。

信じていた「平和」の残忍な真実と、上層部による血塗られた実験。

逃げ場を失った二人は、最後の一発である信号弾を放ち、濁流渦巻く奈落の谷へと身を投げた――。

組織の追跡から命からがら逃げ延びた二人が行き着いた先、そして明かされる「実験場」のさらなる闇とは?

絶望の淵から始まる、反撃の第12話。

激しい雨が、すべての足音と呼吸の音をかき消していく。

「ハンス、こっちだ! ライトが来る!」

私はハンスの濡れた肩を掴み、巨木の根元にある窪みへと体を滑り込ませた。直後、さっきまで私たちが立っていた泥地を、白く鋭いサーチライトの光が容赦なく薙ぎ払っていく。

追手の怒号と犬の吠える声が、嵐のノイズに混じって近づいてくる。心臓の鼓動が、耳の奥で早鐘のようにうるさい。

「……すまない、アルト。お前まで巻き込むつもりはなかった」

ハンスは泥にまみれた十徳ナイフを懐に収め、力なく笑った。その顔は蒼白で、肩からはじわじわと血が滲んでいる。脱出の際、副隊長の放った銃弾がかすめていたのだ。

「謝るなら、すべてを話してからにして。私は、あのおぞましい本部を、副隊長を敵に回した。もう後戻りはできないのよ」

私はハンスの傷口に手持ちの包帯をきつく巻きつけながら、彼の曇った瞳を見つめた。

「本当の裏側って、何? 私たちが信じてきた『平和』って、一体何なの?」

ハンスは天を仰ぎ、雨水を顔に浴びながら、自嘲気味に呟いた。

「俺たちが守ってきたと信じていた『前線の街』……あそこは、平和維持の拠点なんかじゃない。本部の奴らが、兵器実験のデータを集めるために**わざと長引かせている『実験場』**なんだ」

「……え?」

「和平交渉の使節団を裏で暗殺していたのも、敵国じゃない。俺たちの組織、オーガスト副隊長の直属部隊だ。戦争が終わってもらっては困る奴らが、この戦争を飼い慣らしている」

頭を殴られたような衝撃だった。私たちが流してきた血も、失った仲間たちの命も、すべては軍上層部の利益とデータ収集のために仕組まれた、終わりのない劇だったというのか。

「だから俺は、本部の地下からその証拠を持ち出した。これがあれば、奴らの計画を公表できる。だが……」

ハンスが懐から取り出したのは、血に汚れた一本のマイクロフィルムだった。

「奴らも必死だ。これを奪い返すためなら、森ごと俺たちを焼き払うだろう」

その時、犬の鋭い咆哮がすぐ近くで響いた。草木をなぎ倒す足音が、私たちの潜む窪みに向かって一直線に近づいてくる。

「見つけたぞ! 叛逆者どもはここだ!」

暗闇から現れたのは、かつて共に配給のパンを分け合った、同じ隊の仲間たちの冷徹な銃口だった。

「……ここまで、か」

ハンスが覚悟を決めたように立ち上がろうとする。だが、私はその細い手首を強く掴み、引き戻した。

「諦めないで、ハンス。真実を闇に葬らせはしない」

私は懐から、最後の一発となった信号弾を抜き取り、泥だらけの夜空へと銃口を向けた

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

ついにアルトの機転によって、オーガスト副隊長たちを窮地に追い込むことができました。絶体絶命のピンチから、あえて居場所を知らせる信号弾を放つというアルトの豪胆さと、ハンスとの強い絆を描くのがとても楽しかったです。

国境の川の向こうには何が待ち受けているのか。そして、託されたマイクロフィルムに隠されたさらなる真実とは——。物語はここからさらに加速していきます。

次回、二人の逃避行の行方をぜひ見守ってください!

今回のアルトの機転、いかがでしたか?よければお気に入りのシーンや感想を教えてもらえると嬉しいです!

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