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入れ替わったら戦争 行かなきゃならなくなっちゃった  作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
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第11話〜黒い撃鉄

互いの命を預け合ってきた戦友・ハンスの突然の反逆。そして、冷徹に「処分」を下そうとするオーガスト副隊長。二つの銃口の間に立たされたアルトが下した決断は、軍への反逆を意味するものでした。

信じていた「平和」の崩壊と、引き返せない逃亡劇がここから始まります。緊迫の第11話、どうぞ見届けてください。


「お前は何も知らないんだ。この戦争の、本当の裏側を」

ハンスのその言葉が、冷たい泥のように私の耳から脳へと染み込んでいく。

「何、を言って……」

問い返そうとした私の声を、オーガスト副隊長の冷徹な一喝が遮った。

「黙れ、兵長。それ以上の煽動は利敵行為とみなす。アルト、動揺するな。そいつの手に持っている十徳ナイフを蹴り落とせ」

「……っ」

体が動かない。

何度も窮地を共に乗り越え、互いの命を預け合ってきたハンスの、その右手に握られた刃。

私に向けられたその瞳は、見慣れた悪戯っぽい光を完全に失い、底の見えない深淵のような暗闇を湛えている。

「ハンス、どうして……。私たちは、平和のために戦ってきたんじゃなかったの!?」

私の叫びに、ハンスは哀れむような、それでいてどこか酷く歪んだ笑みを浮かべた。

「平和、か。アルト、お前が信じているその『平和』が、誰の犠牲の上に成り立っているか、本当に考えたことはないのか? この本部に、この副隊長に、一体どれだけの血が吸い上げられているか、お前は――」

「そこまでだ」

引き金にかかるオーガスト副隊長の指に、僅かに力がこもる。銃口から放たれる殺気が、小屋の空気を氷点下まで引き下げた。

「これ以上の問答は無用。アルト、ハンスを拘束しろ。抵抗するなら、私がその場で処分する」

副隊長の冷酷な決断と、ハンスの宿した暗い真実。

私は、突きつけられた二つの銃口の間に立たされているかのような錯覚に陥りながら、震える手で腰のバンドに手をかけた。

冷たい金属の感触が、震える指先から全身へと伝わっていく。

腰のバンドから引き抜いたのは、ハンスを縛るための捕縛縄か、それとも――。

「アルト、動け! 何をしている!」

オーガスト副隊長の焦燥を含んだ鋭い声が、狭い小屋に反響する。その声は私を従順な兵士に引き戻そうとする鎖のようだった。

対するハンスは、微動だにしない。十徳ナイフを握る手に力が入るわけでもなく、ただ哀しげに、私の選択を待っている。その瞳は「お前ならどうする」と、無言で問いかけていた。

頭の中で、これまでの日々が高速で駆け巡る。

泥にまみれて分け合った配給のパン。死線を潜り抜けた夜、焚き火のそばで語り合った未来。あの温もりまでが、すべて嘘だったというのか?

いや、違う。ハンスのこの冷徹な眼差しこそが、彼が命を賭してでも伝えようとしている「真実」の重さそのものだ。

もしここでハンスを縛れば、彼は二度と口を開くことはないだろう。副隊長の手によって「処分」される。

だが、副隊長に背けば、私は反逆者としてこの場で撃ち殺されるかもしれない。

「私は……」

かすれた声が、自分の喉から漏れ出た。

私は、ハンスの右手に視線を落とす。そして、その隣に立つ副隊長の、引き金にかけられた指先へ。

張り詰めた沈黙の中、私は決断し、踏み出した。

「私は……」

かすれた声が、自分の喉から漏れ出た。

私は、ハンスの右手に視線を落とす。そして、その隣に立つ副隊長の、引き金にかけられた指先へ。

張り詰めた沈黙の中、私は決断し、踏み出した。

腰のバンドから引き抜いたのは、捕縛縄ではない。

私の手に握られていたのは、暗闇を引き裂くための――信号弾だった。

「ハンス、走れ!!」

鼓膜を突き破るような爆音と共に、狭い小屋の中が真っ赤な光で塗りつぶされる。

オーガスト副隊長の驚愕に満ちた叫びを聞きながら、私はハンスの腕を掴み、光の渦の中へと飛び出した

第11話をお読みいただき、ありがとうございました!


ついにアルトは捕縛縄ではなく、信号弾を引くことでハンスと共に生きる道(そしてイバラの道)を選びました。


これまで絶対的な規律だった「軍」に背いたアルトと、何か重大な秘密を握るハンス。二人はこれから、この戦争の「本当の裏側」とどう対峙していくのか。


次回、逃亡編の幕開けです。彼らの行く末をぜひ応援していただけると嬉しいです!


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