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学歴、職歴、自己PR

ゲル(パオ)

忘れ去られていた高校受験で使った知識がよみがえった。

村長の家はそういう感じの丸い建物だった。

壁の代わりに枝が積んであって麻ひもで結んである。


隙間風がすっごかった。

寒かった。


天井が低く俺(172cm)は腰をかがめながら入って


「こごさおねげすます。」


と頼まれて、さっき魔王様が口から吐いた、仕様書と題してある紙を

バインダーのようなもの……

カルテをはさむバインダーのゴムのところが固い紐になってるみたいな板に

取り付けてテントの上のほうに吊るした。


「ありがてえありがてえ」


村長は拝んだ。

ほかの柱にも似たような紙が下がっていて、プラプラと常に揺れていた。


中央にはいろりがあり、鍋がかかっている。

鍋と言い切るにはちょっと勇気のいる、昔鍋だったなんか黒っぽいやつ、という感じの年季の入り方だ。

中でどろどろしたものが煮えている。


「魔王様、恵みに感謝いたします」


村長はフライドチキンを鍋に放り込んだ。

家の隅で顔色の悪い女性が1人、子供が4人、湧いて出てきたうちの調理器具を拝んでいる。

調理器具はどう見てもうちのものなのだが、新品だった。


村長の家族っぽい方々も、震えながら


「魔王様、恵みに感謝いたします」


と言った。

うん、外国の人である。


俺は彼らに伝えた。

履歴書に書いてあるようなことを。

出身、学歴、自己PR。ほとんど通じた感じはしなかった。


村長一家はフライドチキン入りのなんか汁を、すごい勢いで食べるのに忙しそうだった。

俺も1杯もらったが、ほんとうに何の汁だかわからなかった。

毒ではなさそうだった。慣れ親しんだ、フライドチキンの味はした。


「ナカシマショーヤ様は、庄屋様ではなかったんですね」


と、タヌーサさんは言った。


「はい。自分は、地球の、チーバ県ダゴン町というところに住んでいる者です。

 ニワトリ退治のボランティアは、したことはありません。趣味は野球です。庄屋様ではないです。」


「そしたら、勇者様、とお呼びすればよろしいですか?」


「や、それはちょっと。ショーヤ先生と呼ばれることが多いです。」


先生たちと患者さんとナースに高齢化の波が押し寄せているため、俺は34才だがすごく子ども扱いされていて

ちょっと(ショーヤが先生か!大したもんだ!)みたいなニュアンスでショーヤ先生と呼ばれている。


「ショーヤ先生。ここは地球でもチーバ県でもダゴン町でもないです。

 ナカツ国のヤンタ村です。」


タヌーサさんはフライドチキンの軟骨のところを

そこはもうホネそのものじゃないかな、という段階になるまで食べていた。


「毒ニワトリ、に俺から出たなんか光の粒のようなものが当たったら

 唐揚げの材料と調理器具になったのですが、これが特攻ということなんですかね?」


「そう思います。普通はそうならないです。」


「ですよね。俺もそう思います。

 そうすると、毒ニワトリ退治のボランティアが完了したら帰れるということなんですかね?」


「ア、ア、ア、ハ!」

村長さんが興奮した様子で立ち上がり、仕様書のひとつを外して見せてきた。


『帰還処理は実行されました。理由:見つかりません』

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