火はちょっと出せないです、よろしくお願いします
外に、洞窟の外を叫びながら近づいてくるものがチラリと見えた。
全体がコゲたように黒く、トサカと顔の一部はニワトリらしく赤く、胴体に蛍光オレンジの柄みたいなものが入っており
攻めすぎたセーターのようだった。
そしてでかい。七面鳥の丸焼きよりでかい。近藤先輩がときどき草野球の練習に連れてくる柴犬よりでかい。
見間違いだといいのだが、大変いかつい。
しかしそれはこちらに向かってくる。
その奥からさらに追加で1羽、2羽、3羽……
俺はオープンハンドポイントでタヌーサさんの背後を示して質問した
指さしより丁寧な、パーをちょっと丸めるやつである
丁寧にしてどうする
「あれが毒ニワトリですか?」
「んです。見つかっちったみたいですね。入口ふさがれる前に出ないと、イテテ足しびれた」
「はい!」
俺は元気に返事をして洞窟から一歩踏み出した。
ヒュバッ
と、鼻先を高速の何かがかすめていった。
驚くいとまもなく
逆方向からまた風切り音がかすめていく
いやなにおいがする
青いラベルの漢方薬みたいな
ッガサササササササ
と、それらは着地点の木をそれぞれ縦に駆け上り
頂上で大きく翼を広げ、滑空した。
(今は、またしても滑空してきた毒ニワトリが鼻先を掠めていったところである、しかも左右から2羽!)
と、読解するより先に俺は一歩後ずさることができた
毒ニワトリは滑り台を滑る子供のように、左右の木からこちらを見ている
光る眼がこちらを見ている
外は山林
光っているところがある木は何本もある
あれ全部に毒ニワトリがいて
滑空して体当たりしようと待ち構えているらしい
「せーの、で出ると狙われますんで、せっ、くらいで出てください」
タヌーサさんが当たり前のように言った
「でも、すごくなんびきもいるみたいですよ、あれ」
「ナカシマショーヤさまは、火は出せます?」
「いや、ちょっと出せないです」
「そしたら何で呼ばれたんでしょうね?」
「こっちが聞きたいですッ」
「回復のほうかな?リガクリョーホウシは、なんでしょう?」
「患者さんの回復を手伝うお仕事ですッ」
「あ、なるほど」
タヌーサさんは、耳を高速で動かし
「そしたら火はわたしが出しますんで、あとしまつのほうお願いします。
ファイヤーウォールッ!」
するとタヌーサさんの指先にエンジ色の光がともり
ぱちぱちと軽快な音を立てながら外に向かっていった。
光は帯のように広がる。
さ、どうぞ、と、タヌーサさんが手招きする。
光の帯は俺たちの同心円状に広がった。
ワアー、オーロラみたーい。
きれえー。みなちゃん好きそおー、と思った。




