飛ぶべきは布団の上にあらず
歓迎会は丁重に断った。
フライドチキンの箱を大事そうに抱えた村の皆さんは、俺たちの戻りを待ってくれていたようだったが
どう見てもフライドチキンと仲良くしたいので一刻も早く家に帰りたい、といったご様子だった。
「中島将也です。毒ニワトリ退治のボランティアに参りました。
退治完了までの短い間になると思いますが、よろしくお願いします。」
と、自己紹介したところ、村人たちがいっせいにジャンプした。
「タヌーサさん、なにこれ」
「歓迎のぴょんぴょんです」
歓迎のぴょんぴょんかあ。
本当に申し訳ないが気持ちは伝わってこなかった。
村には、おふろというものがなく(なく!)
毒ニワトリが少ない日にタヌーサさんにほかの仕事がたまっておらず、かつ元気だったら
蒸し風呂のようなものをやってもらえる(やってもらえる?)ので
そこで温まるとのことだった。
普段は、身体は汚れたときに拭く、ひどく汚れたときは川で洗う、とのことだった。
ワイルドである。
借りた家でタヌーサさんにいろりの使い方などを習っていると、日が暮れかけていた。
「ショーヤ先生、ほか、なにか、聞きたいことないですか?
なんでも聞いてください!」
タヌーサさんは元気だった。
「ちょっと疲れてて思い付かないです。また明日にでも、教えてください。
よかったらお宅までお送りしますよ」
「んでは……」
タヌーサさんは布団を何回か振り返った。
「屋外でやれば、家まるごとが消えて、なにか出るようなことはないんですかね?」
「いいえ、うちん中でやっても、布団をなでながらやればだいじだと思いますよ」
「へえ」
「よかったら、練習してってください。うちにも布団、ありますので!」
「はあ」
「何枚もありますんで!!!」
めちゃくちゃ疲れていたので、もう正直奇跡はかんべんしてほしいという気分ではあったが
俺はタヌーサさんの圧に負けてお邪魔することになった。
タヌーサさんのお宅は、なんというか、村長の家と、俺が借りた家と、すごく同じだった。
布団というかゴザもあった。
言われた通りにゴザをなでまわしながらレストアをやってみたら
なんだかカーペットが出た。
家は無事だった。
再チャレンジしたら布団が出た。
ものすごくうちの布団、掛け布団と敷布団のセット、ペアのパジャマつき。
しかしやはり新品である。
「いい方に来てもらえて、ほんとうにえがった」
タヌーサさんは俺を玄関(というか穴)まで見送るとき
布団とカーペットをかついでいた。力持ちだね。




