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悪女、二周目はサッカー少年の夢に人生を捧げる  作者: 鳴嶋ゆん
第6章

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第73話 三人三様

 次の試験は、フィジカルテストのようだ。

 

 ユースの選手たちを相手に、一対一でボールを奪い合う。

 相手は順番に変わっていくようだ。


『誰からでもいいぞ』


 スタッフの声が響く。

 すると、すっと立ち上がったのはサヴィーニだった。

 ニコッと笑って相手に向かっていく。


 そして――。

 あっという間にボールを奪った。


「……」


 今の、いったい何をやったの?


 思い出せ。

 思い出せ、前世で見た大人になったサヴィーニのプレイを。


 うーん……。

 やっぱり、よくわからない。


 わたしも似たようなことはできる。

 でも、ちょっと違う感じがする。


 そんなことを考えていると、翔吾くんがニコッと笑って立ち上がった。


「ボクが行く」


 うんうん。

 このくらい自分からアピールできたほうがいいね。


 翔吾くんは勢いよく相手に近づき、肩からぶつかっていった。

 ファールではなさそうだけど……ちょっと乱暴な感じだね。


 そのまま肩で押し込んだかと思うと――不意に、一歩下がった。

 相手はしっかり踏ん張っていたせいで、急に力のかかり方が変わり、わずかにバランスを崩す。


 そこを翔吾くんが見逃さない。

 すかさず足を伸ばして、ボールを奪った。


(なるほど)


 サヴィーニとは、まるでタイプが違う。


 これは……。


 わたしも行くっきゃないでしょ。


『行きます』


 わたしは立ち上がり、相手の選手ーに遠くからニッコリと微笑んだ。

 相手は、キョトンとしている。


(うーん。女の子だからって、完全に油断してくれてるね)


 しめしめ。


 さて。

 奥の手があるんだけど……今はまだ使いたくない。


 サヴィーニに見せたくないからね。

 きっと、この選抜試験の中でサヴィーニと戦うことになる。

 翔吾くんは、きっとそれを願っているだろう。

 でも、わたしとしては――できれば戦わずに済めば、それが一番いい。


 一度見せた技は、すぐに対策される。

 それくらい、あの子は怖い。


 だから今は、別の手でいこう。


 ゆっくり。

 ゆっくりと相手に近づいていく。


 これ以上近づいたら警戒するかな、という距離。

 間合いの外って感じだ。

 その少し手前で止まる。


 相手の呼吸を見る。


 吸って。

 吐いて。

 吸って。

 吐いて。


 その呼吸に合わせる。


 そして――不意に、呼吸を止めた。


 次の瞬間。


 無拍子。

 

 一気に間合いへ入る。


 同時に身体を沈め、相手の視界から外れるようにかがみ込む。


 そして、そのまま――。

 ボールを奪った。


(よしっ)


 成功。

 これやられると、相手はわたしがいきなりワープしてきたように感じるはず。


 これは剣道や中国武術で使われる技を、わたしなりにサッカーへ応用したものだ。


 もっとも、この技。

 実際の試合では、かなり使いにくい。


 完全な一対一じゃないと成立しないからだ。

 しかも、仕掛けるまでに少し時間がかかる。

 横から誰かに邪魔されたら、それでおしまい。


 だから、今みたいな一対一のテストだからこそ使える。


 ボールを拾って立ち上がる。


 そして、サヴィーニを見る。


 ニコッ。

 ちょっと得意げに笑ってみせた。


 すると――。

 サヴィーニに睨まれた。


(……あれ?)


 どうやら、あまりお気に召さなかったらしい。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!


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