第74話 最終試験
その後も、いくつかの試験が続いた。
走ったり、ボールを使ったり。
さすがに結構疲れてきた。
そして、ようやく次の案内が入る。
『二〇分後に最終試験。実践形式の模擬戦を行う。
ユニフォームを配るので、名前を呼ばれたら取りに来るように』
最終試験は、やっぱり試合か。
名前を呼ばれ、ユニフォームを受け取る。
サヴィーニは、白と黒の縦縞。
背番号は十。
ユヴェントスのホームユニフォームだ。
そして、わたしと翔吾くんは青いユニフォーム。
わたしが十番。
翔吾くんが九番。
こちらはユヴェントスのアウェーユニフォーム。
(サヴィーニ相手に最終試験かー)
予想通りの展開ではある。
あるけど……。
(きついぞ、これは)
そして、試合開始。
開始早々、何がなんだかわからないうちにサヴィーニが左から切れ込んだ。
そのままゴール前へパス。
そこへ走り込んだ相手の九番がシュート。
ボールはゴールへ吸い込まれていった。
(はやっ!)
今の間に、何が起きたの?
周りを見る。
どうやら、向こうのチームのほとんどは、もともとサヴィーニとよく知っているメンバーらしい。
連携ができあがっている。
なるほど。
(ずるい、とは言わない)
そういうことも含めての実力だ。
でも――。
(どうすればいいのさ)
こっちは、ほぼ初対面同士。
烏合の衆だよ。
もちろん、個々の能力は高い。
ここまでの試験を見ていても、それはわかる。
でも、チームとしての連携では大きな差がある。
こちらのボールで試合が再開される。
すると、翔吾くんがドリブルで前へ出た。
そして――。
まっすぐサヴィーニへ向かっていく。
(あー……)
想像通りというか、なんというか。
翔吾くんの「強い敵と戦いたい」という本能が、そのまま出ている。
サヴィーニと一対一。
激しくボールを奪い合う。
翔吾くんも粘る。
でも、最後にはサヴィーニに奪われた。
その瞬間、試合中にもかかわらずわたしは翔吾くんに詰め寄った。
「翔吾くんの目的は、なんだったかな?」
「……この試験に合格すること」
「翔吾くんのアピールポイントは?」
「……点を取ること」
「よろしい」
これでわかってくれればいいんだけど。
試合はそのまま続く。
烏合の衆とはいえ、個々の能力は十分に高い。
相手にゴール前まで詰め寄られながらも、なんとかボールを奪い返した。
そして、そのボールがわたしのところへ回ってくる。
(おっ)
どうやら、ここまでの試験で、それなりに味方からの信用も得られているらしい。
だったら、それに応えないとね。
わたしは左サイド寄りをドリブルで上がる。
右を見る。
翔吾くんが走っている。
右サイドを一気に駆け抜けていく。
よし。
ここから――。
と思ったところで、相手の動きが変わった。
サヴィーニの手が、すっと上がる。
それだけだった。
なのに、相手の選手たちが一斉に動いた。
(えっ?)
フォーメーションが、まるで生き物みたいに移動していく。
翔吾くんがシュートへ入れそうなコースが、次々と潰されていく。
(うまいな……)
さすがにこれは厳しい。
仕方がない。
翔吾くんが反応してくれることに期待して、わたしは開いている右サイドへ大きくパスを送った。
ボールが飛んでいく。
その先には、誰もいない。
でも、翔吾くんなら走り込んでくれるはず。
そう思った瞬間――。
サヴィーニが動いた。
ボールへ向かって一直線。
そして、あっさりとカットされた。
(……え?)
まさか。
どうやら、最初から誘導されていたらしい。
わたしが空いていると思った右サイド。
翔吾くんが走った右サイド。
それ自体が、サヴィーニの狙いだった。
そのまま相手のカウンターが始まる。
しまった。
でも、こちらの味方が下がり気味にいたおかげで、なんとか得点は防ぐことができた。
危なかった。
その後も、何度か攻撃の形を作る。
けれど――。
わたしから翔吾くんへのパスは、ことごとく潰された。
翔吾くんへ出そうとすると、そこには必ず誰かがいる。
別のところへ出そうとすると、サヴィーニが先回りしている。
(参ったなぁ……)
相手は連携が取れている。
こっちは、今日初めて一緒にプレーする選手ばかり。
それなのに、みんな必死に守ってくれている。
(本当に、よく守ってくれてるよ)
この人たちには、頭が上がらない。
でも、このままじゃ終われない。
翔吾くんのためにも。
そして、わたし自身のためにも。
なんとか、この試験で自分たちの力を見せないと。
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