第71話 真の主役
これまで実在の人物がちらほら登場してきましたが、ここから先は基本的に、現実とは異なる世界線として、登場人物はすべて架空の人物とします。
国やチームなどについては、実在するものをモデルとし、名称もそのまま使用させていただきます。
ただし、今後の展開によっては、一部、実在の人物をモデルにしたキャラクターが登場する可能性もあります。
(マラドーナにあたる人物抜きでは、これからの世界のサッカーは語れないと思いますので)
その少年を見た瞬間、わたしがずっと抱いていた謎の一つが、氷解した。
なぜ、ユヴェントスは今年になって急にジュニアユースチームを作ることになったのか。
わたしたちにとって、あまりにも都合がよすぎる話だった。
もちろん、わたしたち二人のために用意されたものなんかじゃない。
すべては――彼のためだったのだ。
同じ年齢だったことを、すっかり忘れていた。
何度も、その活躍を見てきたはずなのに。
後に「ユヴェントスの魔術師」と呼ばれることになる男。
ピエトロ・サヴィーニ。
何歳の頃から注目されていたのか、わたしは正確には知らない。
ただ、前世の記憶では、二十歳になる前にはすでにイタリア代表に選ばれていた。
そんな地元出身の逸材を、他のクラブに渡したくない。
だからユヴェントスは、急遽ジュニアユースチームを作ってまで、彼を抱え込もうとしたのだろう。
そこへ、わたしたちが都合よく便乗できた。
そういうことだったのだ。
「どうしたの?」
隣から翔吾くんの声がする。
「ううん……」
サヴィーニのことを、うまく説明できるはずがない。
将来どうなるかなんて、言えるわけもない。
「なんか有名な子らしいね」
それくらいが精一杯だった。
「ふーん」
翔吾くんがサヴィーニを見る。
「ライバルか」
その目が、キラリと輝いた。
……あ。
これはまずい。
「いい、翔吾くん?」
「なに?」
「今日の目的を忘れちゃダメよ」
「忘れてないよ」
「試験に合格することだからね」
「わかってるよ」
返事だけは素直だ。
でも――。
なんだろう。
ぜんぜんわかってない気がする。
たぶん翔吾くんの頭の中では、もう試験に合格することより、サヴィーニとの勝負のほうが大きな問題になっている。
そんなことを考えていると、スタッフから声がかかった。
『集合してください』
「行こう!」
翔吾くんが勢いよく駆け出す。
イタリア語がわかってないくせに、どうしてあんなふうに反応できるんだろうか。
「ちょっと、翔吾くん!」
慌ててその後を追う。
さぁ。
いよいよ、試験の始まりだ。
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