第64話 優勝祝賀会
表彰式が終わると、先生がみんなを集めた。
「急だけど、祝勝会をやることになった」
「やったー!」
歓声が上がる。
六年生のお父さんの一人が洋食屋を営んでいて、午後の休憩時間なら店を貸してくれるという。
応援に来ていた保護者たちも一緒に、それぞれ車や自転車で店へ向かった。
◇
店内には長いテーブルが並び、ジュースや料理が次々と運ばれてくる。
「それじゃあ」
先生がコップを掲げた。
「市大会優勝、おめでとう!」
「「かんぱーい!」」
グラスが軽やかな音を立てた。
みんな笑顔だ。
さっきまで死力を尽くして戦っていたとは思えないくらい、賑やかな時間が流れていく。
「六年生はこれで大会は終わりだな」
先生が少し寂しそうに笑う。
「でも卒業までは練習に来てもいいからな」
「はい!」
六年生たちが元気よく返事をする。
その横で誰かがぽつりとつぶやいた。
「来年は弱くなるなぁ」
「翔吾と紗里がイタリアへ行っちゃうし」
その言葉に周りも苦笑する。
「まぁ、それは仕方ない」
「その代わり、向こうで大活躍してこい!」
いつの間にか、保護者にもユヴェントスの話は伝わっていたらしい。
「新聞の記事も読んだよ」
「すごい話だよな」
「本当にイタリアへ行くのか?」
次々と声を掛けられる。
「はい」
翔吾くんが照れくさそうに笑う。
「まだ試験に合格しないと始まらないけど」
「合格できるよう頑張ります」
わたしも頭を下げる。
「頑張れ!」
「応援してるぞ!」
あちこちから励ましの声が飛ぶ。
気付けば祝勝会は、わたしたち二人の壮行会のようになっていた。
優勝の喜びを分かち合いながら、みんなが未来を応援してくれる。
その温かさが、何よりもうれしかった。
イタリアへの道は、まだ始まったばかり。
だけど、その道はもう、わたしたち二人だけのものではなくなっていた。
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