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悪女、二周目はサッカー少年の夢に人生を捧げる  作者: 鳴嶋ゆん
第5章

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第55話 夢への設計図

 テーブルの上には、ユヴェントスから届いた返事。

 その手紙を、わたしたちは何度も何度も読み返していた。


「夢じゃないんだよね」


 翔吾が何度も確認する。

 紗里も笑う。


「夢じゃないよ」


 でも――


「喜んでばかりもいられない」


 机に紙を広げる。


「まず必要なのを書き出そう」


 鉛筆で一つずつ書いていく。


・パスポート

「これは絶対必要」


・ビザ

「観光で行くなら観光ビザかな……」


・航空券

「飛行機も予約しないと」


・ホテル

「どこへ泊まるかも考えないと」


 翔吾は頭を抱えた。


「全然わかんない」

「さすがにこれは素人じゃムリかな」


 苦笑する。


「旅行代理店を探そう」

「旅行代理店?」

「旅行のプロ」


 翔吾は感心する。


「そんな仕事あるんだ」

「プロにまかせるのが一番だね」


そして紗里はもう一つ書く。


・保護者

「これが一番大事」


 翔吾も頷く。


「子どもだけじゃ行けないよね」

「うん、まず亜紀さん」


 同行は誰か一名いれば大丈夫のはず。


「翔吾くんのお父さんとお母さんにも話さないとね」


 翔吾は少し真面目な顔になる。


「父さん、次の土曜日から休みのはず」

「じゃあ土曜日にお話しよう」

「うん」


 そこへ玄関が開く音。


「ただいまー」


 亜紀さんが帰ってきた。

 紗里は玄関まで走る。


「亜紀さん!」

「どうしたの?」

「イタリア行かない?」

「……はい?」


    ◇


 リビング。


 手紙を見せながら事情を説明する。

 亜紀さんは途中から何度も目を丸くする。


「ユヴェントス?」

「うん」

「イタリア?」

「うん」

「招待?」

「うん」


 読み終える。

 しばらくの沈黙。


 そして。


 「行く!」


 即答だった。


 「え?」


 紗里が驚く。


「そんなの絶対行くでしょ」


亜紀はカレンダーを持ってくる。


「試験が三月末……」


 日にちを数える。


「前日入りじゃ怖いね」

「できれば二日前」

「じゃあ、この日に出発」


 さらに指を動かす。


「試験の次の日くらいは観光できるかな」

「その翌日に帰国」


 どんどん予定が埋まっていく。


「仕事は?」


 紗里が恐る恐る聞く。

 亜紀さんは笑った。


「明日、有給申請する」


 少し間を置いて。


「もしダメって言われたら――」


 胸を張る。


「仕事辞めてでも行く」

「そこまで!?」


 紗里が思わず叫ぶ。


「当たり前」


 亜紀さんは笑う。


「紗里ちゃんにとって大事なことなんでしょ?」


 その言葉に紗里は少しだけ胸が熱くなった。

 まだ何も始まっていない。

 けれど。

 一歩ずつ。

 本当にイタリアへ向かって動き始めていた。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!


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