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悪女、二周目はサッカー少年の夢に人生を捧げる  作者: 鳴嶋ゆん
第4章

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第53話 最高のクリスマスプレゼント

 十二月二十四日。

 クリスマスイブ。


 ……とは言っても、小学生にとってはクリスマスよりも大事な日がある。

 二学期の終業式だ。


 教室では一年を締めくくる話が終わり、先生から通知表が配られていく。


「はい、大島」

「ありがとうございます」


 席へ戻り、そっと通知表を開く。


「……」


 全部、五。

 思わず見返す。


「ほんとに全部?」


 転生したからといって、知識チートというわけじゃない。

 むしろ社会なんて危なかった。


 前世の私は小学校中退だ。

 日本史なんてほとんど勉強した記憶がない。

 授業をちゃんと聞いて、家でも復習した結果だ。


 努力が報われた。

 それが少し嬉しかった。


「紗里ちゃん、見て」


 翔吾くんは気軽に通知表を差し出してきた。


 体育は当然のように五。

 算数と理科が四。

 他の科目は三が多く、四がチラホラと。


「ずいぶんいいね」

「そう?」

「家で教科書開いたことないって言ってたよね」

「宿題くらいしかやらないかな」


 それでこれなら十分優秀だ。

 特に算数と理科。

 理系の素質があるのかもしれない。

 少なくとも頭の回転が速いことだけは間違いない。


 終業式は午前中の早めの時間で終わった。

 サッカー部も今日は休み。

 冬休みの間も練習はないらしい。


 校門を出たところで、わたしは翔吾くんを呼び止めた。


「ねえ」

「ん?」

「今日はクリスマスイブだから」


 一度言葉を切る。


「デートしよっか」


 翔吾くんが少しだけ照れたように笑う。


「いいよ」


 ……とは言ったものの。


 小学生のクリスマスデートって何をするんだろう。

 前世の十代は、クリスマスどころじゃなかった。

 二十代以降のクリスマスなんて、小学生の参考になるはずもない。


「どこ行こう……」


 頭に浮かぶのはファーストフード店。


 マクドナルド。

 ロッテリア。

 ケンタッキー。

 ミスタードーナツ。


 でも近くにはどれもない。


「あ」


 一つだけ思いついた。


「寿がきや!」


 近所のユニーの中にある。


「……クリスマスデートにラーメン?」


 自分で言って少し微妙な気持ちになる。

 でも、他に思いつかない。


「いいじゃん」


 翔吾くんは笑った。


「紗里ちゃんと一緒なら」


 その一言で十分だった。


 ユニーはクリスマス一色だった。

 店内には赤や緑の飾り付け。

 どこからか流れてくるクリスマスソング。

 家族連れや買い物客で賑わっている。


 その中で。

 二人並んでラーメンをすすっていた。


「やっぱり翔吾くん二杯なんだ」

「足りないし」


 知ってた。

 デザートにソフトクリームも食べて。

 少しだけ店の中を歩いて。

 クリスマスらしい雰囲気だけ味わって。

 それだけの、小さなデートだった。


「じゃあ帰ろっか」


 そのまま二人で、わたしの家へ向かう。

 家の前まで来ると、一台の赤い郵便バイクが止まっていた。

 郵便配達のおじさんが封筒を片手に困った顔をしている。


「航空便なんだけどね」


 封筒を眺めながら首をかしげる。


「英語でもないし、住所や名前が合っているか自信がなくてね」


 わたしは封筒を見る。

 見慣れない切手。

 見慣れない消印。


 そして。

 見慣れた文字。


「大島紗里です」


 心臓が一気に跳ねた。


「わたしで間違いありません」


 郵便配達のおじさんはほっとしたように笑い、封筒を手渡してくれる。

 封筒の左上には。

 思ってた名前が印刷されていた。


 JUVENTUS FC


「……」


 一瞬、息が止まる。


「翔吾くん」

「うん」


 二人で顔を見合わせる。

 そして。


「「やったぁ!!」」


 思わず飛び跳ねた。


 待ちに待った返事が来た。

 どんなクリスマスプレゼントよりも嬉しい贈り物だった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!


今回の話で第4章は完結、第5章はいよいよイタリアへの旅立ちまでの予定です。


キリのいいところで、少しでも「面白そう」と感じていただけましたら、『ブックマーク』や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけますと嬉しく思います!


皆様の応援がモチベーションに繋がりますので、よろしくお願いいたします!

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