お見通し
あの女を、殺す。そう決めてからの時間は、あっという間だった。
昼休み……あの女を、屋上へと呼び出した。あの女は、なにを疑うこともなく、やって来た。
「どうしたの怜、こんなところに呼び出して?」
屋上に立つのは、二人だけ。二人だけの空間……俺にとっては、そんな空間反吐が出る。この場においては、それはありがたい。誰も、見ていないのだから。
たとえ向こうの校舎から見ていても、誰が立っているかまではわからないはずだ。屋上の端に、二人の男女が立っているくらいだ。
「お前に、話したいことがあってな」
「え、なになに!」
なにを話されると思っているのか……それとも、俺に話しかけられたというだけで嬉しいのか。
どっちでも、いいことだが。
「それはな……」
「?」
ゆっくりと、近づいていく。それを確認すると、なぜか頬を染めている……まさか抱き締められる、とでも思っているのだろうか。
俺は、お前を……
トンッ……
「ぁ……」
こいつの肩を押し……背後へと、突き飛ばす。この屋上には、外に落ちないように柵があるわけでもない。屋上から落ちれば、それでおしまいだ。
これで、この女はなすすべもなく地面へと落ちて……
「あーらら、ダメだよ怜……そんなんじゃ」
「!?」
手首を、掴まれる。まさか、俺を道ずれに落ちるつもりか……?
しかし、体勢を崩したはずのそいつは、少し立つ場所を横にずらしたくらいで、平然とそこにいた。今尾とされそうになったというのに、涼しい顔をして……
「私を、殺したいんでしょ?」
「!」
「怜の考えてることなら、なーんでもお見通し」
耳元で、囁かれる。俺のやろうとしていたことを、暴き……なのに、怒りも悲しみも感じさせない、いつも通りの声。
掴まれた手首。続いて、手になにかを握らされる感覚。それは、馴染みのあるもの……視線を向けると、それはハサミだった。
なにを、するつもりか。それを問いかける前に、ハサミを握らされた手を、手首ごと動かされ……
ザクッ……
そいつは、俺の手に握らせたハサミで、自らの腹部を突き刺した。




