あの女はどこだ
プルルル、プルルル……
「くそ!」
無機質に、電話の着信音だけが耳に届く。いつもなら、あんな女の携帯に電話をかけるなんてことはしないが、今は緊急事態だ。
繋がらない着信音に苛立ちつつ、電話を切る。そして、再びメールを開き……文面を見る。
『怜、部活お疲れ様。やっぱり走ってる怜はかっこいいから、その姿にきゅんときた女子から告白されるのも仕方ないよね。告白を断ってくれたのはすごく嬉しい……けど、鹿波先輩、だっけ。私の怜を取ろうとしたあの人には、ちょっとわからせてあげないとね』
なんで俺が鹿波先輩に告白されたことを知っているのかとか、なにをするつもりなのか……疑問はある、不安しかないが、今は後回しだ。
皮肉にも、あの女から逃れるために入部した陸上部で鍛えられた足が、今は役に立つ。今はとにかく、家に急がないと。
「ふっ、ふっ……」
あの女が先輩になにかする気なら、あてもなく探すより……家の周辺を探す方がいい。それに、あのメールはただ俺を驚かせようとした冗談の場合だってある。
冗談にしては、たちが悪すぎるが。
ばたんっ!
「あいつは……?」
ひとまず、家に戻る。いつものようにリビングにでもいてくれれば、楽だったのだが……
「っ……」
「あら怜くん、おかえりなさい」
「た、ただいま……あの、あい……マリシャは?」
おばさんやおじさんの前でまで、あいつ、あの女とはさすがに言えない。
「え? さっきコンビニに行くって出ていったわよ。それより怜くん、そんなに息を切らせてどうし……あ」
ここにあいつは、いない。それだけ聞き、俺は家を出ていた。しかし、あの女はさっきまで家にいたはずなのだ。なのにどうして……
あの女から折り返しの電話でも来てないかと携帯を見るが、なにも反応はない。くそっ、とにかく連絡さえ……
「あ……」
そこでふと、気づく。家に帰るよりも、家に電話しておばさんにあの女がいるかどうかを聞けばよかったじゃないか!
こんなことに、今更気づくなんて……これじゃ、わざわざ時間を無駄にしたようなもの……
プルルル、プルルル……
そこへ……着信が、鳴り響く。画面には、芹澤 マリシャと、表示されていた。




