電話の向こうで
ピッ
『あは、怜ー? 怜から電話してくれるなんて、すっごく嬉しいよ。なのにごめんね、すぐに出られなくて。私、一生の不覚だよー』
「お前……!」
電話に出ると、向こうから聞こえるのは底抜けに明るい、あの女の声だ。つい、感情が高ぶってしまう。しかし、ここで感情任せに叫んでしまっても事態は好転しない……
『あれ? そこは「一生なんて大袈裟だろー」みたいなリアクションを求めてたのに。も、ノリが悪いゾ!』
「っ……!」
あ、これダメだ……冷静にならなきゃいけないが、どうしても癇に障ってしまう。
だが、落ち着け。まずは、確かめるべきことがあるだろ。
「お前、あのメールはどういうつもりだ」
『んー? あのメールって……』
「とぼけんな……! さっき、俺が部活終わったタイミングで送ってきたろ」
わざわざ名指ししないといけないのは、こいつはそれだけ、自分が異常なメールを送ったことに気付いていないってことだ。
それに、こいつは一日に何件ものメールを送ってくる。どのメールのことを入っているかわかっていないのだ。
「さっき……あぁ、あれ。文章通りの意味だよ」
「お前……!」
やはりあれは、冗談などではなかった。わかってはいたことだが、ほんのわずかな期待に賭けたのが間違いだった。
「お前、先輩になにした! いや、なんで告白のことを知ってるんだよ!」
「まだ、なにもしてないよ?」
「ふざけんな! 俺は告白断ったろ! 先輩に危害を加えようとする意味なんかないだろ!」
「あれぇ、怜。なんであんな泥棒猫の心配なんかするのかな。もしかして……」
「答えろ!」
ダメだ、話が通じない……! こいつ、人の話を聞かないところはあるが、それがこんなにイライラさせられるとは。
今どこにいるのか。なにをしているのか。そして、メールに書いてあったことを、そのままやらせるわけには……
『ゃ……ゃめ、て……』
「!?」
そこへ、電話口から声が聞こえる。しかしそれは、あの女のものではなく、消え入りそうな小さな声。なにかに、怯えているような。
ほんの、一時間も経ってないうちに聞いた、声。
「お前っ、やっぱり先輩を……!」
『あはっ、ばれちゃったか』
電話の向こうで、なにが起こっているのか……こいつ、なにをするつもりだ!




