第十一話 ゼファーの苛立ち
まだ戦闘パートじゃ無いです。手違いなのです。
「じゃあ皆で一斉に魔王を叩きのめすぞ!」
勇者が野蛮な雄叫びをあげる。複数で叩きのめすなんて酷いとは思わんのか。
「待ちなさい」
ゼファーが一声放ち、悠然と勇者組の前に歩み、立ちはだかる。
「貴方達は相応しくありません」
「急に出てきてなんだ貴様!」
騎士のタケルが横入りするゼファーに対して怒りの色を表す。
「これは申し遅れました。私、魔王様の側近にして執事である、ゼファーと申します。そして、貴方方を討ち亡ぼす者です」
悠々たる立ち姿でつづける。
「そのような中途半端な力で魔王様を倒すだの、自分達が最強であるだのと、少々耳障りなのですよ。矮小な存在である貴方達が何を勘違いしているのか。と、少々疑問に思いましてね。貴方達もそう思うでしょう?」
ゼファーの呼びかけに、ユイとシェリーが姿を現わす。
「私たちもそう思うわ。下等な種族の分際で、魔王様になんて不敬な物言いをするのかしら」
シェリーが勇者組達を蔑む。しかし、勇者組の連中はシェリーの色香に目を奪われる。燃えるような真紅の瞳に、真紅の髪。だが、焔を思わせるその瞳からは途轍も無く冷たいオーラを感じていた。
「あなたもなんとか言ってやりなさいよ、ユイ!」
何故かしゃがみこんでいるユイはおずおずと、シェリーのスカートの陰から顔を出す。
「そうだそうだー」
これがユイの全力らしい。ユイも人間であるから、シェリーの物言いは腑に落ちないらしく、スカートの裾を掴み上目遣いでシェリーを見上げている。それに気付いたシェリーはそっと微笑みユイの頭を撫でる。顔が緩みそうになるユイだが、グッとこらえて真顔を保つ。健気な娘である。
その光景を横目に見ながら、やれやれと溜息を吐きゼファーは提案する。
「では、こうしましょう。貴方全員で、我々を倒すことが出来たら、魔王様と相対する権利を与えましょう」
「はぁ!?なんで私がこんな奴らと……」
抵抗するシェリーであったが、ゼファーの微笑みに言葉を飲み込む。その不気味な笑顔から察するにゼファーは相当苛ついているようだ。勿論シェリーにではなく、勇者組とやらに。
「そんなの朝飯前だぜ!なあみんな!」
「そうだぜ!魔王戦の前に中ボスってところか!?」
「まあ、中ボスなんだから肩慣らし程度に準備運動でもさせてもらおうか!」
勇者組は好き勝手言い放ち、再度武器を構える。
長々と間延びしたが、漸く戦いの火蓋が切られようとしていた。
なんでもいいから早く我を楽しませてくれ。だんだん気が削がれてきたぞ。




