9 一堂、出立! あなたホントに聖女ですか?
ジン達一行は平和な旅を始めようとしていた。
馬が2頭。人は3人。
「それでは、シルビア、ジン殿に馬を譲って私と相乗りいたそう」ルーファス。
「ええっ!俺、馬に乗れませんよ!」ジン。
「体重を考えますと、、、仕方がありません。私が乗せましょう。ジン殿、後ろにどうぞ」シルビア。
シルビアがジンを引っ張り上げた。ジンがシルビアの後ろに跨った。
「ひっ、馬ってこんなに高い。落ちたら怪我するよな。怖い!揺れる!」
震えるジンがシルビアの細い腰に腕をまわし、抱きついた。
さらにジンの頭に、振り落とされまいと瑠璃猫もしがみついていた。
「まだ歩き出してもいません。しゃべると舌をかみます。口を閉じてください」
業務連絡のように淡々と言うシルビア。
「で、でも、怖いですぅ」
情けなく言うジン。
「我慢して、、、、変な所を触らないで下さい!落としますよ!」怒るシルビア。
「すいません!わざとじゃなくて!怖くて!、、、、ひいっ」
馬が走り出した。
ジンの尻が限界を迎えた頃、昼休息になった。
ぐったりなジンと瑠璃猫。
「昼食の材料を取ってまいります」
シルビアが森に入り姿を消した。
ルーファスが木の枝、枯れ葉を集めている。
『おい、ルリ。ジンの尻に癒しをしてやれ』聖剣。
「にゃーー。ニャニャンニャニャー」
(ええっ。男の尻、、、。触るのヤナンダケド。仕方ないか」
瑠璃猫がジンの尻に肉球を当てた。淡い光が生まれ、ジンの尻に吸い込まれた。
「あ、痛くない。ルリかー、ありがとう」ジン。
「少し良くなったので、食べれる野草を採って来ます!」ジンも森に入った。
シルビアが取ってきた鳥。ジンの採ってきた野草で昼食となった。
ルーファスが鳥を手早く捌いた。
「旅にしては豪華な食事だな」
「美味しいです!」
「そうですね」
「ニャーン」(うん、おいしー)
昼からも旅路を進めた。
「ちょっと!そこは胸!触るな!」シルビア。
「えっ?胸??」
信じがたいジン。
「胸よ!!」
ジンの手をはたくシルビア。
「抱きつきすぎ!耳元でハァハァ言わないで!気持ち悪い!」シルビア。
「怖くて息切れなんですー!」(シルビアさんいい匂い)
「だから、密着しないで!腕も胸に回すな!」シルビア。
「うわーん!ごめんなさいー!」
賑やかな、旅路だった。
夕刻には街に着いて宿に泊まった。
翌朝、シルビアはジンとの相乗りを拒否した。
「痴漢とは相乗りしません」
男二人なら頑強な馬のほうが良いだろうと、ルーファスとシルビアは馬を交換した。
しょんぼりしたジンはルーファスの後ろに乗った。
「なぁ、、、ルーファス様、男2人で馬って、なんかこう、虚しさがあるな」
硬い背中に顔を当て、汗臭い体臭を吸いながら言うジン。勿論腕をまわした胸板も厚い。
「気が合うな、ジン殿。私も今、全く同じ気持ちだ。男に密着されて、すまんが虚しい」
男女別で出立した一行。
シルビアの背中、カバンに入った瑠璃猫はゴキゲンだった。
しがみつくより安定している。
シルビアがタオルを入れてくれたので、気持ちよく眠れそうだ。
一方、男二人を乗せた馬は、ゴキゲンナナメだった。
一行は街を抜けて街道をパカパカ歩いている。
男二人を乗せた馬の気持ち。
美女シルビアちゃんを乗せていたのに。昨日はお邪魔虫な男もいたが。
今日は重い男と昨日のへなちょこ男の二人だ。
重い。そして、なんかイヤ。
汗臭い、男臭い、とにかくムサイ。
馬はイライラムカムカ、憤りが溜まり、突然うおおおお!と走り出した。
気持ちは「おまえら、むさ苦しいんじゃあ!」であった。
「うわっ?!とうした!とまれ!止まってくれ!!」ルーファス。
「うわわわわわん!怖いようー!」ジン。
ルーファスとジンを乗せた馬が走り去り、シルビア・瑠璃猫ペアは取り残された。
「いっちゃったわ」
あきれ声のシルビア。
「ニャー」
(うん、いっちゃった)
シルビアが1人になったタイミングで、森から野盗が10人程出てきてシルビアの馬を囲んだ。
棍棒やナタ、槍を持ち構えている。
「へへへ!お姉ちゃん、美人だねー。良い馬乗ってるし。もらってやるよー。大人しくおりてきな。そしたら怪我しないぜ。俺らが優しく遊んでやるぜー!」
「邪魔な野郎どもがいなくなって助かったぜ!」
男達はニヤニヤしている。
瑠璃猫は震え上がった。
「ニャーン」
(イヤー!こわいー!)
「きゃー、助けて!っと!」
シルビアは煙玉を勢いよく落とし、同時に暗器を投げた。
シュシュシュシュシュシュシュッパッ!
何かが当たり、切れる音が複数した。
煙が収まると、男達が全員倒れていた。
瑠璃が見た男の顔は、目に大きな釘のようなものが刺さっていたり、喉に短い刀身が刺さっていたりしている。
シルビアは馬を下りた。男を一人ずつ、蹴飛ばしうつぶせにして頭と首の境目辺りを剣で差していった。文字通り、トドメを刺している。順番に、躊躇なく、全員に。
瑠璃猫はその光景に震え上がった。
そうしてから、シルビアは男らの懐を探り、一人ずつ財布から金を抜き取った。そして、男らの遺体の足をつかんで引きずって、森へ運び、捨てた。
瑠璃猫は馬の上、カバンの中から、その様子を見ていた。震えていた。
「ふう、終わった。、、、そんな目で見ないでよ。怯えた猫ちゃん。、、、私が怖い?、、、アイツラは私に酷いことをしようとしたのよ?正当防衛よ。、、、それに、生かしたら次に誰かが襲われる。
、、、そしたら、誰かが死んで、私みたいな孤児ができる、、、。帰ってこない親を待つ子供が出来るから、、、私は人殺しだけど、それでいいの」
シルビアは虚ろな目で微笑んだ。その顔は、感情を失くしているけど、泣いてるように、瑠璃には見えた。
(この人、、、この人は、聖女なんかじゃない。暗器で人を殺せる、、、哀しい暗殺業の人??)
瑠璃猫は恐怖、驚愕、哀しみの感情が入り乱れた。
シルビアは馬を走らせた。ルーファスとジンを追った。
瑠璃はジンの底抜けにお人好しの笑顔を見たくなった。
、、、あの顔をみたら、安心出来るから。この震えが止まるはずだから。




