6 治りすぎた! 市場の怪しい薬売り
よろしくお願いします
「怪我でお困りの人はいませんかー?どんな怪我も治す塗り薬ですよー!」
王都の市場の隅で、靴磨きの少年の隣で、ジンは引きつった笑顔で客引きの声を上げていた。
「ウソクセー」
靴磨きの少年のツッコミがジンの心に刺さる。
「ニャンニャー、ニャーニャン」(お客様が来ない。宿が、、なくなる)しょんぼりする瑠璃猫。
『大声で客を呼べ!奇跡の薬だとな!それに、安すぎる!百倍の値段にしろ!』聖剣。
隣の靴磨き少年の所には客がいる。
「まいどありー、お客さん、この人達かわいそうなんすよ。人助けだと思って、怪しい薬塗ってみてあげて下さい」
投げやりな靴磨きの少年の声かけ。
靴磨きの少年の常連客は、
「確かに、かわいそうだな。しかし俺はケガしてないからなー。1人も客が来てないのか。ま、宣伝しといてやるよ」
と言うだけ。やはり客になってくれなかった。
閑古鳥状態で時間が過ぎていく。
「何でも治るとかいうくせに、やたら安いのもおかしいよな。
無茶苦茶怪しいんだよなー」
靴磨き少年のつぶやき。
小心者のジンは詐欺に大金を払わせる事が出来ず、安い値段を看板に書いていた。
「傷がちょっと良くなる薬、って書き換えようかな」ジン。
吹き出す靴磨き少年。
そこに、大きな帽子で顔を隠してうつ向く女の子を連れたお婆さんがやって来た。
「どんな傷でも治る塗り薬って、本当ですか?」お婆さん。
「はい!よく効く薬です!どうされたんてすか?」
初客に喜ぶジン。
「私の不注意で、この子が小さい頃に顔にヤケドをさせてしまって、、、。女の子なのに、、、」
お婆さんはホロホロ涙を流した。
「それは、お辛いですね」
つられて涙ぐむジン。
「少しでも良くなるなら、何でも試そうと思って。怪しそうと聞きましたが、来てみました」お婆さん。
靴磨き少年の常連客は、「怪しい薬売りがいる」と宣伝してくれたようだ。
「ニャニャンニャー」
(道理で客が来ないよ!)
瑠璃猫はプンプン怒った。
「かわいそうに。それでは、この薬を塗ってみましょう」
ジンが薬壺から匙に薬を掬い取った。
打ち合わせ通り、ジンの肩に瑠璃猫が乗った。
女の子は怯えて、顔を隠していたが、瑠璃猫が「ニャーン」(顔を上げて)と鳴くと、通じたのか顔を上げた。
酷いヤケドだった。爛れ、唇が引きつれている。
「痛かったね。つらかったね」
ジンは女の子の顔に優しく薬を塗った。そして、白い布で女の子の顔を覆った。瑠璃猫が白い布に肉球を乗せた。
「ニャニャーン!」(治って!)
布の下で淡い光が生まれ、ヤケドの皮膚に吸い込まれていった。
『ルリ!ほどほどにしておけ!って、もう遅かったか、、、』
「???今、光りませんでした?」お婆さん。
「きのせいです!」ジン。
「ふんわりあったかい、いい気持ち」女の子。
少しして、ジンが、
「そろそろ良いでしょう」
と布を外した。
女の子の顔にはヤケドの跡形は全く無かった。
可愛らしい顔の少女になっていた。
「うそ、、、ヤケドが、、。全く残ってない!ありがとうございます!ありがとうございます!
ホントに、ありがとうございます!これだけしか持ち合わせがありませんが、とうか、お収め下さい」
お婆さんが有り金を全部(それでも少額だった)ジンに握らせた。泣いて喜んでいる。
女の子は自分の顔を不思議そうに何度も撫でていた。
「引きつってない、でこぼこしてない!ありがとう!ありがとう!うわーん!嬉しいよー!」
女の子もワンワン泣いた。
「嘘だろ?奇跡じゃん」
靴磨き少年は呆然としていた。
見ていた野次馬が、騒ぎ出した。
「おい、みたか?」
「ヤラセじゃないのか?」
「ありえないわよね?」
『ジン、ルリ、治しすぎだ!マズイぞ!逃げろ』聖剣。
「え?え?なんで?」
お婆さんと女の子が涙を流して喜ぶ姿を見たジンは、感動してボロボロ泣いていた。
瑠璃猫もウルウルしていた。
聖剣の声で周りを見て、ジンと瑠璃猫はギョッとした。
目をギラつかせた大勢の人間に射るように見つめられていた。
「おい!その奇跡の薬、俺が全部買う!寄越せ!」
「魔法の薬、私にもちょうだい!」
「いや、私が高値で買う!寄越せ!」
「オレニ!」「私に!」「俺が買う!」
「ヒィィ!」詰め寄られたジン。
目の色を変えた野次馬がジンから薬壺を奪った。
薬壺をわーわーギャーギャーと、取り合い始めだした。
ジンはお婆さんから貰ったお金を握りしめて、市場を逃げ出した。
聖剣は腰ベルトに、瑠璃猫はジンの頭に乗った。
「なんで、こーなったんだ??!!」ジン。
『だから、治しすぎだと言ったろうが!』聖剣。
「ニャンニャンニャーン!」
(私の肉球、凄すぎる!)
瑠璃は異世界に転移した時に猫にされ、聖なる肉球を貰ったのかな?と思った。
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