4 臆病勇者と聖女猫、ついでに聖剣
よろしくお願いします。
王都の賑やかな街の一角。
ジンは背中に冷や汗を流しながら、街の警備隊詰所に来ていた。
「あの、すいません。この剣、森で落ちてて、拾いました。落とし物として届けます、ヒィッ怒らないで!」ジン。
『誰が落とし物だ!重ね重ね無礼者めが!』
落とし物と言われた聖剣が、ジンが言い終わらないうちにジンの頭の中で怒鳴った。
もちろん、騎士らには聖剣の声は聞こえない。
「変な奴だな。ふーん。ボロい剣だな。抜けるのか?」
恰幅のよい騎士がジンから聖剣を受け取り、抜こうとした。だが、、。
「ぬうう、、、。硬くて抜けんぞ。錆びついているのではないか?」
「なんだよ、錆びた剣か。うーん、ゴミだな。
ゴミを届けられても困るよな!」
騎士達がどっと笑った。
「え?おかしいな、、、」
騎士に返された剣を抜こうとしたが、ジンにも抜けなかった。
「素材にはなるかもしれん。邪魔なら鍛冶屋に売ってみると良い」騎士。
「はあ。、、、すいませんでした」
ジンは警備隊詰所を出た。
首を傾げながら、聖剣を腰に差して歩き出した。
しばらくしてから、またジンの頭に響く声がした。
『売るな!売れば末代まで祟ってやるからな!
それから、俺様はゴミでは無い!全く、無礼者だらけだ!』
ジンは無言。
『、、おい、どうした?もう怖いと泣かんのか?』聖剣。
「俺は、きっと精神の病にかかったんだ。それか、祟りだ、、」
虚ろになったジン。
『おい、ジン、しっかりしろ。病ではないぞ。お前は俺様に選ばれたのだ!勇者だ!喜べ!誇れ!』聖剣。
「俺は、もうおかしくなっている。どうすればいいんだ、、、」ジン。
『ふむ、どうするべきが道を示してやろう。このまま進め。この道を行け』聖剣。
「はははははは」
力なく笑うジン。目は逝っちゃってる。ジンは自称聖剣の言うままに道を歩いていった。
瑠璃猫は異世界の街並みに完全にパニックになっていた。
猫になってるし。異世界だし。
就活失敗どころじゃないよ、どうすれば良いの、、、。
トボトボと路地裏を歩いていた。
気がつけば、目の前に犬!
後ろにも犬!
瑠璃猫は震え上がった。
「にゃにゃにゃにゃにゃーん!!」(誰か助けてー!)
「こら!あっち行け!」
ジンが気がついて、走り寄り犬を追い払った。
ジンも内心は怖かったけど、猫を助けたかった。必死で追い払うジン。
犬が一匹、ジンの手に噛みついた。
「いて!コノヤロー!」
ジンは犬を蹴飛ばした。
なんとか犬を追い払ったジン。
瑠璃猫はジンのふくらはぎ部分のズボンに爪をかけてしがみついた。
「ニャアン!」
(怖かったよー!)
「もう大丈夫だよ。猫ちゃん。、、、へー、キレイな毛並みの猫だな」
ジンは猫をベリッとはがして、抱き上げた。
瑠璃猫はジンを見つめた。
優しい!目をキラキラさせた。
「キレイな瞳の猫だな。金色の瞳か」
瑠璃猫はジンの手が血を流しているのに気がついた。
(さっきの犬だ。私のために、この人に怪我させちゃった、、)
瑠璃猫がジンの怪我した手に、肉球をそっと当てた。
「ニャーンニャ」
(早く良くなって)
瑠璃猫の肉球から淡い光が生まれ、ジンの傷に染み込むようにして、消えた。
「えっ?光ったし、痛くないし、えっ、治ってる、、、」ジン。
『さすが俺様!もう勇者と聖女を出会わせたぞ!ははははは!』
「ニャンニャンニャーン!ニャンニャーン!」
(誰が喋ってるのー?!私とこの人しかいないのに、もう1人の声がするー!なんで??」
『はははは!聖女猫よ、この声は聖剣ケン様だ!』
「ニャンニャンニャンニャ?」
(はぁ?ケンケンケンチャ?)
『馬鹿者!聖剣、ケン様だ!』
「さっきから、ますますわけがわからないな。
セイケンケン?拳法の流派か?
猫ちゃんはニャーニャー元気だね」
ジンには聖剣のテレパシーしか頭に響かない。瑠璃猫の声は猫の鳴き声にしか聞こえないのだ。
名をヘンテコに言われて、怒った聖剣はケンと名のるのをやめた。
『俺様は聖剣様だ!馬鹿者ども!』
ジンと瑠璃猫の頭に、自称聖剣様の怒鳴り声が響いた。
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