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神(髪)の薬 ハゲカラケ 前編

よろしくお願いします!

「君!、、、そう、君だ!」

ジンが久しぶりに訪れた街で、見覚えの無い男に呼び止められた。


以前、ルーファス達と旅をしていた時に訪れた時に、お祭りをしていた街だ。

あの時から一年近く経つ。


「あの、俺ですか?」

相変わらず頭の上に瑠璃猫を乗せているジン。

「ニャン?」

(誰だろ?)


「ああ、間違いない。探した。、、、私を覚えていないかね?茶屋の主人だ。君から薬草ブレンド茶葉を買ったろう?」

物凄く嬉しそうなお茶屋の主人。


「ええっ、あの、、、」ジンが驚く。

「ハハハッ。見た目が変わったからね。わからなくて当然だ」


ジンは目を疑った。

目の前の男はふさふさの髪の毛、仕立ての良い服を着た壮年の紳士。商売に成功した者特有の、自信と余裕もある。


あの、お茶屋の主人は、ツルッパゲ。中年太り。どこかくたびれた感じのお祖父さん一歩手前。


同じ人なのだが、人相、風貌、雰囲気が全く違うのだ。


「君とぜひ話をしたい。

時間を貰えないだろうか?

そうだな、あのレストランの個室が良い。もちろん奢るよ」

にこやかなお茶屋の主人。


ジンは頷いて、そのお茶屋の主人と共にレストランへ向かった。


お茶屋の主人は名乗った。

「お茶屋ヨロシアンの店主、ヨラス・ヨロシアンだ。ヨロシアンと呼んで下さい」


「俺はジンです。ジン・スルファン」

ジンはルーファスに側近として仕える事になり、スルファンの姓をもらった。子爵位だ。

そして、今は新王体制の肝いり審議官で、仕事中だ。


「ジンくんか。私の息子より若いくらいかな。息子は28歳なんだよ」

ヨロシアンはニコニコしていた。



レストラン入口で、支配人が慌てて駆け寄ってきた。

「ヨロシアン様、ようこそ」

ジンをチラリとみて、ジンの頭の上の瑠璃猫を見た。

「申し訳ございません。猫様はご入店をお断りさせて頂きたく、、」


「すまないね、個室でお願いするよ。無理を言うのは申し訳ない。大切な客人なんだ」

お茶屋の主人、ヨロシアンさんが支配人にスッと何かを渡した。


「お得意様でございますので、本日は特別、ということで」支配人。


ジン達は奥のしつらえの良い部屋に通された。

ヨロシアンさんが、

「この店のこれと、これ、後これが美味しいんだよ」と注文してくれた。


2人きりになると、ヨロシアンがジンに頭を下げた。テーブルに付かんばかりの頭の下げかただ。


「ジン君、いえ、ジン様!お願いします!

あの幻の神薬ハゲカラケを、また売って下さい!」


「えっ?ハゲカラケ?それ何ですか?」

驚くジン。


「ジン様のお持ちになった薬草ブレンド茶葉の名前でございます!あっと言う間にハゲから毛を生やす奇跡の神薬にございます!」ヨロシアン。


「ハゲカラケ、、、俺の薬草ブレンド茶葉が、そんな名前に、、、」

ジンが遠くをみる目で呟く。衝撃だ。


「評判が評判を呼び、大陸中から問い合わせが来ているのです。

名前は言えませんが、我が国だけでなく異国の王公貴族様からのご注文を頂いております」ヨロシアン。


「えっ?」


「ハゲの悩みに国境はなく、貴賤もありません。

想像してみてください。

皆がフサフサの世界を、、、。

素晴らしい世界です。

我が子に遺伝する恐怖をあなたは知らない。

妻の腹の子が女の子でありますようにと願うハゲの気持ちを知らない。

男の子が生まれて、小さな我が子を抱きながら、嬉しいけれど若くしてハゲる悲しみをこの子も味わうのかと思う不憫な気持ちを。

努力で毛を生やすことは出来ないのです。

ハゲから毛を生やすことが出来るのは、奇跡の神薬、ハゲカラケのみです!」

ヨロシアンが物凄く力強く力説する。


ジンの父は若くして亡くなった。

父はハゲていなかったと思うが、心配になってきたジン。

故郷の母に手紙で聞こう、そう思った。


まだヨロシアンがハゲの悲しみを綴る。

「今度こそと、ドキドキして付き添いで見合いの場へ行っても、相手のお嬢さんの目線が息子の若ハゲ頭をさ迷う悲しさ。当日にお断りされる涙の日々。

私の息子は、本当に家庭的な男なのです。優しく酒もタバコもギャンブルもしない、子供好きな男なのです。料理も掃除も洗濯も、妻が厳しく仕込んだのです。

なのに、なのに!!ハゲのせいで!見た目で断られるのです!

中身を見て貰いたくとも、見て貰えないつらさ。

美味しいのに見た目が悪く食べて貰えない料理。

素晴らしく面白い小説(だと思って書いている)を書いたのに、読んで貰えない悲しみ。

これと同じです。わかりますか?

ハゲの悩み苦しみ、それらを一掃する、救いの神(髪)の薬ハゲカラケ!!

ハゲカラケのおかげで、息子は結婚出来ました!!

フサフサになって、一回目の見合いで、断られず、お付き合いが続き、先月結婚したのです!

素晴らしいハゲカラケ!ありがとうハゲカラケ!

ハゲカラケを作ったあなた様に、感謝を!」ヨロシアン。


「ハゲカラケが、そんなに人様の役に立つお茶だったなんて、、、」

信じられないジン。


「どうか、また売って下さい!お金はいくらでも、とは言えませんが、出来るだけ用意しますので」必死なヨロシアン。


「すぐに返事は出来ません。」

ジンは考えた。


丁度、食事が運ばれてきた。


瑠璃猫が椅子に座り、お行儀よく待つ。中身は人だから、当たり前なんだけど。


「子供用の椅子をお願いします」ジンが頼んだ。


大人椅子の上に子供用の椅子を乗せ、丁度良い高さになった瑠璃猫はゴキゲンだ。


ジンはあることを考えていた。


美味しい食事を頂いて、後日連絡する事にして、一旦解散した。


ヨロシアンは別れ際にジンの手を強く握り、頼んだ。

「ハゲカラケの効果が切れたらと思うと不安なのです。私も息子も、購入頂いたお客様も、ハゲカラケの常時販売を心待ちにしております!

必ず、必ず、ご連絡下さい!」





ハゲの悩みに国境はない

努力で毛は生えない


自分の中から名言が生まれる、ハゲカラケの凄さ


書き上げたので、投稿します!

お星さまやブクマ、頂いけたらとてもとても励みになります。

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