21 愚王グオール 悪事暴露へ
「私はグオール王にニセモノ勇者に仕立てられた。
聖剣様のお導きでココにいる!聖剣様、勇者殿、真の聖女様は我と共にある!
魔王など最初からいない!
悪政を敷いた愚王グオール!
私はお前を退位させ、私が王になり国を建て直す!」
ルーファスの必要の説得が続いた。
「反逆者め!この国の王は私だ!」怒り言うグオール王。
「民を苦しませる王などいらぬ。私は王都から辺境へ旅をした。
良き領主と讃えられる者が治める地では盗賊は出なかった。
悪しき者は捕らえられて罰せられるからだ。悪しき事をせずとも働き暮らせる地に領主がしているからだ。それならば、悪の道に走る民は少い。
今、この国は荒れている。民の心はすさみ、暮らし悪く、人は悪道へ落ちる。
私は民のための善き王たらんと生涯努力することをここに約束する!」ルーファス。
「うるさい!黙れ!王は私だ!
生かしておいてやったものを!
恩を仇で返しおって!
お前は反逆罪で処刑だ!
こやつを地下牢へ!いや、今すぐ殺せ!」
ルーファスを指さし怒鳴るグオール王。
戸惑う近衛兵もいたが、ルーファスに刃を向ける兵、ルーファス達に矢を構えた兵もいる。
「早く殺せ!」
グオール王が命令する。
「まて!射てはならん!
ルーファス殿下は、スチュアート王太子の忘れ形見ですぞ!刀を下げろ!」
ガルファ伯爵が怒鳴った。
「何!お前も反逆者か!ガルファ!
兄上は王太子にはなっておらなんだ!早くルーファスを殺せ!王命だ!」
「いいえ、先帝陛下はスチュアート殿下を王太子にと決定されておられました」ガルファ伯爵。
「うるさい!こやつも捕らえろ!ルーファスを早く殺せ!」
兵達はガルファ伯爵の言葉に剣を下ろし、うろたえた。
「俺がやる!」
グオールの側近がルーファスに斬り掛かった。
「放て!」
王に命令されて複数の兵が、とりあえずジンに矢を放った。
「ニャアアアアーー!」
(きゃー!怖いのイヤーー)
瑠璃が叫ぶと、ルーファス達が光に包まれた。
光に矢も刃も弾かれた。さらに、その光は一気に審議室の端にまで広がり、いた人々を包み込みふわっと消えた。
「何だ?今の光は?」
「聖女様か?聖剣様の不思議な力か?」
「何か、こう、心が爽やかになった気分だ」
「そうだな。神殿で感じるような清らかな空気の中にいるような感じだな」ざわめく審議室。
突然、叫び声が上がった。
「ウワアアアァ!俺は、俺は許されざる事をした!
グオール様に命じられて、スチュアート殿下に、、遅効性の毒を盛り続けたんだぁ!
スチュアート殿下の側近でありながら、殿下の信頼を裏切って、グオール様の命令とはいえ、俺はなんてことをしたんだ!
スチュアート殿下を殺したのは、俺です!」
今はグオールの側近となったダミアンが自白して叫んだ。
「私もだ!グオール様に命じられて、グオール様の邪魔となった先帝陛下に、スチュアート殿下と同じ遅効性の毒を盛りました!グオール様に毒を渡されました!
先帝陛下を殺したのは私です!」
グオール王の側近の一人が、同じように自白した。
「スチュアート殿下の派閥の長の、ランドール公爵一家の暴走馬車での死亡事故、あれは馬に興奮する飼い葉を混ぜたから起こったのです!グオール王様のご命令で、私がやらせました!
ランドール公爵一家の馬車の暴走事故は、事故ではなくグオール王の仕組んだ事です!
私がやらせたのです!奥様と幼いお子様方までも、グオール王は殺せと命じられました!ごめんなさい!ごめんなさい!
私を処刑して下さい!」
またグオール王の側近の一人の自白。
グオール王の側近達は、皆、グオール王にとって邪魔な人物を暗殺したり、公金を横領したりの自白をし始めた。
反対派閥の貴族家の屋敷に押し入り殺し、火を放ち証拠を隠蔽。
経営商会への王権を利用した嫌がらせ。
反対派閥の貴族家の補助金申請の却下。
裁判の判決を不正に覆したり。
自分のやった悪事を告白していく。
グオール王の政権の名のもとに行った不正の数々。
「うがぁ、ヴヴヴ、、、。」
神官長が逃げるように審議の間の片隅に膝をついて苦しんでいた。
しかし、いきなり吊られるように立ち上がった。
「うわわわぁ!私は、前の神官長を、バルコニーから突き落とした!事故ではない!
私が、殺した!
私はグオール王と共謀したのだ!
グオール王と神殿は癒着した!金のためだ!
神殿は孤児院から素質ある孤児を施設に集め教育し、暗殺者に育て上げていた!
シルビア、お前もそうだ!よくも裏切ったな!
ルーファスを殺せと指令を出したはずだ!
お前の弟達は今頃、私の手下に殺されているであろう!裏切れば弟達を殺すと言っておいたな。手筈は整えてある!
ルーファスもだ!お前の母親と妹は、今頃殺されているはずだ!
お前らが私達の命令を裏切ったからだ!お前らのせいだ!」
神官長の言葉にルーファスとシルビアは苦しそうな顔をし、それでも前を向いた。
「馬鹿野郎!そんなの、お前がやった事、お前らの罪だ!ルーファスさんもシルビアさんも、何も悪くないだろ!」
ジンが咄嗟に大きな声で否定した。
神官長は叫び終わると、泡を吹いて倒れた。
自らの罪を自白し終えたグオール王の側近、臣下貴族らは、土下座し、号泣していた。
ガルファ伯爵が近衛兵に彼らを拘束させた。
彼らの自白を聞いた貴族や大臣達は、呆然となった後、怒り始めた。
特に身内の死亡事故や原因不明の病死が、グオール王によるものだと知った者たちの怒りはすさまじかった。
「姉上と子供達一家の死は、殺されていたというのか!許せん!」
「兄は殺されたのか!原因不明の病だとされていたのは、毒だったのか!あんなに苦しんで苦しんで、、、。それが、グオール王がやらせた事だったのか!」
「あの素晴らしい人格者を、酷い事故にあわせたのが、グオール王だったのか!私は恩人の仇に、知らず仕えていたというのか!」
審議の間は怒号と混乱に満ちあふれた。
罪を告白した者たちは、
「牢屋に入れてくれ」
「私を処刑して下さい」
と泣き喚いている。
おもむろに、1人が立ち上がり、叫んだ。
「私は牢に入りたい!」
「そうだ、俺の居場所は地下牢だ!」
「私も牢屋が安寧の場所だ!」
「そうだ!地下牢!」
「地下牢へ行こう!」
目を煌めかせて言う自白者達。
数十名の自白側近、自白臣下貴族らが審議の間を飛び出して行った。
「地下牢へ入へてくれ!」と叫びながら。
困惑しつつ、騎士らが彼らを追いかけて行く。
審議の間に残ったのは、始めにいた人数の3分の1ほどだった。
瑠璃猫の聖なる光を浴びても自白しなかった清廉潔白な人間だけになった。
1人を除いて。
最後の1人、目を飛び出さんばかりに血走らせたグオール王が、フーフーと苦しんでいた。
「くむう!ぐおお!ふがあ!」
何かに抵抗している様だった。
ビクビク痙攣し始め、泡を吹き始めた。
ユラユラ身体を揺らしながら、ヨダレを垂らして喋り出した。
「俺は、王になりたかったのだ!国の頂点に立ちたかった!
贅沢したかった!いい女と遊びたかった!好き放題したかった!
キレイ事を言う兄上が邪魔だった!
マトモにならねば、俺を廃嫡すると言う父上が嫌いだった!
邪魔な人間を殺したぁ!
悪いなんて、思ったことは無い!
民の暮らしなど知らん!民が苦しもうが死のうが、どうでも良い!
俺の邪魔をするヤツを殺して何が悪い!
邪魔するヤツが悪いんだぁ!
お前らだって、俺と同じだろうが!
自分さえ良ければ良いんだ!
ルーファスも旅の途中で殺せと命じてあったものを!何故生きている!
ルーファスの母親と妹を人質にして、死んでこい、戻るなと命じたのに、何故生きているんだ!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね!
俺様の邪魔をするヤツは、全部死ねええええええ!!」
グオール王の自失しながらの反省なしの自白に一堂はシン、と静まり返った。
「、、、グオール王は罪を自白した。父である先王陛下を弑し、兄を殺して王になった簒奪者だ!
このような悪辣非道な者はもはや王ではない!捕縛せよ!」
ルーファスが言うと、近衛兵らが速やかに命に従った。
聖剣の声が響き渡った。
『愚王立ちて国乱れん時、魔物溢れ民苦しまん。
国乱るる時勇者現る。
聖剣に選ばれし者こそ、勇者なり。
勇者に聖女寄り添はむ。
新たな王立ちて国を正しき道に導かん』
聖剣の厳かな声が響いた。
『伝説の通りであろう。ルーファスが伝説の王、ここにいるジンが勇者、この猫が聖女だ』
審議の間は静謐な聖なる空間のような厳かさに満ちた。
「ルーファス殿下、いえ、陛下!ルーファス陛下に忠誠を誓います!」ガルファ伯爵。
ガルファ伯爵が跪いた。
審議室に残った臣下、貴族らは全員、ガルファ伯爵に習い、ルーファスに跪き、忠誠を誓った。
跪きながら、1人の貴族が口を開いた。
「伝承が、我らが教えられていたものと違っております。
聖剣抜かるる時魔物溢れ国乱れん、と伝えられておりました。
新たな王立ちて、のくだりは伝えられておりません」
歴史好きの候爵だ。
『王家が伝説を書き換えたのだ。都合の悪い部分を隠した』聖剣の声。
審議室がまた、ざわめいた。
『神樹の我のおりし幹穴の奥を調べろ。真実の建国神話伝説がある。調べてみるがよい。他にも禁書として神殿に隠されているであろう』聖剣。




