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【一章完結】TS兵士が戦場で生き残るには~平和な世界で生きていたわたしが、どうしてこんな戦場に!?~  作者: 月星 星成
三章 首都決戦偏

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「あの……野暮用って、何ですか?」


 思わず、そんなことを聞いてしまった。

 でも、これは仕方がないだろう。わたしは、異動をするためにここに呼ばれたはずなのに、野望用なんて言われても、心当たりが一つもない。


「ああ、言っていませんでしたね。ダズ少将、先にこちらの用事を終わらせていいですか?」

「よい。後、公式な場ならともかく、私的の場では、爺さんで良いと言っておるだろうが」

「ははは……癖で。では皆さん、こちらに来てください」


 すると、レン伍長が軽く手を上げ、わたしたちを促した。最初にオーランド軍曹が、次にアリサ軍曹がレン伍長の後ろを歩いていく。

 その動きに合わせて、周囲の空気が自然と流れを変える。“野暮用という言葉の軽さとは裏腹に、どこか改まった雰囲気が漂っていた。


(……本当に、何の話なんだろう)


 わたしはジグと顔を見合わせる。

 ジグも分かっていないらしく、肩をすくめた。


「行くぞ、セラ」

「う、うん……」


 わたしは小走りで列に追いつき、レン伍長たちの背中を見つめながら歩き出した。


 そして、しばらく歩き、ちょっとした広場に着いた時だった。

 その広場の中央に、見覚えのある……けれど、どこか違う鉄の塊が、複数置いてあったのだ。


「銃?」

「ええ、正解です」


 すると、レン伍長がその中から一つ取り出し、わたしの方へと差し出してきた。


「セラさんの話を聞いて、伝手を使って、新たな銃を作ろうとしていたんです。もちろん、この少しの時間では、全軍に渡せるほどの銃はありませんが、ある程度の複製品は、作ることが出来ました。そして、それらを一通り試してもらいたいんです」


 レン伍長が渡してきた銃は、スレブルクで使われている拳銃に似た、小さな銃だった。

 今までのバリエーヌは、多少の差こそあれ、前世で言うライフル銃のような物が扱われていた。なのに、このような銃が、ここにあるなんて……。


「バリエーヌ産の拳銃ですけど、これはセラさんにあげますよ」

「え? 良いんですか?」

「良いですよ。グレン小隊長の元にいた時にお世話になっていましたし、なにより……まだ敵兵の死体を漁って、スレブルク産の拳銃を使っているのでしょう?」

「うっ……オーランド軍曹から聞いたんですか?」


 そう、わたしは未だ、敵兵の死体を漁って拳銃の弾を補給することがある。

 ただ、それにはいろいろ理由があって、仕方がないことだったんだ。


 まずは、スレブルク産の拳銃は、スレブルクの弾でしか発砲できなかったこと。これのせいで、銃弾を補給するには、敵兵の死体から奪うしかなかったのだ。

 

 二つ目は、わたしの戦い方では、拳銃がかなり使いやすかったこと。

 もちろん、普段はバリエーヌ産のライフル銃を使っている。けれど、軍剣を使って戦う時だけは、ライフル銃だと邪魔になってしまい、持ち運びしやすい拳銃を多用している。


 実際に、ゾフィアと言う少女と、その兄が率いる隊と戦った時は、片手に軍剣、もう片方の手に拳銃というスタイルで戦っていたから生き残ることが出来たんだ。

 もし、それがライフル銃だったとしたら、その時に死んでしまっていただろう。


「ええ、オーランド軍曹が教えてくれました。ただ、その方法だと手に入る銃弾も限りがあるでしょう。だからこれを使ってください。もちろん、ここで試し撃ちをしていいですから」

「あ、ありがとうございます!」

「……銃を渡されて喜ぶって、十四の女としてどうなんだ?」


 レン伍長から拳銃を貰ったことに喜んでいると、後ろからジグがそんなことを言ってきた。失礼だな、ジグで試し撃ちをしてやろうか。


(ま、そんなことよりも、こっちの方が大切だね)


「的は、あれでいいんですか?」

「ええ、使ってみてください」


 わたしたちの位置から少し離れたところに、 簡易的に組まれた木製の的がいくつも並んでいた。

 距離はそこまで遠くない。けれど、銃を試すには十分な広さがある。


「ふぅ――」


 銃を構える。ライフル銃と拳銃の扱いは、似ているようで全く違う。

 でも、身体がその両方の銃の扱い方を覚えてくれている。だからこそ、わたしは、躊躇わずに引き金を引いた。


 乾いた音が三連続。

 銃口から白い煙がふわりと立ち上り、狙った場所ではないものの、木製の的にしっかりと穴が開いていた。


「どうでしたか?」

「そうですね……。スレブルク産に比べると、命中精度が低い代わりに、連射速度が速い気がします。……まぁ、命中精度が悪いと言っても、そもそも近距離用の武器ですし、そこまで気にする必要はないと思いますよ」


 わたしがそう言うと、レン伍長は満足そうに頷いた。


「やはり、そう感じましたか。技術部の者たちも同じことを言っていました。精度よりも、まずは扱いやすさと連射性を優先したと」

「確かに、扱いやすいです。反動も弱いですし」

「そこは、私の要望ですね。腕を怪我しても、片手で戦えるようにしたかったので」


……この人は、銃の開発に関わっていたほうが国のためになるのではないかと思ってしまう。

 けれど、レン伍長は、わたしの心の声なんて知らないまま、次の試作品へと視線を移した。


「こちらは、バリエーヌ産の散弾銃です。ただ、反動が強いので、セラさんでは少し危険なので、えっと……」

「ジグ、それを使ってみろ」

「は、はい!」


 ジグが、オーランド軍曹に命令され、前へと出る。

 散弾銃を受け取った瞬間、彼の腕がわずかに沈んだ。


「……重っ」

「ほら言っただろう。しっかり構えろ。肩を壊すぞ」


 オーランド軍曹は、元から説明されていたのか、ジグに付き添い、散弾銃を扱うサポートをしていった。

 そのおかげで、しばらくすると、ジグはコツを掴めたのか、自分の力だけで散弾銃を持ち、狙いを定めた。


 そして――


 ドンと低い音が響き、木製の的に無数の穴が一気に開いた。

 細かい木片が後ろへ飛び散り、的の表面がざらりと削り取られたようにえぐれている。


「うわっ……!」


 ジグの身体が一歩、後ろへ押し返された。

 散弾銃の反動に耐えきれず、足が地面を擦る。


「お、スレブルクとあまり差が無いな」

「でも、反動が強すぎる気がしますね。ジグの力が無いからかもしれませんが」

「は? 喧嘩売ってんのか?」


 ジグが振り返り、眉を吊り上げる。

 でも、そんなことよりも、散弾銃の評価をする方が重要だ。

 今、この場で最も散弾銃について詳しいのは、殿として何度か接敵したわたしたちに他ならない。


「やっぱり、盾で防ぐのは難しそうですね」

「そうだな、グレンでも破られたとなると、俺くらいしか盾で防げる奴はいねぇし、防げたとしても、一回くらいだな」

「でも、射程距離と連射性能に難がありそうですね」

「ああ、戦術とかである程度カバーできる範囲だ。意識さえすりゃ何とかなる」


 オーランド軍曹とわたしが散弾銃について話し合い、その対抗策を練っていく。

 怒りを無視されたジグは不満気に顔を歪ませているが、どうせ後から喧嘩することになるんだから、それは放っておいていいだろう。


「ねぇ、狙撃銃は無いの?」


 すると、アリサ軍曹が口を挟んできた。


「……そうですね、バリエーヌの技術力だと、それを作ることは出来ませんでした」

「そうか、盾兵にとって散弾銃が脅威となるように、魔導隊にとっては狙撃銃が脅威なんだけどね。セラちゃんは、何か知ってることが無い?」

「射程距離が長いのと、腕を吹き飛ばすほど威力が高いことしか。……ですけど、相殺ならともかく、逸らすことなら盾で可能だと思います」

「ほう、逸らせるのか?」


 オーランド軍曹がわずかに眉を上げる。

 アリサ軍曹も興味深そうにこちらを見た。


「はい。これは予想ですけど、散弾銃と違って、狙撃銃は弾が一つなので……角度さえ間違えなければ、衝撃を逃がせます。ただ、あの勢いは殺せません」

「なるほどね、それだけでも知ることが出来れば十分だよ。レン! 他の銃は無いのか?」

「一応ありますけど、実戦に間に合うのかわからない物ばかりですよ」

「それでいい、どんどん試してみるよ!」


 そうして、わたしたちはバリエーヌが作った新型の銃を次々と試していき、広場には、乾いた音が何度も響き、白い煙が風に流れ、木製の的には穴が増えていく。

 新しい銃の中には、実戦で使えそうなやつもあれば、剣や槍の方がマシだと思えるものまで、たくさんの銃があり、それらを試している時間はこれ以上に無いほど楽しかった。



 まぁ、十四歳の少女が楽しむには、物騒すぎる内容だとは思うけどね。


一応、設定として。

バリエーヌ 兵士数D 銃A 練度A 指揮官の権限B 補給D

スレブルク 兵士数C 銃S 練度A+ 指揮官の権限D 補給C

オゼアリム 兵士数A 銃C 練度C  指揮官の権限A 補給A



+表記は、例外があり、そこは一つ上の実力があると言うことです。

また、この三国以外にも、他国は存在します。

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