第二十八話 波山
頻出する堕天使による被害。しかし、その堕天使達の種類は、何故か現実の動物を模したものばかり。フューエル達はその謎に迫りつつ、堕天使を排除するのだった。
「干支に関する妖怪〜?」
《あぁ、ここ最近の堕天使の中には鵺のように干支の動物が含まれる妖怪が狙われた事があった。残りは犬、鶏、龍だ。》
「んー…龍はまんま龍がおるけど、うちはあったことあらへんな。ただ…犬鳳凰…んや、こっちの方が分かりやすいか。バザンっちゅー鶏の妖怪がおるで。随分前に死んでもうたけどな。うちが持ってたバザンとは違う個体がおるはずや。妖怪は力の塊みたいなもんやから、狙われるならそいつかもしれへんな。」
《バザン、か…。探してみよう。》
「あぁ、探そうとしても見つからんと思うで。あいつら臆病やねん。その代わり全国にぎょーさんおるようやけど、人前には全然出てこーへんで。」
《了解。》
「後火吐くはずやで。うちが知ってるのはこんなもんやな」
《いや、十分だ。感謝する。》
「ほーい。」
フューエルは通信を切り、自身の近くの山から調べ始める事にした。
《近場の山なら…まぁここだな。少々小さいが。》
フューエルが離別させてあったコアを取り出し、ヴァルキリーに装着する。
[システム認証…完了。ステルスコア、起動します。]
その音声と共に、フューエルの姿が見えなくなり、更にフューエルから発せられる音が抑えられる。
《さて…藪自体は多いがどうなるかな…。》
藪の奥を進んで行くと、足音が聞こえ始める。その瞬間にフューエルは歩みを止め、ステルスコアの出力を上げ完全に姿を消す。
《(持って数分…十分だな。あれが紅煩の言っていたバザンなら…このエリアのはまだ襲われてはいないようだ…。)》
コアに内蔵したバッテリーが持つ間だけ尾行する事に決めたフューエルはバザンの群れの跡をつける。しばらくして、何も無いことを確認したフューエルが引き返そうと飛行ユニットを取り出そうとステルスコアを解除しようとした時、これまで戦ってきたどの堕天使とも違う、異様で邪悪、そして強大な気配が一気に藪を覆う。そのあまりの気配に、フューエルでさえ動けなくなっていた。
「やーっと見つけた。隠れるの上手だねぇ君達。」
バザン達が叫び後を上げ、突如現れた“それ”に火を放つ。しかし、そのシルエットの人物は微動だにせず、鋭く大きい爪で三匹のバザンを掴む。その途端、バザンはぐったりと動かなくなり、黒い液体で出来た球体に包まれた。
「これで良し。あとは…えーと…犬神かー。ちょょっと厄介。…いや、もっと可愛いのが待ってるし…ふふ…」
その言葉を最後にふっと気配が消える。
《……ヴァルキリー…今のは……》
[……不明。しかし、恐らくステルスコアが通じていません。ほんの数秒、視線がこちらを向いたのを確認しました。しかし今はそれよりも…]
《…バザン、だな。》
ステルスコアを解除し戦闘態勢を整えるフューエル。黒い球体にヒビが入り、急速に大きくなっていく。通常の鶏ほどのサイズだったバザンが、ケルベロスのように三つ首になり堕天使化した。
[注意。鵺と違い、あのバザンは既に一体化してしまっています。救助は望めません。]
《抵抗出来るかは個体の強さ次第ってわけね…。》
フューエルが盾と銃を抜き、即座に発砲する。バザンだった堕天使は火を吐きその銃弾を溶かして回避した。
《火力は上がってるようだな、銃は無意味か。》
フューエルは銃を戻し剣を抜く。
《逃げ回られてはこちらが不利…。なら…攻撃こそ最大の防御、だな。》
フューエルが盾をバザンに放り投げる。バザンはその盾の方に視線を向け、隙が生まれる。
《ここ!》
即座に両手剣を構えたフューエルがクロスにバザンを切り裂く。バザンは火を放ちながらしばらく暴れ、倒れ伏しどんどん縮小していく。
《……すまない…。》
少しずつ体が薄くなっていくバザンを見届ける。
《……犬神、か…。神の名を冠する妖怪…。》
フューエルはそう呟いた後、天界に戻って行った。
二十八話です。この鶏肉、とりにくーい!…はい。




