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第二十九話 フューエル・レインフォース

頻出する堕天使による被害。しかし、その堕天使達の種類は、何故か現実の動物を模したものばかり。フューエル達はその謎に迫りつつ、堕天使を排除するのだった。

《…さて、皆揃ってるかな》

天界警備団の訓練場。その更に奥にある大集会場。ある日の昼下がりに、エデンは警備団の団員を全員集めていた。

《今日、皆に集まってもらったのは理由があってね。フューエルちゃん》

エデンが横に並んでいた隊長達の中からフューエルを呼びつけ、同じ台に上がらせる。

《フューエルちゃんは、いつもすごいスピードで飛んでるのにすぐに異常を見つけてる。機械を使っているとはいえ、その洞察力は目を張るものがある。》

エデンが話しながら指を鳴らすと、その背後に巨大なスクリーンが現れる。

《このスクリーンにはフューエルに付けてもらってるゴーグルに繋がってる。今からフューエルちゃんには、関東圏の一定のエリアに隠れてるオーシャンちゃんを見つけてもらうから、目線の動き方とか、色んな事を学んで要救助者の発見とか堕天使の発見とかに役立てて欲しいんだ。じゃあ、フューエルちゃん。よろしくね》

《承知しました。》

フューエルがその言葉を残し台を降り、以前の発射台にヴァルキリーの飛行ユニットをロックする。モニターにはフューエルがかけているゴーグルを通し、発射台のレールとその先の大空が見えている。しばらくチャージした後、ガコンというロックの外れる音と共に信じられない程の初速で飛行を開始する。エデンがいつものように笑顔でそのモニターを見つめる中、初めて飛んでいるフューエルの視界を見た団員達はざわめき始める。

《あの速度…ほとんど何も確認できないじゃないか…》

《いやそもそも俺たちの耐久力でもあの速度で飛んでたら空気抵抗で死ぬぞ…》

《何か秘密があるんだろ》

《景色がどんどん変わってく…視線も…見えてるのか…?》

様々な声が上がる中、ある地点を過ぎた時にぐるんとUターンし速度を落としながらある丘に向かい飛び、ゆっくりとヘリを降ろすような手順で降り立つ。

集会場にフューエルと割り込んでくるオーシャンの声が響く。

《これどこまでやればいいですk》

《はぁーーあついお腹空いたーーー》

《……ここまでで大丈夫ですか》

《さすが、あっという間に見つけたね。一旦オーシャンちゃんと一緒に帰ってきてもらえるかな》

《了解。ほらだだこねないでください行きますよ》

二人の会話と通信がだんだん遠のき、映像が途切れる。


数分後、オーシャンを連れたフューエルが戻り、再び隊列に並ぶ。

《…さ、皆。今の一通りの映像を見て何か気付いた事がある子はいるかな。》

全員の騒がしさがしんと静まり返る。フューエルは何も言わずに目を閉じている。

《…まぁ、一回見ただけじゃそうなるよね。》

団員の中から声が上がる。

《そもそも…俺らあんな速度で飛べねぇし…景色もほぼ見えなかったし…》

《私は言い訳を求めたんじゃないよ。今は気付いたことを聞いてるんだ。趣旨は間違えちゃいけないね。》

エデンがオーシャンに視線を向ける。

《…ん?あ、私?いいの?》

エデンは何も言わずに台を降り、入れ替わるようにオーシャンが登る。

《私視点でだけど、多分慣れもあるよ。えるえ…フューエルは毎回堕天使が出たって情報を得て向かう時、必ず目撃情報とその位置を確認してから向かうよね。例えば堕天使なら、その色や大きさ、被害が起きた場所の周囲。火事とかが起きてたらその近くに絞って色を見分ける。それを瞬時に繰り返してるんだと思うよ》

《…だ、そうだけど本人であるフューエルちゃんはどうしてる?》

《…えぇ。今のでおおよそ合っています。ただ、私の場合脳とヴァルキリーを連動させてるからこそあの速度での情報処理に耐えられています。》

団員達がザワザワと、半ば諦めているかのような声も聞こえ始める。

《……しかし!》

フューエルが目開くと同時に声を張る。その瞬間に静けさが戻る。

《…今回、団長が言いたいのは私のようになれではありません。現状、堕天使による災害現場及び堕天使の元へ飛び、その撃破までを最速で出来ているのは私だけ。もちろん、全国全てではありません。ただ、私が戦闘中でも後から援護に来てくれる天使はいつも隊長クラスか、隊長候補並の一部特段優秀な天使のみ。私が堕天使を撃破する事にどうこう言う気はありません。私はなるべく少数精鋭の方が戦いやすい。しかし、その後処理や災害により発生する要救助者。その人達の処理は私は向いておらず、常にハイリスクを背負うこととなります。皆さんには、適材適所で、ただ共通して到着までの速度を上げて欲しい。それが我々のためにも、一人一人の命を守る事につながります。…私からは以上です。》

フューエルが一通り言い終えると台を降り、合わせるようにエデンが登壇する。

《…今、フューエルちゃんから説明があった通りだよ。大体は分かってもらえたよね。二度手間になる説明は嫌いなので私からは省きます。ここから、大事な連絡。一つ目は、これまで隊長にしか認めていなかった団長室への入室申請権を全団員に認めます。ただし、必ず認めるものでは無い事はわかっておいてね。申請を承認する条件は大まかに二つ。一つ、あらゆる項目での改善の提案、問題点の周知であること。二つ、誰かに稽古を付けて欲しい等の隊長に用事がある場合。私にでもいいけどね。》

団員達が様々な歓喜の声や困惑の声を上げる中、エデンが言葉を続ける。

《…これの目的と実行理由は、団員の新規応募が落ち着いて来て、かつ私達だけじゃ改善案も偏ってしまうと考えたから。まぁ、私が今日本当に伝えたい事はこれじゃないんだけどね。》

ふんわりとした雰囲気で話していたエデンが一度咳払いをする。再び目を開いた時には、その目つきが鋭くなっていた。その圧にざわめいていた団員達が一斉に静かになる。

《結論から言います。本団体の中の子供兵の子達。そして、一から十までのいずれかの部隊に該当しない子達。まぁ団員の子達全員だね。その子達の任務を停止し、地上へ降りる事を無期限禁止します。》

その発言に対し、一気に不満と疑問の声が広がる。

《そりゃ納得いかないよね。もちろん理由は説明するよ。…先日、バザンという三つ首の鶏の堕天使が現れた。それはフューエルちゃんによって撃破された。しかし、バザンの死体の後に残ったのは、三匹の鶏だったそうだ。》

エデンから離れた場所である団員が呟く。

《…生命体を堕天使化させられるやつでも出て来たのか…?》

《今推測を立てた君、察しがいいね。》

呟いた団員の体がビクッと震える。

《私は地獄耳だからね。話を戻します。現在地上には、第三者を堕天使に変える力を持った何かが彷徨いています。現在私が確認している内では、並の堕天使なら多対一でも余裕で倒せる実力者まで堕天使化していたそうだ。現状、私達天使に堕天使化の被害報告は無いけど、これからも私達は無事だという保証もない。ましてや実力者でさえ堕天使化した現実がある。そんな危険な存在がいる世界に団員の子達…ましてや子供を送り出すなんて、私には出来ないね。》

怯え始める子供と、不満気な目付きをしている子供の天使、様々な天使が居るのを改めてエデンが見回す。

《…不満を持つ子が多いみたいだね。当たり前だろうし予想はしてたけれど。…なら、この件を決定する上での決め手になった出来事も話そうか。…いいかな、フューエルちゃん》

《構いません。事実ですから。》

《許可ももらえたことだ。皆よく聞いてね。一度しか言わないよ。…フューエルちゃんはさっき話したバザンを堕天使化させた者と対峙した。…しかし、フューエルちゃんがその存在と戦う事は叶わなかった。…何故だと思う?》

《すぐに…消えたから?》

前列付近にいた団員が答える。

《間違ってはないけど、本当の理由は違うね。…その存在が放つ、強烈な恐怖感による圧だよ。簡単に言えば、フューエルちゃんでさえ恐怖で動けなくなったんだ。……うん。意外だよね。何者にも恐れず立ち向かい、かつて七つの大罪までも倒したフューエルちゃんが、恐怖で動けない。そんな相手が今地上のどこかにいる。…なので、団員の子達が地上へ降りる許可を私が出す時は、原因が解決したか、フューエルちゃんを超える実力を得た時のみ。私は誰も死なせたくないからね。私からは以上です。質問等は入り口にある用紙に書いて出してね。解散!》

そう言い、エデンは台を降り本部へと戻って行った。次第に少しずつ、バラバラに各団員達も解散していった。


二十九話です。なんだかエデンらしくないようにも思えますね。

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