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第二十三話 神器

頻出する堕天使による被害。しかし、その堕天使達の種類は、何故か現実の動物を模したものばかり。フューエル達はその謎に迫りつつ、堕天使を排除するのだった。

《…うん、分かった。ストライク君が兎、フューエルちゃんは鼠の堕天使を倒したんだね。一気に二体も。良い功績だね。》

エデンはいつものように話し始める。

《…なぁ、エデン。フューエルの分の報告書は後にしてやってくんねぇか》

《…事情はなんとなく察してるよ。けど、ルールはルール。例外は認められないな。》

《けど、今のこいつには》

《何も今書け、出せなんて私は言ってないよ。君たちは真面目だからその日中にいつも出してくれるけど、本来の報告書の期日は任務終了から一週間までだよ。》

《…ん?そんなルールあった》

《あるよ。》

普段は常に柔らかいエデンの目線が、割れて尖ったガラスにように鋭く光っている。

《ッ………。》

《ストライク君。君のは受け取ったから、下がっていいよ。…いや、と言うより今は私とフューエルちゃんの二人にしてくれるかな。》

《…了解。》

ストライクは重い足取りで部屋を後にする。


普段は自身の団長室で話す時に必要最低限しか動かないエデンが椅子を引き、フューエルの元に歩いてくる。虚ろな目をしたままのフューエルの手を取り、その小柄な体に引き寄せ抱き留める。

《…フューエルちゃん、君はいつも率先して堕天使達を倒して、私達も人間も大いに助けられてきてる。大きい馬の堕天使から数多くの人を救ったのもフューエルちゃん。七つの大罪を皆と協力して作戦を立てて、撃破したのもフューエルちゃん。…けどね、私が思うに、フューエルちゃんは失敗をしてこなかったと思うんだ。今回の件、確かに重い事態だ。ユグドラシルに来た魂の中にいたよ。二名分。私は何も責めてるんじゃないんだよ。》

すぐにでも倒れそうなフューエルの体を支えるためにエデンはフューエルを抱えたまま再び椅子に座る。

《私はね、心配だったんだ。いつも失敗せず、完璧に任務を遂行してるフューエルちゃんは戦ってるうちに、命の価値というものが分からなくなってるんじゃないかなって。確かに、どうしようもなく喪失する命はある。けど、今回のは止められたはずだった。それを嘆いての行動だった。フューエルちゃん、私はね、《堕天使のせいだから》って割り切りきって無かったのが嬉しかったよ。》

フューエルは何も答えないが、エデンの背中側の服を掴み、今まで誰にも見せなかった大粒の涙を流していた。エデンはこれ以上は何も言わずに、ただフューエルの背中をさすっていた。


数十分も経過した後、落ち着きを取り戻し始めたフューエルに再びエデンが話し始める。

《…私は、それ以上に気になることがあるんだ。》

まだまともに喋れていないフューエルの背中を、赤子をあやすように叩きながら話を続ける。

《今回、フューエルちゃんはコアを入れ替えてないのにも関わらず、フューエルちゃんに呼応するように出力が上昇してライトニングコアと同じかそれ以上の力を出していた。それと、以前七つの大罪と戦った時。君はまるで別人になったようになって、無いはずの翼が生えた。…そこで、私に仮説があるんだ。》

《……仮説…?》

ガラガラな声でフューエルが返す。

《うん。ラボの子達が知っているだろうけど、君のヴァルキリーは武器パーツに風化した武器を使ってるんだ。風化したと言っても、人間で言う錆びた鉄くらいのものだけれど。それを素体にしてるんだけどね。その武器の入手元、どこだと思う?》

《…どこなんですか…》

《…現、アルカディア。旧名は…》

《バルハラ…?》

《そう。神殿だよ。その台座に、一本の槍があった。私がそれを見つけ、触れてみたんだ。特に何も起きなかったけどね。けど、よく見たらそれに亀裂じゃない跡があった。するとびっくり。いくつかのパーツにバラせたんだ。》

《…まさか…》

《禁書。その昔、ミネルバという女神が作った武器があった。そのあまりの便利さを大層気に入った神がいた。その出来に作者のミネルバ自身も満足し、その武器に自分の名前を付けた。そして、その武器を気に入った神と、七つの大罪と戦った時にフューエルちゃんは、《アテナ》と名乗った。》

《私のヴァルキリーは…元は神の武器、と…?》

《そういうこと。ただ、ヴァルキリーの名の由来がまだ分からないんだ。けど、点と点はこれで繋がった。ずっと考えてたけど、今回の件で確信出来たよ。多分、ヴァルキリーに入れてあるバッテリーと浄化システムを少しずつ吸収して、錆びた状態から新品な状態に戻ってるんじゃないかなと思ってるよ。だから、回数を重ねるほどフューエルちゃんの戦闘力が上がってる理由にも説明が付く。》

《………》

《私が懸念してるのは、ゴッドコアを使った時にフューエルちゃんがフューエルちゃんでなくなってたこと。使いすぎは厳禁だと思う。けど、かつての神々が残した武器が今になってエネルギーを得て力を付けている事。それも引っかかる。今までもずっと戦ってきたのに、今になって急速に上がってる。…それに、最近出ている上級の堕天使達。こいつらも強くなってきてるし、行方不明のカオスちゃんも気になるところ。…おっと、私の悪い癖が出てしまった。ごめんね》

エデンからフューエルが離れる。

《…私のやる事は変わりません。堕天使が出たら、迅速に排除する。それだけです。力を貸してもらえるのはありがたいですけど、私は私です。》

《…そう信じてるよ。》

エデンはステンドグラスのような目でフューエルをまっすぐ見つめる。フューエルもそれに応えるように頷き、部屋を後にした。

二十三話です。語られる神の名は、吉と出るか凶と出るか。

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