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第二十二話 相棒

頻出する堕天使による被害。しかし、その堕天使達の種類は、何故か現実の動物を模したものばかり。フューエル達はその謎に迫りつつ、堕天使を排除するのだった。

ストライクとヴァルキリーと離れ、二丁のハンドガンを手に歩き回って他の痕跡が無いかを探していた。住宅街から少し離れ、大きめの家が固まって建っている地域に入る。その中のマンホールの上を通った瞬間、フューエルはぞわっとした感覚に襲われる。すぐに銃を構え周囲を警戒するも何もいない。

《(この気配…堕天使が近いが…気配の中にカオスも混ざってやがる…!)》

フューエルがダガーの持ち手を反転させマンホールの蓋を開ける。その暗闇の奥から、更に強い気配がフューエルを襲った。

《この中じゃどの道ヴァルキリーは使えないな…と、その前に通信…ヴァルキリーの中か…》

フューエルは片手に銃、片手にダガーを構え下水道の中へ飛び込んだ。着地した後、周囲を警戒する。すると、何匹かの鼠が鉄柵で塞がれた扉の奥へ走って行った。フューエルは鉄柵に顔を寄せ奥を見る。その奥には、鼠の中でも一回り大きい鼠が他の鼠に支持を出しているような素振りを見せていた。

《あいつか!》

フューエルが銃を構え、即座に発砲する。司令塔の鼠は銃を構えた音に反応し、目の前にいた鼠を盾にし逃亡した。

《察しの良い奴…!》

ダガーのスイッチを押し、エネルギーブレードに切り替え鉄柵の扉の鍵を切って開き鼠を追いかけていく。少し進むと、下水が流れている隙間の空間に出た。周囲には腹部分を食いちぎられた鼠の死体が転がっている。

《ここを根城にしてたわけか…》

水の流れる水路には何かに乗れば鼠程度の大きさなら脱出できるであろう隙間がある。

《クソッ…この逃げ足はカオスの入れ知恵か…?》

フューエルは一度道を引き返し地上へ戻り、先程の出口であろう座標を目指して走り出す。しばらく進み、角を曲がったあたりで上空にスキャン中のヴァルキリーを発見した。

《ヴァルキリー!こっちだ!》

声に反応したヴァルキリーがスキャンを停止しフューエルの背中に戻り、即座に飛行を開始する。

[痕跡はどちらでしょう?]

《処理施設がこの先にある!恐らくそこにいるはずだ!》

[了解]

ヴァルキリーが進路を修正して処理施設前に着陸する。フューエルがヴァルキリーとワイヤーで繋がっているフックを壁に向かって放ち着弾させる。その瞬間に建物全体を黄緑色の波動が数回覆っていく。

[数名の職員とそれに紛れる堕天使の生体反応を検知しました。ここで間違いないようです。]

《了解》

フューエルが入り口の扉を開け、施設内に入って行く。

「だ、誰ですかあなた!ここは関係者以外」

《天界警備団のものだ!詳しい説明は後でするがここに堕天使が逃亡している!今すぐ避難してくれ!》

「そ、そんな事言われても…それに天界警備団って…それにその背負ってる機械はなんなんですか!銃とか剣が付いてるじゃないですか!」

《説明は後ですると言っただろう!!いいから早…く…》

タンクを破る轟音と共に、巨大な黒い鼠が飛び出してきた。職員の一人を抱え飛び退け、鼠の堕天使の初撃を交わすことに成功したが、フューエルはかわしきれずに足にダメージを負ってしまった。

《グッ……》

「あ、あの…逃げましょう…早く…!」

《先に…行って……》

「でも…!その怪我で…」

フューエルがよろめきながらも立ち上がり、剣を抜く。

《私は飛べます…地上戦じゃなければこんなのへでもない!!》

フューエルの叫びに呼応するようにヴァルキリーのブースターが起動する。

《(飛行戦には少々狭いが…下水道よりはましだ…!)》

フューエルが怯え腰を抜かした職員の方を振り返る。

《私に任せて早く!!》

鼠の堕天使は今にも襲いかかる勢いでタンクを食い破っている。職員はもたつかない足取りで出口へと逃げて行った。フューエルが立ち向かおうと向き直した時、壁に大きな血飛沫がかかっているのが視界に映る。一瞬目を見開いたフューエルが強く剣を握りしめ、そのエネルギーの出力が上昇する。黄緑色だった刀身はキュイイインという音と共に青白くなり、やがて波打つ程のエネルギーが溢れ始める。

《……現状の堕天使の被害では、数多くの死傷者が出ている…。しかし…今回の死は…止められたはずだ…!!!それを……私は……》

ブースターのエネルギーの音と、フューエルの叫び声に全ての音が掻き消されるように、凄まじい連撃で鼠の堕天使がなすすべもなく切り刻まれていく。

戦闘が終わり、息切れしたフューエルを背に堕天使がどしんと大きな音と共に倒れ、その躯体がどろどろに崩れていく。その液体が地面に染み込み消え切ったところには、ズタボロに刻まれた鼠の死体が転がった。

《はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………》

《……お前らしくもねぇな。》

出入り口には、鋭い目付きで扉に片手を付き一部始終を見ていたストライクがいた。

《エネルギーも使い切っちまってんじゃねぇか。どうしたよ》

フューエルは何も答えない。

《…あぁ、そういうことね。》

ストライクが壁を見た時、全てを察したようにフューエルに寄る。光の消えた剣を握ったまま項垂れるフューエル。ストライクが近付いた事に合わせ虚ろな顔を上げる。ストライクはその顔の両頬を掴み、普段とは考えられない程の剣幕で、しかし冷静にフューエルに話し始める。

《確かにお前は複数名を救えなかった。己の力を過信してたからだ。その自信がたった一度の攻撃で崩れ去り、それがお前を激昂させた。普段のお前なら絶対にしないエネルギー切れを起こす程に。今回のお前の失態は死なせた事と、対象が遅かったことだ。》

《…………》

《…けどな。今までの堕天使による被害での死者は数えきれない程いた。だからと言って悔いるなという気はさらさらない。しかしお前は一つ見落としてるぞ。》

力なく目線を逸らすフューエルの頬を掴む手をストライクの方に向かせ直す。

《お前は一人救っただろ、お前が来なければここは全滅してたんだぞ》

フューエルの瞳が見開くように小さくなり、揺れ始める。次第にその目に涙が浮かび始める。ストライクは手を離し、いつものようにポケットに手を突っ込みフューエルに背を向ける。

《これも機会だ。よく考えろ。》

そう言い残し、ストライクは出て行った。

二十二話です。「戦う」ってなんでしょうね。

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