偽りの好敵手?6
「・・結婚って、私と、海里君が、ですか?」
翠花は目をぱちぱちとさせた。
海里は苦笑いして顔を離す。
「あーあ。ふっつうの反応過ぎて面白くない。僕ってそんなに魅力ない?」
「今、そういう状況ですか?」
翠花は理解しがたいという顔で海里を見る。
もう焦点が合わない。
(眼鏡がほしい・・っ!)
海里はため息をつき、おもむろに話し始めた。
「僕の父親はさ。最初に養子の話がきたとき、藍玉さんに婿入りするんだと思って即決したらしい。一人娘がいる家なんだから、普通はそう思うよね?でも、実際は違って、封家の息子として違う女性を迎えることになった。」
それでも、海里の父親は、約束を守り、領主になるために学び、後を継いだ。
「でも、いびつな養子縁組みだから、封家の血を引かない僕らは、どこか認めてもらえないもどかしさを感じてきた。現に奥様のほうを頼っていく人は今も多い。しかも、君が現れた。」
町で密やかに、翠花が婿をとり、領主になるべきだという派閥ができつつあった。
「血筋について文句があるなら、僕が翠花ちゃんと結婚してしまえばいい。そうすれば全て丸く収まる。こう見えて、僕、自信はあったんだよ?普通に出会って、翠花ちゃんが僕を好きになれば、誰も傷つかない。翠花ちゃんにも悪い話じゃないと思ってた。・・なのに、あんな邪魔が入るなんて。」
海里は翠花を見つめる。
「彼らが来なかったら、もっとうまくいってたはずなんだ。翠花ちゃんだって、僕のこと嫌いじゃなかったでしょ?」
(確かにそうなんだけど・・。)
だが、おそらく碧龍たちが来なくても、海里のことをそういう対象として見られたかと言われると、いまいちピンとこない。
たぶん、友人としか見られなかっただろう。
翠花は、正直なところ、それどころではなかったのだ。
「ああ、もう。バカらしくなってきた。・・ねえ、翠花ちゃん。もし、無理矢理にでも僕のものにしてしまえば、断ることなんてできないよね?」
反応が鈍い翠花にしびれを切らして、海里が物騒なことを言い始めた。
状況は明らかに悪い。
海里と結婚する気にはなれない。
しかし、翠花はどうにも海里を憎んだり、怖がったりすることができなかった。
(だって・・。)
「海里君・・、」
翠花が海里に話しかけたその時だ。
ドン、という大きな音と共に数人の怒声と争う声がして、次の瞬間、ドアが蹴破られた。
「君がそんなに早死にしたいやつだとは知らなかった。」
立ち上がった海里と対峙しているのは・・
「碧龍様!!」
声で瞬時に判断して思わず声をかけた翠花は、見えないはずなのに、碧龍の怒りを感じとり鳥肌が立った。
表情は分からない。
だが、部屋の温度が下がり、空気がはりつめているのを肌で感じる。
(・・まずい。この状況って・・!!)
海里は碧龍の正体を知らない。
助けにきてもらったはずなのに、翠花は違う焦りを感じていた。
(海里君が、危ないっっ!!)
碧龍はそのまま、海里に斬りかかった。




