運命の目的3
「皇帝自ら、罪人を逃がすために奔走していたとはね。」
少しの沈黙のあと、碧龍はフッと笑った。
「ここでの判断は、僕になりそうだ。なんせ、青風国の皇太子だからね。・・この町、やばいね。国同士の会談がされてることになる。」
「皇太子!?」
「さて、と。」
驚く鷹凰を置いて、碧龍は続けた。
「助けても、鳳白国から攻撃を受けるリスクがないなら、考えてもいい。鳳白国の『狼』に興味もあるし。」
「いや、そんな簡単な!しかも、信用早くないですか?」
青河はあわてて止める。
「うん。多分大丈夫だよ。ね?翠花。」
碧龍は、翠花を見た。
翠花は慎重に答える。
「この方が、鳳白国の現皇帝なのは、間違いないと思います。」
「なんでです?」
翠花は、先ほど自分に届いた数字の紙と、本を取り出す。
「鳳白国では皇帝になると、国で採れる希少な植物で作られたインクを使うようになります。そのインクは、光に透かすと、赤く見えるそうです。少なくとも、私に届いた紙と、この本の最後のページの文字に使われているのはそのインクです。」
そう言って、青河に二つを見せると、青河は恐る恐る確かめ、それでも納得はいかない顔だったが引き下がった。
「よく知っているね。」
鷹凰は、微笑んだ。
「鳳白国の歴史小説にはよく出てきますから。」
翠花は緊張しながら言う。
「本の行商人としてこの町に来て、過ごすことがよくあった。皇帝になってからは久しぶりだけど。皆、よく協力してくれる。」
「本と暗号を渡したのは、わざとだったんですね?祖母と繋ぐために。」
「うん。そうだよ。彼女だけだと断られるからね。先に君に話を通したかった。・・実は、君は叔父と藍玉さんの娘なんじゃないかと思っていたから。」
それは、違った。
でも、『彼』は、翠花に会いたがった。
「さて。あなた次第では、叔父君をかくまってもいい。換わりに何をしてくれるか、次第ですが。」
碧龍は、仕事の顔で話をする。
鷹凰は、それに返した。
「これは、俺の個人的な事情だ。国を懸けることはできない。でも、あなたが皇太子から、皇帝になったとき、個人的に力になると誓う。」
「僕が、どんな皇帝になっても?」
鷹凰は笑った。
「ああ。君が、どんな皇帝になっても。」
「・・いいだろう。君が私情で罪人を助けるという秘密を握れるだけでも利益があるからね。」
碧龍は、意味ありげに笑う。
これは、種だ。
今すぐではなくとも、いつか芽吹く約束。
(それに・・。)
見ているだけで分かってしまう。
翠花は、出来れば『彼』を助けたいと思っている。
(翠花に好印象を与えられるなら、悪くないし。)
あの暗号に書かれていたことを、翠花は全部は言わなかったと思う。
おそらく、碧龍の判断に迷いがないように、隠したことがある。
(後で聞けばいい。翠花とつながる理由がまたできるしね。)
全ての判断は、翠花につながるか否か。
そんな自分を、まださらす気はない。
こうして、裏の取り引きは成立し、皇帝の弟殿下は、青風国で新たな名前を与えられることになった。




