悪魔の住処と言っても過言ではない!
ずいぶん放置していました……申し訳ありません!
大変お待たせいたしました!
お見捨てなくブックマークしてくれている皆様。ありがとうございます!
日本ではなく海外の歌ですが、悲しそうな瞳で連れて行かれる子牛のお歌があり、私が小学生の時に音楽の時間に習いました。
何だか頭に残るフレーズなので、友達と共にふざけて歌うなどもあったものです。
替え歌なんかも作りました。
傑作ができました。
その報いなのでしょうか?
恨めしい子牛の呪いなのでしょうか?
どうも。現在同じような状況で馬車に揺られている斎藤まりあです。
今考えれば子牛には本当に申し訳なかったと思います。
相手の立場になって考えなさいと教育されてきたというのに、私は本当の意味で子牛について感情移入ができておりませんでした。
ですが、今なら子牛の気持ちがよく理解できます。
同じ境遇を持った同士……いや、もはや兄弟!
ふざけて遊んだことを深く反省いたします。
なので、この呪い、どうにかなりませんかね?
馬車には、私・ロベルトさん・団長様・ライトさんの四人が乗っております。
ライトさんの有無を言わさない態度及び権力の行使によって何処かへと連行されているのです。
馬車の窓には幕がされており、外をうかがうことは禁止されました。
何処に行くのかは秘密なんだそうですよ。
おかげさまで現在何処へどう行っているのかさっぱりです。
え? これって誘拐?
よくドラマなどで見た、監禁場所を被害者に特定されないための処置ですか?
ですが別に目隠しも耳栓もされてはいないことから、処置としてはゆるいと思われます。
よって監禁などではないと信じたいです。
ロベルトさんも複雑そうな顔をしては居られますが、特に止めようとはしていないようですし……大丈夫ですよね? そうですよね?
私はこれからどうなるのでしょう……?
悲しそうな瞳でロベルトさんを見ました。
ですが、私以上に悲しそうな瞳で見返されました。
……何だか負けた気分になりました。女子的な意味で。
「もうすぐ到着する。降りたら何も言わず僕についてくるように」
私を連行以降、黙ったままであったライトさんがようやく発言しました。
ですが雰囲気はシリアスのままです。
まとうオーラが怖いです。
私、シリアス展開って苦手なんですよね……
皆さん、そんなに深く考えず面白おかしく生きましょう。
ね、そうしましょう?
深く考えないでも、人生何とかなりますよ~。
……あれ? おかしいな?
これだけを言うとダメ人間みたいに感じます。
いや、気のせいですね。
私は至極まっとうな人間ですから。
この様な空気はあまり経験がないため、どのような態度をとればいいのかよくわかりません。
今までの私がどれ程お気楽な人生だったかがよくわかりました。
ですがやはり、日々みんなで笑って過ごすのが私の理想です。
この気持ちが変わることはきっとないでしょう。
なんてかっこつけて考えているうちに、ライトさんの目的地に着いたようです。
御者が速度を落とし始める気配がします。
そこでやっとライトさんが窓の幕を外して外を見せてくださいました。
窓からはお屋敷が見えました。
此処からでもわかる大きさです。
ロベルト賃貸よりも大きいと思います。
ですが……何故でしょう?
重苦しい空気と言っていいのか、雰囲気と言うべきか……
何だか近寄りがたい印象を受けるお屋敷でした。
夜なので辺りには等間隔で明かりが灯り、お屋敷の外観がうっすらと見えます。
ここから敷地入り口の鉄製の大きな門が見えております。
さらに奥にある屋敷の大きな扉には、よくある獅子の顔がでかでかとついておりこちらを睨んでいるようにも見えます。
お屋敷の壁にはツタが生えている部分もあり、歴史を感じさせる風情です。
とにかく、それら全てが合わさることで、屋敷に一段と重厚さを醸し出させています。
分かりやすくご説明すると、まぁ、あれですよ……ほら。
テーマパークであるやつです。
夏場は大人気のデートスポットです。
わかりますよね。
そうです。あれです、あれ。
《お化け屋敷》
わぁ………………
言葉がでないとはこのことですね……
これを見て私は何と答えればいいのでしょう?
悪がき風に「おまえんち、お化け屋敷~」と揶揄すればいいのですか?
見当違いな事に頭を悩ませている私を余所に、馬車は門をこえ屋敷の入り口にて止まりました。
皆さんが降りるので、私もしぶしぶ馬車から降ります。
降りてお屋敷を見上げれば重厚感たっぷりでお出迎えです。
近くの木から鳥が、「ギャァーッギャァーッ…」と恐ろしげな鳴き声を発しながらバタバタと飛び去る影が見えました。
今にも女性の甲高い悲鳴が聞こえてきそうです。その場合、悲鳴の発生源は私だと思われます。
こうして近くで見ると、獅子の顔がやたらと大きい以外は別段普通の扉です。
ですが、私の知っている獅子顔は、取っ手部分の輪っかを咥えているのですが、こちらの獅子は顔が特大の為か、首の部分に輪っかが付いていました。
輪っかが丸いせいか、鈴に見えます。
鈴の首輪を付けたネコ科動物……
僕、ドラ…………いえ、これ以上考えるのはよしましょう。
自分で勝手に考えて笑ってしまうのは、私の良くない癖です。
しかも我慢すればするほど私の腹筋はどんどん鍛えられていきます。
最終的には腹筋が見事に八つに割れてしまうことでしょう。乙女として如何なものかと思いますから自重したいです。
私の葛藤を知らずに、ライトさんは屋敷の扉に近づき、何やら唱えてます。
どうやらそれで中と連絡を取っているようです。インターフォンみたいなものですかね? 便利ですね!
ライトさんが唱えてしばらくすると、大きな獅子の扉は重厚な音を上げながら開きました。
第一印象がお化け屋敷と思っただけに、まるでラスボスダンジョンの入り口のように感じます。
おどろおどろしい音と見た目から私はここについてからビビりまくりです。
扉が完全に開ききった後、薄暗い室内からゆっくりと誰かが出てきました。
「お客様をお連れとは珍しいですな、坊ちゃん……」
おっひょぉぉぉ……おお?
思わず叫びそうになったのを寸前で思いとどまれました。よかった!
乙女の矜持にかかわるところでした。
ほっとした後、改めて出てきた人を確認すると、それは男性です。
そして……ただ、少々、その、何と申しましょう?
多少、背が……えぇ、ほんの少ーし背がお小さいように感じられる方でした。
そしてぽっちゃりであらせられます。
うん、駄目です。
全然フォローができませんでした。
タキシードを着ているのですが……来ているというより、着られています。
なんだか子供のピアノの発表会みたいです。
唯一救いなのは、チャーミングな顔をしているところですかね?
やぁだ、何これ~! キモかわ~~!
と、一昔前の女子高生には人気だと思います。えぇ、一昔前の、ですがね。
「爺、客を連れてきたので客間の準備をしておいてくれ。僕の書斎に行った後そちらで話をするから」
「ほほほ、畏まりました。お嬢様も一緒にお帰りとは、これは張り切らなくてはなりませんね。では、わたくしは準備をしてまいりますので御前を失礼いたします。お客様がた、どうぞごゆるりとお過ごしください……それでは」
チャーミングな顔のくせして渋い声のおじ様は去っていきました。
なんてギャップなんですか。嬉しくありませんよ。
「……付いてきなさい」
短く言って歩き出したライトさんの後を追うように私たちはついていきました。
私以外が騎士様というせいか、皆さん歩幅が大きく早歩きです。
一生懸命足を動かすのですが、どう見ても小走りです。
幸いスカートが長めの為、皆さんには足を高速に動かしているのが見えていないのが救いです。
周りと同じように歩いているように見えることでしょう。えぇそう信じています!
若干息が上がって苦しいですが、まだ大丈夫!
一人はぁはぁ言ってて何だか変態みたいなのはいたしかたない!
「……大丈夫か、マリア?」
「ロ、ロベルトさん……」
気遣いの紳士ロベルトさんが話しかけてくれていますが、余計にしんどいのでやめてください。
今、走らずに足を速く動かすことに全神経をかけているんです。
「だ、大丈夫ですよ…はぁ…心配ありません……はぁ」
頑張れ私! 負けるな私!
精一杯笑顔でロベルトさんに答えている私は良い子!
「ねぇ、一人はぁはぁ言って何なの? 興奮しているの? 気持ち悪いからやめてくれる?」
心の中で自分に賞賛とエールを送りながら頑張っている私にライトさんから致命傷の攻撃です。
……殺!! ゆるすまじライトさん!!!
笑顔の仮面をつけてはいるものの、私の中でライトさんへの殺意が消えません!
くっちょー! 月のない夜道には気をつけておけよ!!
悔しさが消えることはありませんが、ロベルトさんの手前、我慢我慢……
「す、すみません。運動不足のせいか、少々息があがってしまいました」
「ふーん…………太るよ?」
「…………」
っふ……もはや何も言いません。
この人だけは許しません……いつか絶対復讐して見せます……神に誓って!!
一瞬顔に出た般若の面を笑顔に隠して、ライトさんについていくとある部屋の前で立ち止まりました。
「ここが僕の執務室。ではどうぞ」
そう言った後、ライトさんは扉の奥へと入っていきます。
『お、おおぉぉぉ……間違いない……ここに、ここに黄がおる』
「(えぇ!? じゃあ、強制的に連れてこられたのって黄さんと会わせる為だったのですか?)」
『それはわからんが、この中に黄がおる。我は奴と会わねばならん。まりあよ、頼む。我を黄に会わせてくれ』
「(まぁ、入る以外の選択肢もありませんしね。この部屋に黄さんがいることが確かなら、ライトさんが見せてくれなくても交渉してみせます)」
『頼む……』
神妙な青さんをつれて、私は悪の巣窟へと入っていきました。
ある世界の家族の朝……
「ねぇ……俺、昨日姉ちゃんの夢みたよ……」
「あら……奇遇ね。お母さんも見たわ」
「……お父さんも見たぞ」
「何だよ、平気そうにしてたけど、やっぱ父ちゃんも母ちゃんも、姉ちゃんのこと気にしてたんだ。そりゃそうだよな……姉ちゃんが入社式に行く途中で行方不明になったんだから」
「……そうね。昨日のことのようだわ」
「……ああ」
「俺のこと思って、そんなに騒がなかったんだよな? ありがと」
「いいのよ、あの子も心配だけど。あなたも同じぐらい心配なのだから。それにあの子のことだから、どんなことになろうとも意地汚く生きるし、その状況を楽しいものに変えていってると思うの」
「あぁ、あの子はそういう子だ」
「へへ…。なぁ、どんな夢だった? 俺の夢の姉ちゃんはさ……ビー玉で遊んでた。いつまでもガキな姉ちゃんらしいだろ?」
「あら、お母さんの夢では、お弁当にケチをつけてきたわよ」
「……父さんの夢は……男とラブロマンスしてた……ぐす」
「だははは! ない! それだけはないよ、父ちゃん! あの姉ちゃんだぜ?」
「うふふふふ! 確かにあの子がラブロマンスだなんて! おっかしー!」
「だ、だよな? あいつが男とラブロマンスだなんてないよな! あははは! いやー変な夢みたな!」
「「「あはははははは!」」」
「ぶぇぇぇぇーーーーくしょん!!?」
『む! なんだ、その可愛げのないくしゃみは!』
「いえ、何だかそこはかとなくイラッとした後、抑えようのないくしゃみが……」
『気を付けるのだぞ! 我にうつったら大変だからな!』
「え!? 球体のくせに風邪ひくんですか!?」
その後、しばらくの間くしゃみが止まらなかったそうな……




