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Monster PandemiX(モンスター・パンデミックス)  作者: 古賀丸マシカク
エピソード XII どっこい祭り

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第51話 キンギョスクイ?

noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

「♪お馬はみんなーぱっぱーか走る、ぱっぱーか走る、ぱっぱーか走る、お馬はみんなーぱっぱーか走るー、おもしろーいねー」


「……」


 透き通る青い空のもと、シマシマに跨ったルナの唄が響き渡る。

 あたりには風の音と鳥の声しかない。つまり、観客はほぼゼロである。


 たっぷりと数秒の間のあと、同じくシマシマに乗っているテンが、後ろに陣取るルナにツッコむ。


「なんやねん、そのダッサイ唄は……しかもそれのどこがおもろいねん」


 その目は、しっかりとジト目である。


「ルナ姫様の唄はいつ聴いても癒されますね~」


 一方で、ルナを慕うシマシマの評価は高い。


「ほんまか?」


 胡乱うろんげに問うテンの発言をよそに、ルナがまやかしの武勇伝を語る。


「さすがシマシマ、わかってるじゃない。元の世界じゃ歌姫と呼ばれていたからね~、知らんけど」


 最後の「知らんけど」で、だいたいの信頼性は失われる。

 このような知能指数の低い会話をしながら歩いていると、合掌造りの家々が立ち並ぶスズカ村が見えてきた。

 ルナとテンは、シマシマからいったん降りて、その村の情景に見入った。


 分厚い茅葺かやぶきの屋根が、陽の光を浴びて柔らかな黄金色に輝いている。

 木と土の温もりに包まれた家々は、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。


「うわ~、なんか素朴でいい感じ~」


 ルナが感嘆の声を発する。

 そして一行は集落の中を歩き出した。


 村の中央には、小川がせせらぎ、水車がゆっくりと回っている。

 その音が心地よく響き、まるで時間がゆっくりと流れているかのようだった。


 さらに、家々の周囲には美しい田園風景が広がっており、稲穂が風に揺れている。

 遠くには青々とした山々がそびえ立ち、村全体を見守っているように見えた。


 ふと視線を巡らせると、大きな神社が目に入った。


「なんや、人がぎょうさんおるで」

「お祭りの準備じゃない? やぐらがあるもん」

「お祭り!! ほんまか!!」


 テンのテンションが一気に上がった。

 さすが子供だ。お祭りには目がない。

 それはルナも同様であった。


 よく見ると、やぐらのほかにも、すでに組み上がった屋台がいくつか並んでいる。


「少し早いかもだけど見て歩こうか」


 と、ルナがテンのほうに振り返る――が、テンがいない!


 どこに行ったのかと、あたりをキョロキョロと見回す。


「姫様、あそこにいます」


 シマシマの声に導かれて視線を移すと、テンはすでに一軒の屋台の前でしゃがみ込んでいた。


「おばちゃん、これなんや?」


 テンが屋台の店主に話しかけている。

 店主は白い手ぬぐいを被った全身緑色のバッタモンスター。


「知らないのかい? これは金魚すくいだよ」

「キンギョスクイ?」

「そう、これで金魚をすくってこのおわんに入れるのさ」


 店主は、和紙が貼られたポイとおわんを見せた。

 ポイとは、金魚をすくうあれである。


「へ~、取ってどないすん?」

「みんな家に持って帰って水槽に入れて飼うんだよ」


 そこにルナたちがやってきた。


「テン、あたしたちは旅の途中だから金魚は飼えないよ」

「せやけど、これやってみたいねん」

「わがまま言わないの!」


 ルナは両手を腰に当てた。まるで母親のようだ。

 ちなみにテンは反抗期の小学生みたいな顔をしている。


「あははは、持って帰らない人もたまにいるよ。そのときは半額でやらせてあげるのさ。それでよければ夕方またおいで。祭りはまだ始まってないからね」


 すると突然、後ろの方から大きな音がした。


 ガシャーン


「祭りなんかやめれケロ! たたられるケロ!」


 見ると、奇妙な喋り方をする集団が屋台を壊しながら暴れている。

 

「な、なにごと?」


 ルナが驚いていると、その屋台のバッタ店主が冷静な声で言った。


「あれは隣のモアイ村の者さ。ここ最近、様子が変なんだよね」


 暴れているモアイ村の集団はスズカ村の人たちに取り押さえられていた。

 暴れ方は派手だが、あまり強くはなさそうである。


「このスズカ村と隣のモアイ村は、昔から仲が良くてね。この祭りも毎年一緒に開催していたんだよ。それが、半年前にある教祖とかいうやつがやってきてね……」


「教祖?」


 ルナが眉をひそめる。


「ああ、ケロケロ教とかいうやつさ。それがモアイ村に住みついて、それからさ。モアイの村人が暴れたり、嫌がらせをしたりしだしたのはね。どうしちゃったんだか……」


 その話を聞いていたテンが突然立ち上がった。


「許されへんな! こんな楽しいお祭りをぶち壊すとは! ルナ、これはそのケロケロ教が怪しいで! 正体暴いたろ!」


 いつもなら絶対にこのような面倒ごとを避けるテンだが、今回は珍しく積極的だ。


(テン、そんなにやりたいんだね…… 金魚すくい)


 ルナは半ば呆れながらも、これは解決すべき問題だと感じた。


 しかし、この決断が、のちに思いもよらぬ事態を招くことになろうとは、このときの二人には知る由もなかった……。


 テンの頭の中には、すでに金魚を何匹すくえるかしかなかったのである。

noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

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