第47話 何度も言うけど、あたし中二だからね!
noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!
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「それではこれから作戦を説明する」
マーヴェリックは全隊員を司令室に集め、厳かな声で口を開いた。
集まったレジスタンスのメンバーは、何度も言うようだがすべて犬だ。それも様々な種類がいる。
ゴールデンレトリーバー、セントバーナード、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、チャウチャウ、フレンチブル、果ては、マルチーズに、ポメラニアン、おまけに柴犬まで。多種多様だ。
しかも、全員しっかり二足歩行でちゃっかり軍服を着ている。
まるで、コスプレさせたペットを連れて集まるオフ会に迷い込んだみたいだ。
「これまでの戦いで、アンドロイド軍の弱点は判明した。これは尊い仲間たちの犠牲によって得られた大切な情報だ」
マーヴェリックが毅然とした態度で胸を張る。
司令室の空気が引き締まった。
仲間を失った悲しみは、いまは胸の奥に押し込めている。
「その弱点とは、上空に居座っているあのマザーシップだ」
隊員たちが息をのむ。
マザーシップとは、先ほど目撃したバカでかい三角形の宇宙船だ。
ルナの頭の中では、まだ「スターなんちゃらとかいう、昔のプロレスラーみたいな名前の宇宙船」という曖昧な名前がどっしりと定着している。
「そこから各アンドロイド部隊に遠隔で指令が出されている。つまり、マザーシップのコアエンジンを破壊すれば、アンドロイドの攻撃は止まる」
マーヴェリックの説明に、隊員たちは神妙な顔でうなずいた。
しかし、すぐに次の言葉が続いた。
「しかし、マザーシップまでたどり着くための航空機を、我々は有していない」
隊員たちの間にどよめきが起きる。
それは早い話が――行けないということである。
「ほんなら無理やんか、アホか」
テンが一抜ーけた! と言おうとしたとき――
「そこで、我々は敵の戦闘機を奪うことにした」
予想の遥か上をいく作戦をさらっと告げられた。
それはまるで「チャリないから、その辺でがめとくか」というくらい軽いノリだ。
「なんですって? 奪うって……」
「ほんま無茶苦茶やな。これ、帰るための仕事の量ちゃうやろ」
ルナとテンにとっては、考えるまでもなく無理ゲーだ。
敵の戦闘機を奪う。
言葉だけ聞くと簡単だが、それはだいたい映画の主人公がやるやつである。
中学生とてんとう虫モンスターがやるミッションではない。
だが、レジスタンスメンバーは、謎に納得し、勝手に了解している。
「その作戦の詳細はこうだ」
マーヴェリックは机の上にマザーシップの設計図を広げた。
* * *
「よし、ではすぐに準備に取りかかってくれ! 健闘を祈る!」
「ラジャー!」
レジスタンスたちの「ラジャー!」という言葉に少しテンションを持っていかれるルナ。
何度かテレビやアニメで聞いたことがあるセリフだ。
ともあれ、ルナとテンは第三小隊に配属された。
バロンもいっしょだ。
作戦はこうだ。
第一小隊と第二小隊が前線で敵と交戦している間に、第三小隊が密かに敵陣へ潜入し、戦闘機を奪取する。
そのままマザーシップに敵のふりをして乗り込み、コアエンジンまで突き進む――というものだった。
説明だけ聞くと、かなり大胆である。
言い換えると、かなり無茶だ。
フリをして乗り込むあたりが、作戦として雑である。
映画などではありがちだが、最後までバレずに成功したのを見たことがない。だいたいどこかで見つかるのがスジだ。
ともあれ、この危険で大雑把な任務を任されたのは、ルナたち第三小隊。
彼らにのしかかる責任は重く、成功すれば戦局が大きく変わる。
だが、失敗すれば……。
すると、第三小隊の隊長・ベルマンが何かを手にして近づいてきた。
「おい、ルナ、これを使え」
ベルマンは一本のサーベルを手渡した。
「昔、戦闘中に拾ったものだ。だからなくしても文句は言わん」
「なにこれ? まさか……刀じゃないでしょうね?」
ルナは、サーベルというモノを知らなかったので、刀だと思っている。
そして、鞘からサーベルをゆっくりと引き抜いた。
「刀じゃん! 無理無理! あたし人なんか殺せないから! 何度も言うけど、あたし中二だからね!」
語尾にいちいちびっくりマークをつけるほど、全力で首を振った。すでに涙目である。
「落ち着け! 相手はヒトではない。アンドロイドだ。ただの機械のロボットだ」
全力で拒否ってくるルナに、ベルマンは相手が命のある生物ではないことを説明する。
「ほ、ほんと?」
その説明で少し落ち着きを取り戻す。
「それならなんとかいけるか……」
ルナは、改めてまじまじとサーベルを見つめる。
そのサーベルは、刀身の長さが約七十センチと、わりかし短めに作られていた。
しかし、身長百四十センチのルナには少し長い気もする。
柄の部分がなぜか通常のものより二倍の長さがある。両手でも持てるようにだろうか。
鍔は、金色の三日月型をしていた。
西洋サーベルにあるような護拳は、ついていない。
ルナはサーベルをじっと見つめ、両手で握り直すと、思い切り振り下ろした。
刃が空を裂き、ヒュッと鋭い風音が響く。
「なんや、ルナ。なかなかさまになっとるやん」
フライパンを振り回す姿しか知らないテンは、あえてルナを茶化す。
実はルナは小さい頃、祖父に剣道を少しだけ教わったことがあった。
だが、厳しい稽古が嫌になり、すぐにやめてしまったのだ。
「こんなことなら、ちゃんと続けておけばよかったかな……」
ルナはほんの少し、過去の自分を悔やみながら、サーベルを鞘に静かに収めた。
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