第44話 ほんまおっそろしー世界やなー
noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!
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ルナ一行――メンバーはルナ、テン、バロン、そして先日仲間に加わった水色と白のシマウマ、シマシマ――は美しい新緑の中を歩いていた。
春と初夏のあいだぐらいの、なんとも気持ちのいい季節である。
鳥はさえずり、風はやさしく、旅人のテンションを妙に上げてくるタイプの森だった。
シマシマの背中に乗ってからルナとテンの疲労度は格段に軽減されていた。
なにしろ今までは、十代の少女とてんとう虫モンスターが、ひたすら徒歩で異世界を横断していたのだ。
冷静に考えるとかなり無茶である。
「最初は乗り慣れなくて逆に疲れたりしたけど、いまや乗り心地最高ね」
「ありがとうございます。姫様にそう言われて光栄です」
「そういえば、お姫様を待ってるって言ってたよね? そのお姫様ってどんな人なの?」
「それが僕にもわからないんです。ただお姫様がいつか僕を救ってくれると信じて待っているんです」
「普通はさ、お姫様が白馬の王子を待つんだけど、馬のあんたが待つってどうなのよ」
「あはは、あべこべやんか。まあ、しゃーないな。ルナ、救ったれや」
「よっしゃー! では、あたしが白馬を救うお姫様を演じてあげます。……って、できるか! てか、白馬じゃねーし。テン、適当なこと言わないでよ。救うって……何すればいいかもわかんないよ」
一行はこのようにしょうもない話をしながら旅を続けているのであった。
「あの虎のおっさん、適当なこと言うてたんちゃうか? ワイアットの店におったオネエ口調の奴や。朝日が昇る山……全然見っけられへんで」
ピルピロットからもらった兜を被ったテンが、シマシマの背中で揺られながら愚痴っていた。
「ん~。でもいまのところ、それしか情報がないし……ん?」
ルナが前を見て言葉を止めた。
緑に囲まれた道を進んでいた一行だったが、突然、前方の景色がパッと開けた。
森林が途切れ、そこには大きな空間が広がっていた。
「ああっ!」
ルナが突然大きな声を出しものだから、後ろに乗っていたテンがビックリして落馬しそうになった。
「なんやねん! いっつも急にデカい声だしよんなー。今度はなんや!」
なんとそこには、巨大なクレーターらしき穴がぽっかりと口を開けていた。
それはあさひ山のクレーターと同じぐらいの大きさに見える。
ルナのデカい声も理解できる。
ルナは体中に鳥肌が立つのを感じた。
とうとう見つけたのか?
ずっと探していた、あの場所を……?
ルナは、ごくりと唾をのみ込み、「この穴かも」と独り言のようにつぶやく。
それを耳にしたテンが、すかさず聞き返す。
「この穴?」
「あたしが落ちた穴……」
「なんやて! ちゅうことは……えっと~、えっと~……どーゆーこと?」
テンは頭の中で必死に状況を整理していたが、途中で処理能力が追いつかなくなった。
「ここに落ちれば元の世界に戻れるかも」
「ほんまか!? ほんなら、ここはあさひ山なんか?」
「いや、わからないわ」
ルナとテンはシマシマの背から降りた。
四つん這いになってクレーターの縁に近づき、穴の底を覗いた。
しかし深いためか、暗くて何も見えない。
「どないする? ルナ」
「うん、入ってみるか……」
「ほんなら、俺もいく」
「だめよ、テンがあたしの世界に来ちゃったらみんな驚いちゃうから」
「えっ、そうなん?」
「そうよ、きっと捕まって実験用に解剖されちゃうわよ」
「ほんま、おっそろしー世界やなー、おまえんとこは! 信じられへんわ」
次の瞬間、四つん這いになっていたテンの手がズルッと滑った。
「うわっ!」
「危ない!」
ルナがとっさに手を伸ばし、テンの足を掴んだ。
しかし、勢いあまってバランスを崩す。
そして、そのままクレーターの底へ。
「うわぁぁぁぁーーーー……」
「あれぇぇぇぇーーーー……」
二人の悲鳴は漆黒の暗闇に吸い込まれていく。
「姫様ぁぁぁぁーーーー!」
シマシマの絶叫が山々にこだまする。
「バウ!」
バロンも後を追って勢いよく飛び込んだ。
なんだかんだこのニューファンドランド犬も勇敢である。
「バロンさん! 姫様を頼みますよ~」
* * *
ドシンッ!
二人は勢いよく地面に落ちた。
「いてててて」
ルナとテンは尻をさすりながら悶絶する。
ドガッ!
続いてバロンがテンの上に落ちてきた。
「痛ってー」
テンがバロンの下でジタバタと手足をバタつかせている。手足しか見えない。
「バロン!」
ルナが愛犬の名を呼び、立ち上がろうとした。その瞬間、ヒュンと何かがこめかみの横を通り過ぎた。
「……ん?」
次の瞬間――
ダダダダダダダダダ……
突如、あちこちから機関銃のような乾いた音が響き渡る。
どうやら、無数の弾が飛び交っているようだ。
「ひえーーーー!」
ルナは思わず両手で頭を抱え身を屈める。
「なんやなんや? どないした、ルナ!」
テンは、何が起こっているのかさえ分かっていない。
とりあえず、ルナと同じように身を伏せた。
「テン、立ち上がると危ないわよ。なんだか知らないけど銃声がする」
「ジュウセイ? なんやそれ」
「説明してる場合じゃ……」
ふと上空を見上げると、そこには驚くほど巨大な戦艦が一隻、不気味に浮かんでいる。
「ひぇーーー! なんじゃこりゃぁあああ!」
ルナとテンが同時に悲鳴を上げる。
「これがルナの世界なんか!?」
「全然違う~。あんなデカい……ひ、飛行機? 見たことないし! しかも空に浮かんでるなんて信じられない! まるでUFOじゃん!」
そう、それはまるで、SF映画のワンシーンのようだった。
巨大な三角形の白い飛行物体。
飛んでいるのか、浮いているのか、それともただ空に貼り付いているのか――よくわからない。
ルナの脳裏に、幼い頃、父と一緒にテレビで観た『スター・ウォーズ』の記憶が蘇る。
たしか、スターなんちゃらとかいう、昔のプロレスラーみたいな名前の宇宙船……それによく似ていた。
「と、とりあえずここから逃げるのよ!」
ルナがそう叫ぶと、二人は匍匐前進でその戦場からの脱出を試みる。
バロンも頭を下げてついてきた。
制服が汚れるとか言ってられない。どーでもいい。
そして、なんとか銃撃の嵐から逃れ、ほっと息をついたその瞬間――
カチャッ
頭の後ろで嫌な音がした。映画などでよく聞く、あの金属音だ。
さっきまで銃撃戦だったことを思えば、この音が何を意味するのかは想像に難くない。
ルナは背筋がすっと冷たくなるのを感じた。
次の瞬間、後頭部に冷たいそれが押し当てられた。
「動くな」
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