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Monster PandemiX(モンスター・パンデミックス)  作者: 古賀丸マシカク
エピソード X すべては整うから始まる…

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第41話 ヤクザと健康って真逆

noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825


 一行は夢見荘に到着した。


 OXボーダーは、早々に着替え室でパンツ一丁になった。

 しかもそのトランクスまで、水色と白のボーダーだ。いわゆるシマシマパンツというやつだ。

 やはりセンスがない。


「では、こちらがサウナになります。まず十分間入ってください」


 ルナは普段のお客への説明と同じように、丁寧に案内した。


「どれどれ――」


 OXボーダーが中に入る。


「おっ! 想像以上に熱いな」


「室内は九十度に設定しております。くれぐれも無理はしないように。

 途中で体調が悪くなりましたらすぐに出てくださいね。それとこまめに水分補給を行ってください」


 ヤクザにも神対応をするルナは、将来立派な接客業に就けそうだ。


 OXボーダーはじっと熱さに耐えて座っている。


 すると次第に汗が滝のように流れてきた。


 ルナは柄杓の水をサウナストーンにかけた。


 ジュッ! シュワ~


 水蒸気がサウナ室を埋め尽くす。


「おお! すごい湯気だな~。サングラスが曇るわ」


 メガネじゃないなら外せよ、と心の中でつぶやきながらも、お客様向けの笑顔を崩さないルナ。


「次は水風呂です。肩まで浸かって一分間我慢してください」


 ザブ~ンと肩まで勢いよく入ると、体の体積分の水が大量にあふれた。


「水風呂に躊躇ちゅうちょなく入るなんて肝が据わってるわね。さすが悪徳金融の社長だけのことはあるわ」


 ルナは妙なところで感心する。


「はい、最後は外気浴です。こちらの椅子でおくつろぎください」


 OXボーダーは、どかっとリクライニングチェアにもたれかかった。

 ギシギシッといまにも壊れそうな音を奏でた。


 テンが心配になって様子を見にきた。


「ルナ、どうや、どんな感じや?」


「うん、いまのところなんの感想もないわね」


「マジか~。やっぱファッションセンスと一緒でどっかズレとんやろな。なにせヤクザと健康って真逆やからな」


 それからルナは、同じセットをあと二回やるようにOXボーダーに説明した。


 OXの手下たちは、社長のOXボーダーにいちいちついて回って取り囲むように立っている。

 おそらくボディガードの役目を果たしているつもりなのだろう。


 そして三回目の水風呂が終わり、最後の外気浴となった。

 OXボーダーはリクライニングチェアにもたれかかるとじっと目をつぶった。


 ――するとどうだろう。


 これまで経験したことのないほどの心地よさがOXボーダーの身体を巡り巡った。


 それはフワッと体が軽くなる、まるで宙に浮くような感覚。交感神経と副交感神経が急速に切り替わることで生まれる、まさにトランス状態。


 さらに、すっきりとした感覚が脳内を駆け巡り、思考も研ぎ澄まされていく。あきらかに、頭がクリアになっている。


 そして何より、日々のストレスが解消されていく多幸感がOXボーダー本人を支配していた。


「これが整うってやつか~」


 OXボーダーは、うっとりと目を閉じ、身体の奥から染み出すように息を吐き出した。


 *   *   *


「ルナとやら、おまえがこんなものをなぜ知ってるかはわからんが、このサウナというもの、たいそう気に入ったぞ」


 OXボーダーはサウナ料金をゆめみ女将に払いながら言った。

 てっきり料金を踏み倒していくかと思いきや、そこはきっちりしていた。

 さすが、金融業界に身を置いているだけのことはある。


「じゃあ、借金は――」


「ああ、約束通りチャラだ」


 ルナと女将は顔を見合わせ抱き合って喜んだ。


「女将、サウナまた使わせてもらうぞ」


 OXボーダーはワッハッハッハと豪快な笑い声を残し去っていった。


 *   *   *


「ありがとうございます、ルナさん。本当になんてお礼を言ったらいいか」


 ゆめみ女将は目に涙を浮かべながらルナの両手をギュッと掴んだ。


「いや~、かまへんかまへん」


「なんであんたが返事してんのよ」


 ルナがジト目でテンを睨む。


「ところでルナさん、よくサウナの作り方を知ってましたね」


「ほんまや! よくあんな大層なもんの作り方、知っとったなー」


 テンもさすがに感心した様子で、その理由に珍しく興味を抱いた。


「あたし、小さい頃からサウナが大好きで、あまりにしょっちゅうせがむもんだからパパが家の庭に作ってくれたんです。

 それを一緒に作ってたから、なんとなく覚えていて。――あのときは楽しかったな~」


 ルナは父との思い出にふけりながら楽しそうに話す。


「ふ~ん」


 両親との思い出がほとんどないテンにとって、楽しそうに話すルナの姿は、どこか羨ましく映った。

 なにせ、物心がついたころには、すでに両親は亡くなっていたのだ。

 だが、楽しげなルナの表情を見ていると、不思議と胸の奥が温まり、どこかホッとする自分がいた。


noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825


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