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Monster PandemiX(モンスター・パンデミックス)  作者: 古賀丸マシカク
エピソード VIII 悪に染まった心を正義の爪は許さない

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第29話 しょせん小物なのよ、ふん

noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

「うわー、このままだとこのビルくらいまでいくってこと?」


 キイがそんなことを言いだした。

 それが本当だとすると、この廃ビルが崩壊する。

 五人は建物から脱出しようかと考え始める。


 ところが、ゼノンの体が1.5倍くらいの大きさになったところで突然巨大化が止まった……。


「……あれ?」


 ゼノンが自らの体を見下ろしている。


「いててててて……」


 しかも、急に大きくなったせいか体中がものすごく痛い。

 まれに中学生がなる、いわゆる成長痛である。

 骨の成長に筋肉や腱が追いつかない、あれだ。


 苦痛に歪む顔で悶絶していると、ブルーがニヤッと口角をあげる。


「なんか、成長期が終わったみたいだな〜」


 ゼノンの身長は元々百四十センチくらいだったため、1.5倍でも二メートルそこそこだった。


「これなら勝てんじゃね?」


「楽勝ね♪」


 レッドが確証を得るように四人の顔を見ると、モモニンジャーは胸の前でハートマークを作りながら笑顔を作る。


「よし、みんな行くぞ!」


 レッドの掛け声に「オオ!」と全員が応え、五人が横一列に並び、横陣おうじんを組む。

 そう、いよいよにゃんこニンジャーの必殺技が炸裂するのだ。


「野良猫集団、にゃんこニンジャー……」


 レッドが声高らかに名乗りを上げると、五人はそれぞれ決めポーズをとる。


「忍法、猫じゃらしの術!」


 五人は両手に猫じゃらしを持ち一斉に飛びかかっていった。


「にゃにゃにゃにゃにゃー」


 猫の鳴き声を口にしながら、ゼノンの体をコチョコチョとくすぐる。


「うわっ! やめれ、やめれ、くすぐったいッ」


 身をよじらせ悶絶するゼノン。


「おりゃあああ、これでもかああ」


 容赦しないにゃんこニンジャー。

 脇の下、背中、首の下、股間、あらゆるところを五人がかりで猫じゃらし攻撃を仕掛ける。

 どう考えても忍法というより、ただのくすぐりである。


「ぐわあああ、お願いだー! やめろー、ひ~……やめてくれー」


 たまりかねたゼノンはとうとう観念した。


「ゼノン大佐、参ったか!」


 レッドが親指で鼻先をこすった。


 膝をついて息も絶え絶えのゼノンは言葉を発することもできない。

 薬も切れたせいか体は元の大きさに戻っていた。


「いいか、ゼノン大佐。ジョーカーズを解散しこの街からとっとと出ていくんだ!」


「はい……わかりました。ごめんなさい……」


 どうにか声を絞り出したゼノンは意外にも素直に謝った。

 さっきまでの威厳は、すっかりどこかへ飛んでいってしまっている。

 そして、部下を引き連れて街を後にしたのだった。


「……なんかやけに気の小さいやつだな、大佐ってわりには」


 ゼノンたちが去っていくのを見つめながら、レッドが肩透かしを喰らったかのようにぽつりと呟く。

 するとモモが――


「しょせん小物なのよ、ふん」


 と、顎をしゃくってみせた。


 *   *   *


 ルナたちは、囚われていたペットをすべて解放した。廃ビルの外では、ちょうど太陽が昇り始め、空はきれいな朝焼けに染まっている。


 噂を聞きつけた飼い主たちが、すでに廃ビルの前に集まっていた。

 実は尚香とその友人は、ルナが入っていった廃ビルの場所を確認すると、近所で同じ被害に遭った人たちへ知らせて回っていたのだ。


 解き放たれたペットたちは、まっしぐらにご主人様のもとへと駆けていった。


「ルナ、みんな無事でよかったなー」


 テンが飼い主に向かって走っていくペットの姿を見てしみじみと言う。


「うん、ほんとよかった。やっぱりペットだって家族なんだよ」


 すると、にゃんこニンジャーの五人が二人のもとにやってきた。


「ルナ、ワトソン、ありがとう。君たちのおかげで事件は無事に解決した」


 レッドが二人に感謝の言葉を述べた。


「ちゃうちゃう、俺、ワトソンちゃうで」


「あれ? 君さっき、この人のこと、ワトソンって呼んでたよね?」


 ルナに向かってレッドが頭にはてなマークを飛ばしながら問う。

 たしかにルナは、テンに向かって「ワトソン君、助けにきたぞ」などと宣っていた。

 レッドだけでなく、にゃんこニンジャー全員が首を傾げている。


「いや……あれはまあ……こっちの都合で……ははは。こちらこそ助けてもらって、ありがとうございました」


 ルナはぐだぐだになりながら、その場をやり過ごすために感謝の言葉で誤魔化す。

 すると、ブルーニンジャーが半笑いで言う。


「けどさ、フライパンぐるぐる回しながら突っ込んでいった時は、さすがにヒヤヒヤしたな〜」


「あたしはあれ見て、つい吹き出しちゃった。ごめん!」


 キイが両手を合わせて謝った。

 するとモモが――


「わたしはワトソン君の――」


「せやから〜、ワトソンちゃうゆーとるやないけ、俺の名前はテンや!」


「あらそうなの? じゃあ、テン君のそのコスプレ、かわいいからペットにしたいな!」


「えっ?」


 テンは一瞬何を言われたのかわからず、呆然とする。

 そして、ふと気づく――自分がまだ犬の格好をしていることに。


「うゎああっ!! 忘れとった!!」


 顔を真っ赤にさせ、その場で慌てて毛むくじゃらの衣装を脱ぎ出した。


「あら、実物はもっと可愛い♡」


 モモは、ぱっと花を咲かせるような表情で両手を頬に添える。

 テンは赤い顔をさらに紅く染めてそっぽを向く。

 照れているのか怒っているのか、本人もよくわかっていない。


「いずれにせよ、君たちのおかげでジョーカーズを壊滅させることができた。俺たちもずっとこの事件を追いかけていたんだ。ほんと感謝するぜ!」


 レッドニンジャーが満足げに頷く。

 ルナとテンは、ちょっと照れくさそうに「ヘヘっ」と笑った。


「ところで君たちはこの街の人かい? 見かけない顔だけど」


 ミドが二人の顔を覗き込んだ。


「いえ、あたしたちは旅をしているんです。ある山を探しに」


「ある山?」


 キイが訊き返す。


「あさひ山なんだけど、朝日が昇る山とか太陽が出る山とか、そんなニュアンスの山」


 五人は顔を見合わせるが、誰も知らない様子だった。


「ルナ、そのような名前の山はこの辺りでは聞いたことがない。だけど、その山の件は引き続きこちらでも調べておくよ。何かわかったら必ず連絡する」


 と、レッドが頼もしいセリフを言ってくれた。

 さすがリーダー、気休めでも嬉しい。


「ありがとう、レッド。そしてにゃんこニンジャーのみんな!」


 ルナは改めてお礼を言うと、五人は手を振って朝焼けの中を駆け足で去っていった。

 しかし、どこへ向かうのか決めていなかったらしく、あっち行ったり、こっち行ったり。登場シーンはヒーロー然としていたが、去り方はバラバラだった……。


「なんやねん、あいつら……」


noteにて「Monster PandemiX」の裏話を公開中!


https://note.com/kogamaru_mp/n/na6350cefe825

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