第6話 ロックベア討伐
宿の部屋に荷物を置き、ベッドに腰を下ろした。
やっと一息つけたはずなのに、胸の奥は妙に落ち着かなかった。
(……宿代、食費、装備の手入れ……
これじゃ金がいくらあっても足りないな)
とりあえず依頼をこなして生活費を稼ぐしかない。
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――翌日。
ギルドへ向かい、掲示板を眺める。
Cランク依頼の中に、一つだけ紙が残っていた。
『ロックベア討伐 Cランク 報酬:金貨8枚』
後ろで冒険者たちがひそひそ話す。
「ちぇ……ロックベアしか残ってねぇのか」
「割に合わねぇよ。今日の依頼は諦めるか」
「この前Cランクパーティが死傷者出して逃げたって聞いたぞ……」
俺は紙を剥がし、受付へ持っていく。
「この依頼、受けてもいいですか?」
シルビアが驚いた顔をした。
「えっ!? ロックベアですよ!?
単独での受注はオススメできません……お仲間は……」
「いないです。ひとりで行きます。
無理そうなら帰るので心配しないでください」
「……わかりました。
絶対に無理はしないでくださいね」
軽く頷き、森へ向かった。
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森の奥へ進むほど、空気が重くなる。
折れた木々、抉れた岩、巨大な足跡。
(ロックベアの痕跡……近いな)
剣を抜き、慎重に進む。
やがて視界の先に、大きな影が見えた。
――ロックベアだ。
岩のような皮膚。
丸太のような腕。
一撃で人間を粉砕できる質量。
しかも──
子ロックベアが二体、周りをうろついている。
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子ロックベアがこちらに気づき、吠えながら突っ込んでくる。
俺は剣を構え、低く呟いた。
「──ファイヤーボール」
二発の火球が子ロックベアを焼き尽くす。
一体が倒れ、もう一体も続けて沈んだ。
その瞬間──
グォォォォォォォッ!!
ロックベアが激怒し、森が震えた。
巨体が突進してくる。
俺は横へ跳び、地面が砕ける。
(……あの巨体でこの速度か)
前脚が振り下ろされる。
剣で受け流し、隙を見て斬りつける。
キィンッ!!
火花が散るだけで傷一つつかない。
(硬い……腹部なら通るか?)
再び突進。
ギリギリで回避し、腹部へ踏み込む。
だが──
ガキィンッ!!
刃が弾かれ、腕に衝撃が走る。
(腹部でも通らない……なら)
ロックベアが咆哮し、地面が震える。
俺は後退しながら手をかざした。
「ーーファイヤーバインド!」
炎の鎖が伸び、ロックベアの足を絡め取る。
巨体が一瞬止まった。
俺は全力で踏み込み、剣を構える。
「ーーフレイムスラッシュ!」
火の魔力が剣にまとわりつき、炎の刃が伸びる。
ロックベアが拘束を引きちぎる。
だが遅い。
横一文字に炎の斬撃を放つ。
ズバァッ──!!
炎の刃が腹部を焼き切り、巨体が揺れる。
同時に、手に激しい衝撃。
バキィィッ!!
「……っ!」
剣が根元から折れた。
(流石に耐えられなかったか……)
ロックベアは最後の咆哮を上げ、倒れ込む。
森に静寂が戻る。
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【ロックベアを討伐しました】
【レベルが8→10に上がりました】
胸の奥が熱くなる。
【ヘルフレイムを会得しました】
手をかざすと、黒炎がぼうっと灯る。
空気が歪む。
禍々しい炎が手の上で揺らめいた。
(……これは危険だな)
黒炎を消し、素材を回収してギルドへ向かった。
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ギルドへ戻ると、受付は混雑していた。
「ロックベア討伐報告をお願いします」
シルビアがほっとしたように微笑む。
「ご無事だったんですね……!
まさか本当にお一人で?」
「はい。証拠です」
アイテムボックスを発動し、子ロックベア二体が落ちる。
「うおっ……!」
「アイテムボックスすげぇ……!」
そして──
ズゥゥゥンッ!!
巨大なロックベアが床に落ちた。
冒険者たちが一斉に後ずさる。
「ロ、ロックベア……!」
「親子三体……!」
「これをひとりで……!?」
シルビアは震える声で言った。
「……すごい……本当に討伐したんですね……!」
「素材の買取もお願いします」
冒険者たちがざわつく。
「剣が折れてるぞ……」
「ロックベア相手に折れたのは一本だけ……?」
「やべぇ……只者じゃねぇ……」
シルビアは査定を進める。
「甲殻、毛皮、魔石……全部高品質です!
討伐報酬と合わせて金貨10枚になります!」
金貨を受け取り、軽く頷く。
(……これでしばらくは困らないな)
ギルド内はまだざわついていた。
「Cランクがロックベア親子を単独討伐……?」
「イグナリアにとんでもない奴が来たな……」
その声を背に、ギルドを後にした。
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宿へ戻り、折れた剣を机に置く。
(……武器も買い替えないとな)
ふと、グレイズの言葉が脳裏をよぎる。
『いつか信用できる仲間に出会えたら、その時は逃げずに向き合え!』
窓の外を見つめ、静かに息を吐いた。
(仲間……か……)
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【スキルボード:タイチ・クロサワ 17歳】
LV:10
HP:102
MP:108
魔法適性:火魔法 A
固有スキル
・焔神の加護
・アイテムボックス
剣術
・フレイムスラッシュ
魔法
・ファイヤーボール
・ファイヤーバインド
・ヘルフレイム




