第45話 ギリギリの戦い
森の空気が張り詰めていた。
殺気のぶつかり合い。
俺と霧島が向かい合うだけで、周囲の木々が軋む。
霧島は剣を肩に担ぎ、ゆっくりと歩きながら近づいてくる。
「さっきの一撃で死んでないなんてな……褒めてやるよ」
その軽い声とは裏腹に、鳥肌が立つほどの殺気が漂っている。
一発でも喰らえば即死だ。
そんな緊迫した空気の中、俺は刀を構え、呼吸を整えた。
「……お前を止めるまでは……俺は死ねない」
霧島の口角がゆっくりと上がる。
「止める? 俺を? お前が?」
空気が震えた。
「さっさと来いよ」
ガァンッ!!
衝撃で腕が痺れた。
霧島の剣は“重い”なんて生易しいものじゃなかった。
「どうした? 受けるだけか?」
霧島が笑う。
(クソ……!)
俺は踏み込み、黒炎を纏わせた刀で斬り上げる。
だが霧島は受け止め、
剣圧だけで俺の足を地面にめり込ませた。
「その程度じゃ、俺は斬れねぇよ」
「……まだだッ!」
俺は刀を滑らせ、霧島の首を狙う。
だが霧島は紙一重で避け、逆に俺の肩を斬り裂いた。
熱い血が飛ぶ。
「ぐっ……!」
「痛ぇだろ? もっと見せてくれよ……苦痛に歪む顔を」
霧島の声が耳に刺さる。
霧島の剣は速いわけじゃない。
俺の反応を先読みしている。
受けるたびに腕が痺れ、
足が後ろへ滑る。
「お前の動きはな……読みやすいんだよ……」
「……っ」
霧島の剣が脇腹を浅く斬った。
息が漏れる。
遠くでノエルの声が聞こえた。
「タイチ……!」
俺は刀を低く構え、
黒炎を刀身に集め始めた。
(一瞬だ……一瞬だけ加護を限界まで引き上げる)
霧島が目を細める。
「……ほう。まだやる気か」
「……この一撃で決める」
「その一撃が俺に届くと思ってるのか?」
「届かせる」
霧島は笑った。
「口ではなんとでも言える」
霧島が踏み込む。
俺は避けない。
霧島の剣が脇腹を深く斬る。
「ぐっ……!」
「タイチ!!」
ノエルの叫びが聞こえる。
だが俺は黒炎を刀に集中させ続けた。
霧島が嘲る。
「避けねぇのかよ……バカが!」
「……これで……終わりだ……
――焔神抜刀ッ!!」
黒炎が爆ぜ、
刀が炎の獣のように吠えた。
加護を限界まで引き上げた渾身の一撃は、今までにないほどの魔力量を放出する。
霧島の目がわずかに見開かれる。
「……ッ!」
俺の一撃は霧島の剣ごと、
胸を斜めに叩き切った。
霧島の血が噴き出る。
霧島の身体が地面に叩きつけられ、
俺も同時に膝をつく。
「……はぁ……はぁ……」
視界が揺れる。
血が止まらない。
霧島はゆっくりと立ち上がった。
「今のは効いたぜ……褒めてやるよ……太一」
(まだ……立つのかよ……)
突然――霧島の懐の魔道具が光った。
「……チッ。呼び出しかよ」
「……?」
霧島は魔道具を握りつぶし、
俺を見下ろす。
「太一。
今日はここまでにしといてやる」
「……逃げるのか」
「勘違いすんな。
帰還命令がなきゃ……お前は今ここで死んでた。
精々もっと強くなって俺を楽しませろ」
霧島は一瞬で姿を消した。
次の瞬間、霧島は坂上の倒れている場所にいた。
坂上の頭を掴む。
「ひ……っ……やめ……くだ……さい」
「坂上。お前は弱すぎる。ここまでだ。
だが――お前のスキルは貰っておいてやる」
坂上の身体から光が抜け、
霧島の手に吸い込まれていく。
坂上はそのまま動かなくなった。
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霧島は気絶した早乙女を抱き上げる。
「……さて。
こいつも連れて帰らねぇとな。
光の聖女を見捨てたらジジィに怒られるからな」
霧島は森の奥へと消えた。
「タイチ!!」
ノエルが駆け寄り、
血まみれの俺を抱きとめる。
「もう終わったよ……!」
「……ノエル……
アヤカは……?」
「大丈夫……生きてる……!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は地面に座り込んだ。
霧島の撤退によって、俺たちは救われた。
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