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転生したら焔神の加護が危険だと追放された俺、軍事国家で最強の戦力として成り上がる  作者: YUJIN


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第43話 黒狼族の力

 俺は傷口を焼き、無理やり出血を止めた。

 霧島の殺気が迫る中、アヤカとノエルを一瞬だけ見る。


「……二人とも、まだいけるか?」


 アヤカは矢を番えたまま、早乙女の魔法を睨みつけていた。


「太一くん……早乙女さんの魔法がすごく邪魔……

 こっちの連携、全部崩されてる……」


 火球も光弾も風刃も致命傷にはならない。

 だが、こちらの動きを読んだように差し込んでくる嫌らしさがあった。


 アヤカは矢を引き絞り、短く息を整える。


「早乙女さんは私がなんとかしてみる……

 太一くんは霧島さんに集中して」


「アヤカ……大丈夫か?」


「大丈夫。

 太一くんの邪魔はさせないから」


「……絶対に無茶するなよ」


「うん。

 太一くんもね」


 その横で、ノエルが坂上を射抜くように見つめていた。

 金色の瞳は、完全に“獲物”を捉えている。


「タイチ……あの男、私にやらせて」


「危険だ」


「大丈夫……今は、今までの私じゃない。

 だから……信じて」


 ノエルの声は震えていない。

 覚悟を決めた者の声だった。


「……わかった。無理だと思ったら逃げろ」


「心配してくれて……ありがとう、タイチ」


 坂上が下品に笑う。


「おいおい、お前ひとりで俺の相手する気か?

 それとも諦めて俺の従魔になる気になったか?」


 ノエルの耳がピクリと動いた。


「……あなたの声、本当に気持ち悪い」


 霧島の殺気が俺の意識を引き戻す。

 もうノエルの方を見る余裕はない。


 だが、これでいい。

 俺は霧島だけに集中できる。


 視界が霧島だけに絞られた。


 ---------------------------------------------


 ノエルは太一の側を離れ、坂上の正面に立った。


 黒い霧のような魔力が、彼女の腕へと集まっていく。

 空気がひりつき、坂上の喉がひゅっと鳴る。


「おま……お前!

 俺に逆らう気かよ獣人が!

 獣人の女なんか怖くねぇからな!」


 強がりの声は震えていた。


 ノエルは何も言わない。

 ただ、静かに息を吸いーー吐いた。


 その瞬間、ノエルの腕が変質した。


 黒い毛が逆立ち、筋肉が盛り上がり、

 指先から伸びた爪が、光を吸い込むように黒く光る。


 肘から先が、完全に“獣の腕”へと変わった。


 坂上の顔が引きつる。


「なっ……腕が……獣に……!?」


 ノエルの声は低く、冷たかった。


「……私のタイチを傷つけた。

 お前は……許さない」


 坂上は慌ててゴブリンを前に出す。


「い、行け! 俺を守れ!!」


 だが――遅い。


 ノエルの姿が掻き消えた。


 次の瞬間、

 ゴブリンたちの体が裂けた音だけが残った。


 坂上の顔が青ざめる。


「俺の……ゴブリンが……一瞬……?

 だったらこれでどうだ……俺の切り札だ!」


 坂上はワーウルフを召喚する。


 だが、ノエルは止まらない。

 黒い残像が走り、ワーウルフたちが次々と崩れ落ちる。


 坂上の切り札が、まるで紙細工のように消えていく。


「な、なんでだよ……!

 ワーウルフだぞ……高ランクの魔物だぞ……!

 おかしいだろ……!」


 ノエルの爪が坂上へ届く。


 坂上はワーウルフを盾にした。


 だが――


 ワーウルフの体が縦に裂け、

 その勢いのまま、坂上の右肩に衝撃が走った。


 次の瞬間、坂上の右腕が“消えていた”。


「ぎゃああああああああああああああッ!!

 俺の腕がぁぁぁぁ!!」


 ノエルは無表情のまま、

 血に濡れた獣の腕を軽く振った。


「……まだ終わってない」


 坂上は地面を這い、必死に逃げようとする。


「や、やめろ……来るな……来るなぁぁ!!」


 ノエルは四足に近い姿勢で地を蹴り、

 一瞬で坂上の背後に回り込んだ。


 坂上が振り返るより早く、

 獣腕が肩に突き刺さる。


 肉が裂ける鈍い音が響き、

 坂上の左腕が根元から消えた。


「ぎぃぃぃぃああああああああああああッ!!

 痛い……痛い……痛い……痛い……

 痛いよぉぉおおお!!」


 ノエルは冷たい瞳で坂上を見下ろす。


「……タイチを傷つけた罪。

 これでも……軽い」


 坂上は血を流しながら崩れ落ち、

 もはや立つことすらできなかった。


 ノエルはゆっくりと太一の方へ顔を向ける。


 その瞳は獣の光を宿したままーー

 しかし太一を見る時だけ、

 ほんの少しだけ柔らかく揺れた。


 --------------------------------------------


 その時だった。


 ノエルの背後で、

 空気が一段階、冷たく沈んだ。


 早乙女の魔力が跳ね上がったのだ。


「……あら。坂上さん、やられちゃったのね。

 まぁ……邪魔だったからちょうど良かったかな?」


 早乙女は笑っていた。

 だがその笑みは、感情の欠片もない。


 アヤカが矢を構え、早乙女の前に立つ。


 早乙女の指先に光が集まる。

 その光は、さっきまでの魔法とは“質”が違った。


「邪魔をするなら、あなたから消すわよ?

 アヤカちゃん」


 アヤカは喉を鳴らしながらも、

 一歩も引かずに前へ出た。


「……私はもう逃げない……」


 その声は震えていなかった。


 ーーアヤカの戦いが始まる。

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