第35話 新たな仲間
朝の空気はひんやりしているのに、
胸の奥の魔力だけがじんじんと熱を帯びていた。
アリスは俺の顔を覗き込み、
心配そうに眉を寄せる。
「……タイチくん、本当に大丈夫?
昨日より……魔力が不安定みたいだけど」
「平気だ。王城へ行こう」
そう言ったものの、
胸の奥の脈動はまるで急かすように強くなっていた。
馬車に乗り、王城へ向かう。
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城門前には、武装した兵士が二列に並んでいた。
俺たちを見ると、すぐに敬礼する。
「タイチ殿がおいでになりました。
軍議室へご案内します」
(……扱いが変わったな)
以前はただの冒険者だった俺が、
今は国家戦力として扱われている。
アリスが小声で囁く。
「……タイチくん、なんか……すごいね」
「いや、すごくなくていいんだけどな……」
苦笑しながら、兵士の後について歩く。
重厚な扉が開くと、
そこにはギルバート将軍が立っていた。
「よく来てくれた。
話すことは多い。座ってくれ」
俺とアリスが席につくと、
ギルバートは資料を閉じ、こちらを見据えた。
「まず初めに――近衛特務隊の件だ」
ギルバートの声は重く、はっきりしていた。
「近衛特務隊は五人の精鋭部隊として新設する。
君とアリス殿、そして……もう一人はすでに決まっている」
「もう一人……?」
ギルバートは扉の方へ視線を向けた。
「入ってくれ」
扉がゆっくりと開く。
そこに立っていたのは――
アヤカだった。
最後に会った時よりも引き締まった表情。
傷は癒え、瞳には強い意志が宿っている。
アリスが息を呑む。
「アヤカちゃん……!」
アヤカは俺たちの前に立ち、
胸に手を当てて深く頭を下げた。
「……改めて。
タイチくん、アリスちゃん。
あの時は助けてくれてありがとう」
ギルバートが続ける。
「アヤカ殿は亡命後、第四部隊に入隊し、弓兵として活躍。
先の魔物襲撃での働きも見事だった。
近衛特務隊に相応しいと判断した」
アヤカは俺をまっすぐ見つめる。
「……今度は私が、二人を守りたい」
胸が熱くなる。
アリスはアヤカの手をそっと握った。
「アヤカちゃん……一緒に頑張ろうね」
三人の影が、軍議室の床に並んだ。
ギルバートは次の資料を開いた。
「次だ。
君の焔神の加護についてだが……
部下に調べさせては、みたが王国の記録には存在しなかった」
「……やっぱり、そうなんですね」
「強力な加護は、国を守る力にも、滅ぼす力にもなる。
だからこそ、その正体を調べる必要がある」
ギルバートは地図を広げた。
「ソルディア王国に、加護研究に長けた若者がいる。
その研究者の元へ行き、君の加護について調査してほしい」
アリスが不安そうに俺を見る。
「ソルディアって……タイチくんが追放された国だよね……?」
「ああ……そうだ」
ギルバートの声が低くなる。
「そして最後だ。
先日の魔物襲撃だが――
どうやら、人為的に引き起こされた可能性がある」
空気が一気に重くなる。
「その黒幕が……ソルディア王国だという情報がある」
アヤカが拳を握りしめる。
「……やっぱり……」
ギルバートは続ける。
「そこでだ加護の調査をしつつ、ソルディア王国に潜入し相手の思惑を探ってほしい」
俺は思わず声を上げた。
「だけど……俺はあの国に追放されたんですよ?
それにアヤカは命がけで亡命したんだ」
「承知している。
もちろん……命の危険もある……
だが……これは国家を揺るがすことになりかねないんだ」
ギルバートの目は真剣だった。
アリスが俺の袖を掴む。
アヤカはまっすぐ将軍の目を見ている。
俺は深く息を吸い、ギルバートに向き直った。
「……わかりました。やります」
ギルバートは満足そうに頷いた。
「頼んだぞ。
特務隊の初任務だ。
出発の詳細が決まり次第追って連絡する
君たちが――この国の未来を左右する」
胸の奥の魔力が、強く脈打った。
まるで、何かが動き出したような感覚だった。
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3人で行動しろとの将軍の命令で、アヤカはアリスの家に泊まることになった。
アリスの家に戻ると、
アリス母がにこにこしながら迎えてくれた。
「あら……そちらの子はどなた?」
「初めまして……アヤカです。
軍の命令でなるべく3人で行動しろとのことですので、泊まららせていただきます。」
「あらぁ、そうなの?
アヤカちゃんって言うのね!
うちは部屋だけは余っているから、ゆっくりして行ってね」
アヤカは丁寧に頭を下げる。
「ありがとうございます……お世話になります」
アリスの母親はにこやかに頷き――
ふと俺の方へ視線を向けた。
「それにしても……タイチくんったら。
うちの娘だけじゃなく、もう一人の女の子を連れてくるなんて隅に置けないわね」
「えっ……これは……」
「ちょっと……お、お母さん……!」
「ち、違います! 私はそんな……!」
アリスの母親は少し意地悪そうに笑う。
「ふふふ……冗談よ。
でもね、貴族の家では側室なんてのも珍しくないのよ?」
「もう……お母さんやめてよ!!」
「そ、そうです! タイチくん困ってますから……!」
「ふふっ、二人とも反応が可愛らしいわね。
若いっていいわぁ」
アリスは真っ赤になりながら、
でもどこか覚悟を決めたように言った。
「でも……別に。
タイチくんが……大切にしたい人なら……
私は、反対しないよ」
アヤカが驚く。
「ちょっと……アリスちゃん……!」
アリスは続ける。
「だって……タイチくんって、
放っておくとすぐ無茶するでしょ?
私一人じゃ見きれないし……
アヤカちゃんがいてくれたら、ちょっと安心だなって……」
その言葉の裏にある本音は――
アヤカは胸に手を当て、
少し照れたように微笑む。
「……アリスちゃんって、本当に優しいね」
「……タイチくんが大事なだけ
だけど……正室は譲らないぞ! 」
俺は何も言えなかった。




