第30話 ワーウルフ討伐
黒炎が俺を包み込む。
皮膚の上を炎が這い、骨の奥まで熱が染み込んでいく。
『ふははは……いいぞ、もっと怒れ……怒りが我らを強くする』
焔神の声が頭の奥で響く。
怒りと黒炎が混ざり合い、炎はさらに漆黒へと染まっていった。
ワーウルフが一体、喉を鳴らして吠える。
仲間を鼓舞するような咆哮に、周囲の群れも呼応して吠え始めた。
次の瞬間、地面を砕く勢いで突撃してくる。
だが──
「遅い」
その一言が漏れた時には、
俺の身体はもう動いていた。
ワーウルフの爪が空気を裂く。
風圧が頬を切るほどの速度。
だが、俺には当たらない。
半歩だけ横へ滑り込む。
視界の端で、獣の瞳が驚愕に揺れた。
「俺にひれ伏せ」
刀を抜いた瞬間、黒炎が刃にまとわりつき、獣のように唸る。
斬撃は音すら置き去りにし、
ワーウルフの首元を焼き裂いた。
焼けた毛皮の匂いが広がり、黒い煙が立ち上る。
倒れたワーウルフの身体が痙攣し、やがて動かなくなった。
加護が暴走した俺には、
ワーウルフは敵ですらなかった。
次の一体が飛びかかってくる。
その背後からさらに二体。
横から四体。
群れ全体が一斉に俺へ向かう。
だが──
「まとめて来いよ」
黒炎が爆ぜた。
俺の身体から吹き上がった炎が、
周囲のワーウルフを焼き払い、悲鳴が重なり合う。
爪が俺の肩に触れた瞬間、
黒炎が逆流して獣の腕を焼き裂いた。
牙が俺の首を狙った瞬間、
黒炎が噛みつくように獣の顔を包む。
「――ディバインインフェルノ」
地面から噴き上がった黒炎が、
悶え苦しむワーウルフたちを包み込み、焼き尽くした。
焼け焦げた毛皮の匂い。
焦土のように黒く染まる地面。
炎に照らされる獣の影。
戦場が、沈黙した。
黒炎がゆっくりと消えていく。
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【ワーウルフを討伐しました】
【レベルが30→32に上がりました】
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システムの声が遠くで響く。
その瞬間、腕に激痛が襲った。
自分の身体さえも黒炎で焼いてしまったのだ。
「……ぐぁぁあああああ……!」
魔力も完全に尽きた。
身体が重い。
視界が揺れる。
焼ける痛みで意識が飛びそうだった。
背後から、震える声が聞こえた。
「タイチくん……!」
アリスだ。
次の瞬間、俺の身体はアリスの腕の中に倒れ込んだ。
「タイチくん!!」
アリスは必死に俺を抱きとめる。
焼けた腕に触れた瞬間、彼女の指が震えた。
「こんな……酷い大火傷……!」
涙がぽたぽたと俺の胸に落ちる。
「タイチくんのバカ……っ!!
なんで……なんでこんな無茶するの……!
私、頑張るって言ったのに……!」
「ご……ごめん……大切な人たちを……何よりアリスを危険な目に……合わせたコイツらを……許せなかった」
声が震える。
アリスは怒りながら泣いていた。
泣きながらも、必死で治療魔法を使っている。
「痛いよね……ごめんね……でも……治すから……!
もうみんな命は取り留めたから……安心して……!」
アリスの魔力はほとんど残っていない。
それでも、無理やり絞り出すように光を生み出していた。
「タイチくん……好きなの……
だから……絶対死なせない……!」
涙が止まらない。
声が震えて、言葉が途切れそうになっても、
アリスは必死に魔法を続けた。
「お願い……戻ってきて……
タイチくんがいない世界なんて……嫌だから……!」
その声は、
意識が沈んでいく俺の耳にも、
かすかに届いていた。
「俺……も……アリス……のことが……す──」
視界が真っ暗になり、
俺はそのまま意識を手放した。
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【スキルボード:タイチ・クロサワ 17歳】
LV:32
HP:322
MP:328
魔法適性
・火魔法 A+
固有スキル
・焔神の加護
・アイテムボックス
剣術
・焔神抜刀
魔法
・フレイムランス
・フレイムチェイン
・ヘルフレイム
・ディバインインフェルノ




