第3話 村の危機
森を抜けた先に、小さな村が見えた。
煙突から薄く煙が上がり、人の気配がある。
張り詰めていた孤独の緊張がふっと緩み、思わず息が漏れた。
「……助かった……」
村に足を踏み入れると、数人の村人がこちらをちらりと見る。
「おっ、兄ちゃん見ない顔だね。旅人かい?
何もない村だけど、ゆっくりしていってくれ!」
「は、はい……ありがとうございます!」
久しぶりに人と話した気がして、胸の奥が少しだけ軽くなった。
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村の中央にある小さな雑貨屋に入る。
武器屋というより、生活用品も並ぶ店だ。
店主の老人が顔を上げた。
「旅の人かい? 何か探し物かね」
「魔物と戦うための装備が欲しくて」
「なら、防具と武器だな。そこの棚から選びなさい」
値札を見た瞬間、胸が冷えた。
(……金なんて持ってなかった……)
アイテムボックスを思い出し、手をかざす。
ホーンラビットの亡骸が現れた。
店主は目を丸くする。
「アイテムボックスか。珍しいスキルだな……。
ほう、新鮮なホーンラビットだ。銀貨十枚で買い取ろう」
「こんなに……いいんですか?」
「新鮮な魔物は高く売れるんだよ。妥当な値段さ」
銀貨を受け取り、棚を見渡す。
革の胸当て、短剣、片手剣、木の盾──
壁に掛けられた片手剣に目が止まった。
刃こぼれはあるが、握りはしっかりしている。
「その剣が気になるのかい?」
「……昔、剣を習っていたんです。
形は違うけど……握ると落ち着くというか」
店主は感心したように頷く。
「なるほどな。構えが素人じゃないと思ったよ。
お近づきの印だ、胸当てはサービスしておくよ」
「えっ……ありがとうございます!」
胸当てと剣を受け取り、店を出た。
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宿屋で部屋を借り、鏡を見る。
そこには、青い目をした黒髪の少年が映っていた。
「……転生で姿が変わってるって、本当だったんだな。
これが今の俺か……若いな……」
布団に腰を下ろした瞬間、全身の疲労が押し寄せる。
「久々のフカフカの布団……最高だ……」
目を閉じ、意識が沈んでいく──その時。
カンッ! カンッ! カンッ!
鐘の音が村中に響き渡った。
「なっ……なんだ!?」
反射的に飛び起き、剣を掴んで外へ飛び出す。
村の中央では、村人たちが怯えた顔で叫んでいた。
「フォレストウルフだ! 三体もいるぞ!」
「この村に戦える奴なんていねぇ!
隣街のギルドに応援を──!」
「もう行ってる!
でも隣街までは時間がかかる……それまでに村がやられちまう!」
「くそ……どうすりゃいいんだ……!」
混乱する村人たちの前に、俺は立った。
「兄ちゃん! 一人じゃ無理だ、下がれ!」
月明かりの下、三つの影が姿を現す。
フォレストウルフ──初心者殺しとして有名な魔物だ。
ガルルルル……
グルルル……
足が震える。
(正直……三体なんて無理だ……)
だが、逃げるわけにはいかない。
(逃げない……
ここで逃げたら……俺を見捨てたあいつらと同じだ……)
震える手で剣を構える。
「来いよ……犬っころ!」
一体目が飛びかかる。
剣を横に払う。
ガキィン!
金属と爪がぶつかり、火花が散った。
衝撃で腕が痺れる。
「ぐっ……!」
「ファイヤーボール!」
火球が直撃し、一体目が燃え落ちる。
(よし……いける!)
二体目が横から襲いかかる。
「ファイヤーバインド!」
火の鎖が伸び、足を絡め取った。
「はぁぁッ!」
剣を振り抜き、脇腹を切り裂く。
三体目が怒り狂って突進してくる。
(……これで決める!)
踏み込み、剣に炎を纏わせる。
「フレイムスラッシュ!!」
炎の斬撃が一直線に走り、フォレストウルフの胸を貫いた。
巨体が崩れ落ちる。
村人たちが息を呑む。
「一人で……倒した……のか……?」
「すげぇ……!」
震える手で剣を握り直す。
【フォレストウルフを討伐しました】
【レベルが2→8に上がりました】
【剣術スキル〈フレイムスラッシュ〉を会得しました】
「……なんとか……倒せた……」
夜風が吹き抜ける。
俺はゆっくりと剣を下ろした。
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【スキルボード:タイチ・クロサワ 17歳】
LV:8
HP:82
MP:88
魔法適性:火魔法 A
固有スキル
・焔神の加護
・アイテムボックス
剣術
・フレイムスラッシュ
魔法
・ファイヤーボール
・ファイヤーバインド




