第25話 アイアンリザード襲来
外壁前の防衛線に立った瞬間、空気が震えた。
次の瞬間――
ドドドドド……ッ!
大地の奥底から響くような地鳴りが足元を突き上げ、
乾いた土が跳ね、砂が細かく震えながら舞い上がる。
まるで大地そのものが怒りをぶつけてくるようだった。
ジークが目を細め、短剣に手をかける。
「……来たな。第二波だ」
砂煙の向こうで巨大な影がうねる。
鉄の鱗を持つ巨体が、地面を削りながら迫ってくる。
アイアンリザードの大群。
ざっと見ただけでも百は超えている。
地面が割れ、石が跳ね、
突進の衝撃だけで空気が押し寄せてくる。
さらに空を見上げれば、
ロックバードの群れが黒雲のように渦を巻き、
影が地面に不気味な模様を描いていた。
カレンが槍を構え、低く言う。
「空と地上の同時攻撃……
魔物が統率を取っているみたいだ。こんなの初めてだ……」
冒険者や兵士たちが怯え、ざわつく。
「あんなの……無理だ……生き残れない」
「私……まだ死にたくないよ……」
「くそ……こんな依頼受けなきゃよかった……」
圧倒的な数に、士気が一気に下がっていく。
そんな中、ジークがニヤリと笑い、短剣を抜いた。
「タイチ、アリスとの特訓の成果……見せてくれよ」
カレンが横目で俺を見る。
「士気が落ちている。
50%の加護でいい……派手なのを頼む……」
「ああ……任せろ」
俺は深く息を吸い、前へ一歩踏み出した。
周囲の冒険者たちがざわつく。
「おい、前に出すぎだ! 死ぬぞ!」
「一人で突っ込む気か!?」
「焔神……俺に力を寄越せ」
加護が応えるように、胸の奥で炎の魔力が渦を巻く。
血管の中を熱が駆け巡り、視界が研ぎ澄まされる。
世界が一瞬、静まり返った。
俺は呟く。
「――ディバイン・インフェルノ」
次の瞬間、地面が裂けた。
ゴォォォォォッ!!
大地が燃え上がったかのような業火の壁が噴き上がり、
前方一帯を灼熱の赤に染める。
熱風が肌を刺し、空気が歪み、
耳を焼くような轟音が響き渡る。
突進してきたアイアンリザードたちは、炎に触れた瞬間、
鉄の鱗が赤熱し、肉が焼け、悲鳴を上げて倒れていく。
「ギャアアアアアッ!!」
「グォォォォッ!!」
炎の中で暴れる影が次々と崩れ落ち、
黒煙と焦げた匂いが戦場を満たした。
ジークが目を見開く。
「おいおい……これで50%なのかよ!?
100%ってどうなるんだよ……」
カレンは冷静に頷く。
「いい制御だ。暴走の気配もない」
周囲の冒険者や兵士たちがざわめく。
「なんだあの炎……」
「規格外すぎる……」
「半分は燃え尽きたんじゃないか……?
これなら……いけるぞ……!」
業火が消えた頃には、
前方のアイアンリザードの半数以上が灰になっていた。
地面にはまだ赤熱した跡が残り、
焦げた肉片が煙を上げている。
ジークが双短剣を構え直し、腹の底から叫ぶ。
「よっしゃ半分に減った!
ここからは総力戦だ――行くぞお前らァ!!」
冒険者と兵士が一斉に雄叫びを上げた。
「「「おおおおおおおおおッ!!!」」」
カレンが前に出て、鋭く叫ぶ。
「タイチ、よくやった!
士気が戻った……これなら行ける!」
俺たちは武器を構え、
残ったアイアンリザードへと駆け出した。




