第24話 王都防衛へ
王都へ近づくにつれ、空気が変わった。
焦げた匂い、土煙、そして遠くから響く衝撃音。
戦場特有の、胸の奥をざわつかせる気配が肌にまとわりつく。
アリスが外を覗き、小さく息を呑んだ。
「……王都の方から煙が……」
カレンが険しい顔で前を見据える。
「激しい戦いだったみたいだな……」
ジークは口元を歪め、短剣を回す。
「久々に暴れられそうだな」
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外壁が見えてくると、周囲には黒煙が立ち上り、
地上にはアイアンリザードの死骸と血痕が散乱していた。
兵士が叫ぶ。
「第一波は撃退した! 第二波に備えろ!」
ジークが顔をしかめる。
「第一波でこれかよ……」
外壁の上では、近衛兵と冒険者がロックバードを迎撃していた。
矢が空を切り、魔法の光が閃き、
空中で爆ぜた羽根が黒い雨のように降り注ぐ。
馬車が門前で止まり、兵士が声を張り上げる。
「援軍だ! 急いで門を開け!」
重い門が軋みながら開き、俺たちは王都の中へ入った。
中は完全な混乱状態だった。
負傷者を運ぶ担架、
治療を行うヒーラー、
破壊された家屋、
走り回る近衛兵──
戦場の匂いが充満している。
そして、地面へ続く大きな階段の前で兵士が叫んでいた。
「民間人は全員、地下避難区画へ誘導しろ!
負傷者は治療班に回せ!」
アリスが驚いたように言う。
「地下に……こんな大きな避難場所があるんだ……」
カレンが頷く。
「王都は最悪の事態を想定して造られている。
王都の人間が全員入れる規模の避難区画が、いくつもある」
アリスはその光景に目を丸くしながらも、すぐに表情を引き締めた。
デイビッドが指示を出す。
「まず第四小隊と合流する。
そこから指揮系統を統一する」
第四小隊の陣地へ向かうと、
弓兵たちが忙しなく矢を補充していた。
その中心で、嫌味な態度の副隊長セリウスが腕を組んで立っていた。
セリウスが鼻で笑う。
「やっと来たか第一小隊。
相変わらず遅いな……もう少し早く来たらどうだ?
速さが自慢じゃないのかい、ジークくん?」
ジークが即座に噛みつく。
「……はぁ? セリウス、お前今なんつった?」
カレンが肘でジークの脇腹を突く。
「ジーク、挑発に乗るな」
デイビッドは冷静に返す。
「状況は?」
セリウスは面倒くさそうに肩をすくめた。
「第二波が来る。
こっちは城壁でロックバードを迎撃する。
お前らは外壁前でアイアンリザードを頼む」
言い方が完全に見下している。
第四小隊の隊長レイヴァンがデイビッドに声をかける。
「デイビッド、指揮本部へ。
全体の配置を決める」
デイビッドは頷き、俺たちに振り返る。
「俺は指揮本部へ向かう。
カレン、第一小隊の指揮はお前に任せる。
アリスは地下の治療班の応援に回れ。怪我人が多すぎる」
アリスが頷く。
「わかった……タイチくん、気をつけてね。
絶対、暴走させちゃダメだからね?」
「アリスも無理するなよ」
「うん! 大丈夫!」
アリスは地下へ向かって走っていった。
セリウスが叫ぶ。
「第四小隊、配置につけ!
ロックバードの影が増えてきている!」
弓兵たちが城壁へ駆け上がっていく。
デイビッドの代わりにカレンが指示を出す。
「ジーク、タイチ。
私たちは外壁前の防衛線だ。
冒険者と近衛兵と連携して、地上のアイアンリザードを止める」
ジークが短剣を構え、口元を歪めた。
「よし、暴れる準備はできてるぜ」
俺たちは外壁前へ向かった。
そこにはすでに冒険者と近衛兵が集まっており、
地面には無数の足跡と血痕が残っている。
兵士が叫ぶ。
「第二波が来るぞ! 配置につけ!」
俺たちは武器を構え、
迫り来る地響きに備えた。




