第20話 三人での休暇
翌日。
俺たちは兵舎の前で待ち合わせをした。
アリスは淡いクリーム色のワンピース。
カレンは黒のパンツに、動きやすい革の上着。
いつも軍服姿の二人が私服で並んでいるだけで、
どこか新鮮で、思わず見とれてしまう。
アリスが微笑んだ。
「タイチくんの私服って……なんかオシャレだよね」
「そ、そうか……?」
「うん。似合ってるよ」
不意に褒められ、少しだけ照れた。
俺も言い返す。
「アリスも……可愛いと思うよ」
「っ……!」
アリスの耳が一瞬で赤くなる。
その横でカレンが俺の背中の刀を見て言った。
「……休みの日なのに剣を持ってるのか?」
「ああ。ちょっと手入れをお願いしようと思ってな。
行きつけの工房があるんだ」
カレンの目がわずかに輝く。
「タイチの行きつけ……興味あるな。
お前の魔力に耐えられる剣を打った職人、どんな奴なんだ?」
「もしよかったら紹介しようか?」
「いいのか?」
「うん。腕は保証するよ」
カレンは珍しく口元を緩めた。
「……なら、頼む」
三人で街へ歩き出す。
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鍛治通りの一番奥。
古い建物の前で足を止める。
看板にはーー
《鍛治工房・風林火山》
扉を開けると、金属を打つ乾いた音と、
熱気を含んだ空気が押し寄せてきた。
「先輩!!
お久しぶりです!」
奥から顔を出したのは、黒髪を後ろで束ねたーーカズヤだ。
「軍に入ったって聞いて心配してたんですよ!
って、えっ……綺麗な女性が二人……」
カズヤは俺の後ろを見て固まる。
「……先輩、ハーレムじゃないですか!
隅に置けませんね! 彼女さんですか?」
「違う」
即答したが、アリスとカレンは苦笑いしていた。
俺はカズヤを紹介する。
「こいつが俺の刀を打ったカズヤだ」
カレンが刀を見て首を傾げる。
「この剣……刀っていうのか?」
「ああ。俺らの故郷ではそう呼んでいる」
「そうか。どうりで見慣れない形だと思った」
アリスは棚に置かれた短い刀を手に取る。
「この小さい刀? 可愛い……!」
カズヤが胸を張る。
「それ懐刀って言って護身用の刀ですね!
切れ味抜群なんで、よかったらどうぞ!
サービスしますよ!」
アリスの目が輝く。
カレンは俺の刀をじっと見つめた。
「……焔神の加護に耐えられる剣を打った職人。
興味があるな」
カズヤは照れながらも自信満々だ。
「もしよければ、カレンさんの槍も仕立てますよ!
アイアンリザードの素材とミスリル鉱石を合わせれば、
雷属性に最適な槍ができます!」
カレンの目が細くなる。
「……本当か?」
「本当です! 任せてください!」
「なら、頼む」
「それじゃあ……要望なんかあったら聞きたいので奥部屋へどうぞ」
カレンは嬉しそうに頷き、奥へ向かった。
俺とアリスは工房で待つことにした。
アリスは懐刀をじっくりと見つめている。
「アリス、それ欲しいのか?」
「ううん……ただ見てるだけ……
みんな自分だけの武器持ってていいなって思って。
私はヒーラーだから、そういうのないし」
「いざという時のために持っておくのも良いかもな」
「……また来た時にお願いしてみようかな。
だからタイチくん、また連れてきて?」
「お……おう」
アリスの笑顔に、胸が少し熱くなる。
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しばらくすると、カレンとカズヤが奥の部屋から出てきた。
「出来上がったら駐屯地までお届けしますね!
あ、先輩の刀の手入れもしておきます」
刀を受け取った瞬間、カズヤの顔が固まる。
「先輩……これ、人間の血じゃないですか」
「……ああ、そうだが」
「切れ味どうでした?」
「最高だった」
「……マジか。
自分の作った刀がここまで通用するなんて、やっぱ嬉しいすね!」
カズヤは苦笑しながらも、どこか誇らしげだった。
武器を預け、俺たちは工房を後にした。
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昼下がりの街は賑やかで、
露店の匂い、子どもたちの声、
パン屋の甘い香りが漂ってくる。
アリスは雑貨屋を覗き込み、
カレンは武具店の前で足を止める。
アリスがふと呟いた。
「こうして三人で歩くの……なんかいいね。
小隊のみんなはあまりプライベートで出かけないから、
仲間って感じがして嬉しいな」
その言葉に、胸が少し温かくなる。
太陽が傾き、街がオレンジ色に染まる頃。
「そろそろ……お腹空かないか?」
「酒場に行くか」
「行く!」
三人で夕暮れの街を歩き、
灯りがともり始めた酒場へ向かった。




