第15話 仲間の洗礼
仲間の紹介が終わると、デイビットが立ち上がった。
「新人の実力を見せてもらう。訓練場へ行くぞ」
ジークは露骨に嫌そうな顔をし、
カレンは無言で槍を持ち、
アリスは心配そうに俺を見ていた。
----------------------------------------------
兵舎から少し離れた場所にある総合訓練場。
広い砂地の中央に、木製の武器が並んでいる。
デイビットは木剣を一本取り、俺に投げた。
「構えろ」
「……はい」
デイビットは木剣を肩に担ぎ、俺を見下ろす。
「来い。
お前の力がどれほどのものか見せてもらう。
試験では手加減してたみたいだが――
人間相手に本気を出せない奴は、この小隊にはいらない」
その言葉が胸に刺さった。
(……本気を出してなかったのは事実だ。
でも、それは――
俺が“人間を傷つけるのが怖い”からなのか?)
否定したいのに、胸の奥がざわつく。
――本気を出せないなら、いらない。
気づけば、足が前に出ていた。
「うおおおっ!」
踏み込み、木剣を振り下ろす。
だが――
ガンッ!!
デイビットの木剣が、軽く受け止めた。
「遅い」
次の瞬間、視界が揺れる。
足払い。
地面に叩きつけられた。
「魔物相手の癖が抜けていない。
人間は魔物よりも考えて動く。先を読め」
立ち上がる。
悔しさが込み上げる。
デイビットはさらに言葉を重ねた。
「その程度で誰かを守れると?
今のままじゃ誰も守れない。
仲間も、大切な人も――
お前の目の前で無惨に拷問され、殺される」
胸が熱くなる。
「……っ!」
気づけば、焔が体にまとわりついていた。
感情に呼応して、勝手に溢れ出る。
デイビットがわずかに口角を上げる。
「ふん……やっと本気になったみたいだな」
その目は、獣のように光っていた。
「うあああああっ!!」
ヘルフレイムを木剣に纏わせ、全力で踏み込む。
魔物なら、この一撃で焼き殺せる。
だが――
ガァンッ!!
デイビットの木剣が受け止め、
そのまま押し返してきた。
「……っ!? 俺のヘルフレイムが止められた……!」
「力任せ。
感情に揺られすぎてる。
間合いが甘い。
癖が丸見えだ」
俺の全力が、完全に封じられている。
次の瞬間、喉元に木剣が突きつけられた。
「終わりだ」
一瞬だった。
魔物相手なら通じた。
ヘルフレイムを使えば押し切れた。
だが――
俺の力は、何一つ通用しない。
その現実が、胸に重くのしかかった。
ジークがゆっくりと歩いてきた。
短剣を弄びながら、俺を見下ろす。
「その炎……ヘルフレイムか。
珍しい魔法使うな。
しかも纏わせるくらいまでコントロールできてるとはな。大したもんだ」
「……でも通用しないんじゃ、持ってても……」
ジークは鼻で笑った。
「お前は馬鹿か。
デイビットは軍でもトップクラスの兵士だぞ?
新米が勝とうなんざ百年早い」
ジークは淡々と続ける。
「それに、お前は人間相手だと力が緩む。
それは致命的だ。
誰かを守りたいなら――人間やめろ。
人を殺せない奴は、ここでは生き残れない」
胸が締め付けられる。
ジークの目が鋭くなる。
「それにお前の戦い方は、ヘルフレイムに頼りすぎて基礎が育ってねぇ。
魔物相手の癖が丸出しだ。
今まで誰にも教わらず、一人で戦ってきたって感じだな」
その言葉は、痛いほど図星だった。
デイビットが俺の前に立つ。
「明日からヘルフレイムは禁止だ。
まずは戦いの基礎を叩き込む」
俺は静かに頷いた。
「……はい」
デイビットは全員に指示を出す。
「明日は新体制での任務だ。
各々、体を休めておけ。解散」
兵舎へ戻る途中、
弓を持った銀髪の少女とすれ違った。
その横顔に、心臓が跳ねる。
思わず振り向く。
だが彼女は気づいていないようだった。
「……やっぱり綾花じゃないのか……」
胸の奥に、言いようのないざわめきだけが残った。




