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2 四人のメイドさん

「メイド喫茶って……えぇ?」

「さっ、入りましょう。まりあ様がお待ちですよぅ」

 メイドさん――穂村あずきさん?――が僕の腕をくいっと引っ張る。僕は渋々引っ張られるままにしておいた。まあ、少しはメイド喫茶というものに興味があったから。

 あずきさんの後を着いていきながら、改めて彼女の格好に注目してみた。

 かわいらしいメイドの服装。僕にコスプレの趣味は無いけれど、やっぱり可愛いと思う。それにフリルつきのカチューシャのはまったサラッサラの綺麗な髪。小柄で、痩せていて、多分この人はすごくもてるんだと思う。


 チリーンチリーン


 トライアングルみたいな金属音を響かせて、あずきさんが店の扉を開けた。僕もいそいそと着いていく。どうやら店は定休日のようだ。

「まりあ様あぁー! 私、とうとうみつけちゃいましたぁー!」

 あずきさんが太陽みたいな笑顔で笑っている。さっきまで泣いてたカラスがもう笑ったってやつだな……とか思いながら、その奥ではちょっとかわいい、とも思っていた。


 その時、いきなり僕の目の前をすばやい何かが通った。



 すこーん。


 僕が隣を見ると、あずきさんの顔面にピンク色のスリッパが直撃していた。ああ、さっき飛んできたものはスリッパか。

 ……ってえぇっ?! 誰だスリッパ飛ばしたの! ってか……

「あずきさん、大丈夫っ?」

「ふえぇ〜! 痛いですぅ〜」

 また泣いちゃったよ。さっき笑った雲雀がもう泣いた……僕の創作語だけど。

「おっそいですわよあずきっ! もう三時間も経ってしまいましたわー!」

 突然金切り声が耳につく。僕のキンキンと鼓膜に木霊する。うるさいよまったくもうとか思いながら、徐々におさまった後、僕は声のした方向を見た。

 そこには、三人の女の子がいた。三人が三人とも可愛い。そして、裸足で片手にもう一方のスリッパを持っている子が金切り声の主だった。

「まりあは相当待ちましたわよ!」

 多分、彼女が『まりあ様』なのだろう。うん、なんだか名前どおりの風貌って感じ。ナチュラルブラウンの髪に緩くウェーブがかかっていて、カラーコンタクトをしているのか、瞳が青い。ぱっと見外国人モデルのようにも見える。それくらい綺麗なのだ。

 まりあさんはびえーびえー泣いているあずきさんの元へぺたぺたと歩み寄り、ぺちんとかわいらしく頭を叩きながら「もう泣かないの!」とたしなめた。

「うっうっ、まりあ様ぁ、ごめんなさい〜びええぇぇ」

 あずきさんがまた激しく泣き出す。しょうがなく、僕は自分からまりあさんに話しかけた。

「あの……あずきさんに連れられてきたんですけど」

「まぁっ! そうでしたのね! 失礼しましたわ」

 まりあさんはあずきさんからさっと手を引き、僕の手をとった。華奢な手である。爪には、実に芸術的なネイルアートが施されていた。

「さあ、あなたの名前を教えてくださいます……?」

「ま、松林つばさです。あの、僕になんの用ですか?」

 思い切って聞いてみると、まりあさんは何故か目を丸くして、カパーンと形の良い唇を開いた。

「僕……ですって?」

 はい、そうですけど。

 僕は普通に答える。

「あ、あ、あずき! この子、正解ですわよ!






女の子なのに一人称が『僕』だわっ」




 え? おかしいか?



「ぅうっ、そうなんですぅっ! だからあずきが連れてきたんですうっ」

 あずきさんが鼻声でいう。あぁ、そういうことね。

「……ってどういう事だよ!」

 どうやら今は僕の得意なツッコミも通用しないようだ。

 僕が肩を落としていると、もう一人、女の子が近づいてきた。

「まりあ、彼女が可哀想だろう。ちゃんと説明してやれ」

彼女、とは多分僕のことだ。背が高くてモデルさんみたいな体型のメイドさんは、その長く艶やかなポニーテールをかき上げ、僕の前に手を出した。

「前田ひかりだ。よろしく」

「はぁ……松林つばさです」

 ひかりさんは目元を動かさずに口だけでフッと笑うと、もう一人の眼鏡をかけたメイドさんにも挨拶をするように促した。

 眼鏡メイドさんが歩み寄ってくる。近くに来ると、僕より二センチほど背が低いことが分かった。

「北川ありさです。よろしくね、つばさちゃん」

 この人はひかりさんと違ってニコリと素敵な笑顔を見せてくれた。

 と、横からまりあさんに肩を掴まれた。

「あなた、なんで一人称が『僕』なのかしら? 教えなさい」

 何やら真剣そのものの表情だ。目から光線でも出そうな勢いで睨んでくる。

「え……っと、僕、母親の顔知らなくて。ずっと父と兄二人と一緒に暮らしてきたんですよ。それで、幼稚園生まで自分のこと男と思ってました」

「まあ! それは本当ですのっ? 酷いですわ……」

 まりあさんが口に手を当てる。あずきさんも「かわいそう……」と呟きながら、また泣いている。

「じゃあ、直すべきだな」

「直すべきですね」

 ひかりさんとありささんが微笑みながらにじり寄ってきた。二人とも、怖い……っ!

 ていうか……。


 



 これから僕はどうなるんだろう……。





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