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1 店の前

「うっうっ、うえぇん」

「あの……大丈夫ですか?」



 どうしよう。

 

 僕の目の前で、今、とても奇抜な格好をした女の子が地面にへたり込んで泣いている。

 僕が泣かせたわけじゃない。ただ、こんな秋葉原の歩道の一角に座って何かを一生懸命探している彼女が少しかわいそうになったので、話しかけただけだ。なのに、僕が近づいた途端に声を上げて泣き出してしまった。

 というか、この子の格好……。

 

「きみ、メイドさんなの?」

「うっ……ぇぇ、そうです、ぅけどっ」

 フリルつきのカチューシャをはめ、これまたフリルつきのチョーカーをし、短めのスカートに真っ白な靴下……極め付けに真っ白なエプロン……またまたフリルたくさん。

 これをメイドさん以外になんと呼ぶのだろうか。

 僕がまじまじと彼女の服装に視線を這わせていた事に気づいたのか、小柄なメイドさんは「ふぃっ」とちょっと意味不明な叫びを上げて、縮こまった。

 ていうかそろそろ周りの視線が痛くなってきたな……。

「あの、探し物があるんなら交番行こうよ」

「いいん、ですぅっ! 私、一人で探せって言われたの……だからッ、ふええぇぇ」

 強気な事をいっても、泣くのはやめられないらしい。メイドさんはまたうずくまって大声で泣き出した。

 そして僕はただ立っていることしかできないんだから全く情けない。

「じゃあさ、一体何を探してるの? 僕にも探せるものかな?」

「ふぇ……?」

 メイドさんがピタッと泣くのをやめる。それからガバリと顔を上げて、僕の顔をジッと見つめた。ん? 僕の顔に何かついているのだろうか。

「なって……ないですね」

「は?」

 いきなり何を言い出すんだこの子は。僕が頭の上に疑問符を浮かべていると、メイドさんは突然立ち上がり、

「はいっ! 見つかりましたよ! 私が探していたのはあなたです!」

 と僕の腕を取って走り出した。ちょっと待て!

「まっ、待ってっ、僕これから塾に行かなくちゃ……っ」

「あなた、名前は何ですか?」

 メイドさんは僕の腕をぐいぐい引っ張りながら、そんなことを聞いてくる。

「名前って……松林つばさっ! ほら、教えたからもういいだろっ! 離せよ!」

 振りほどこうとするが、思いのほかメイドさんの力は強い。

「そうですか。名前もそれっぽいんですね。あ、私は穂村ほむらあずきです! よろしく!」

 ほんと、陸上部に入ってて良かった……。メイドさんの足は速く、周りの人々の目にも止まらぬ速さで人ごみをかきわけていく。

「ちょっ……、メイドさん! どこにいく気……うわっ」

 突然メイドさんが立ち止まる。おかげで僕は彼女に思いっきりぶつかってしまった。なのにメイドさんは何事も無かったかのように動かず、ただ目の前の建物を見つめている。

 建物は全体がピンクで塗りつぶされていて、やたらとでかい看板が掲げられていた。

 そしてその内容というのが……



「メイド……喫茶?」




 だった。






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